22ky-7
松尾 汐恩(大阪桐蔭3年)捕手 178/76 右/右 | |
昨秋の神宮大会の時には、プレースタイルが雑で捕手としては将来的にどうなのかな? と思ってみていた 松尾 汐恩 。 しかし、この一年でだいぶ捕手らしくなってきた。またフォア・ザ・チームを実践できるようになり、自分で自分が といった部分がだいぶ薄れてきたように感じる。またその一方で、そういったことが求められない場面では、自分の持ち味を遺憾なく発揮できるなど、野球頭脳の高さを感じさせるプレーヤーになってきた。 (ディフェンス面) 多彩な投手陣の持ち味を発揮しようと、かなり考えてリードしています。また、間の入れ方含めて、この一年でだいぶ捕手らしくなってきたのではないのでしょうか。おそらく元来は、それほど繊細な性格ではないのでしょう。しかしこの一年で、投手のことチームのことを考えて取り組んできた跡が、集大成の夏に強く感じられるようになってきました。 投手にミットを示し、下げずに捕球するようになりました。投手への返球は今でも丁寧といった感じではないのですが、特にキャッチングや返球が雑で気になるといったことは無くなっています。際どいコースへのフレーミングも上手くなっていますし、元々フットワークや動きの良い選手なので、ワンバウンド処理なども素早く対応することができます。 しっかり型を作ってから送球できないので、安定した送球という意味では課題は残します。それでも圧倒的な地肩があるので、小さなテイクバックでも 1.8秒前後でドンピシャの送球ができることがあります。きめ細やかな性格ではないと思うのですが、思考力がある選手で考えて必要なことを身につけてゆこうという姿勢が感じられます。そのため、プロに求められる資質は一通り備えており、個人的には「捕手・松尾」として評価します。 (打撃内容) 甲子園通算 14試合 5本 14点 0盗 .385厘 。甲子園で放った5本の本塁打は、いずれもセンターからレフト方向への引っ張りです。しかしこの夏は、好機で右方向に打ち返すなど、あとに繋げるバッティングを意識できていました。またU-18の日本代表としても、9試合で打率.321厘を放ち、初めての投手にも対応できる能力の高さを示しました。 <構え> ☆☆☆ 3.0 スクエアスタンスで、前の足のカカトを少しだけ浮かせて立ちます。グリップの高さは平均的で、腰はあまり座らず、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスなど平均的な構えではないのでしょうか。春までは、もう少しクローズスタンス気味に立っていました。 <仕掛け> 早め 投手が下がり始める時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられる始動のタイミングです。春は「平均的な仕掛け」だったことを考えると、意識的に早めに動き出していたのかもしれません。追い込まれると、小さくチョンとステップを「遅すぎる仕掛け」に切り替えます。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのかと。 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にも止まっています。そのため逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができ、右方向にもキッチリはじき返すことができます。ただし、ステップの幅が狭めなので、元来は引っ張って巻き込む打撃を得意としていると考えられます。実際長打は、引っ張った時に多く見られます。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球にも立ち遅れません。以前から気になるように、ボールを呼び込む時に、かなりグリップが奥まで入り込み、クローズスタンスのような形でボールを呼び込む独特の形です。 バットの振り出しは、上から振り降ろすインサイドアウトのスイング軌道。内角寄りの球を引っ張るのには適していますが、バットのしなりを活かせないぶん、プロレベルの外角球を木製バットで振り負けないのかは気にはなります。それでもインパクトの際にはヘッドは下がっていないので、広い面でボールを捉えます。それだけ捉えた球は、フェアゾーンに飛びやすいのかと。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げはあるので、目線の上下動はそれなり。体の開きはなんとか我慢でき、軸足は地面から真っ直ぐ伸びています。引っ張った時には、キレイな軸回転でスイングできていますし、内モモの筋肉にもそれなりに強さが感じられます。 (打撃のまとめ) かなり特殊なメカニズムの選手で、欠点もあるのでしょうが、無理にいじらない方がいいのかもしれません。というのは、かなり独特の感性でバッティングをしているので。かえってそれをいじって持ち味が損なわれる方が怖いです。ボールを捉える嗅覚も、ボールを飛ばす能力もそれなりの持っています。将来的には、2割7・8分で、15本~20本ぐらい打てる捕手 に育っても不思議ではありません。 (最後に) 歴代の大阪桐蔭の捕手の中でも、森友哉(西武-オリックス)に次ぐ「打てる捕手」だと評価できます。特に高校時代の森に比べると、肩の強さ含めてディフェンスの資質は松尾の方がかなり上です。打撃での能力に差は感じますが、捕手としてのやって行けるという意味では松尾の方が遥かに推せるものを高校の時点では示しています。 松尾の感性と個性を尊重してあげられるチーム環境であれば、ほっといてもある程度のレベルまでは行ける気がします。それだけ自分で考え、やって行ける選手だと思うので。その独特の感性が、リード面などにも生かされるようになると面白いと思いますし、その片鱗は、現時点でも見え隠れしています。 次世代の、日本野球界を代表する捕手・そういったレベルまで期待してみたい選手でした。例年だと文句なしの1位候補といった圧倒的な内容ではありませんでしたが、今年ならば1位の12名に選ばれたのは当然だったように思えます。春よりも打撃の内容が良くなっていたので、評価をワンランク引き上げて最終の評価とします。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2022年夏 甲子園) |
松尾 汐恩(大阪桐蔭3年)捕手 178/76 右/右 | |
1年秋から捕手にコンバートされ、2年秋の神宮大会でみた時は、やっぱりこの選手は将来捕手としては厳しいのではないかと思えた 松尾 汐恩 。 しかし、このひと冬の間に、だいぶキャッチャーらしくなってきた。その成長について、今回は考えてみたい。 (ディフェンス面) 神宮大会でみた時は、キャッチングにも特徴がないし、投手への返球も何処か雑に見えたのが気になりました。しかしこの選抜では、かなり際どいキャッチングにも工夫が観られるようになり、返球の荒っぽさもだいぶ違和感がなくなってきています。ゼスチャーを交えながら、投手とコミュニケーションをとりながら導くことができています。もともと内野手だけあって、フットワークなどの足回りも良く、ワンバウンド処理にも下からミットが出るなど素早く反応してきます。 送球に関しては、1.8秒台中盤で投げられる地肩の強さがあります。あまり自分の型がしっかり決まらないために、制球などの精度にバラツキがある部分もあったのですが、そのへんも改善さつつあるのかなといった気はしました。まだまだディフェンス面には学ばないと行けないこと、改善して行かないといけない部分も多々あろうとは思いますが、素材的には高校からプロでやって行けるものは持っていると思います。 (打撃内容) むしろ、打撃に関しては昨秋の方が目立っていました。それでも選抜では、17打数6安打・2本塁打・4打点で打率.353厘と、緒戦では無安打で終わったものの、徐々に2回戦以降存在感は示せていたように思えます。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 少しクローズ気味立って、グリップを高めに添えます。腰の据わり具合・全体のバランスとしては平均的で、両眼で前を見据える姿勢はそれなりといった感じでしょうか。 <仕掛け> 平均的 早めにベース側につま先立ちして待っているのですが、本格的に動き出すのは投手の重心が沈みきった底のあたりで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。秋は投手の重心が下る前に動き出す、「早すぎる仕掛け」を採用していたので、その点は少し改善されていました。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」が以前より取れなくなって、打てる幅は狭くなった印象です。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。なかなか、さじ加減とは難しいものです。 踏み出した足は、インパクトの際にはなんとか動かず我慢。したがって逃げてゆく球や低めの球にも、ある程度対応できていました。ただし、内角の球をさばくときでも足元が止まって開放しないので、腰が回転が抑えられてしまい懐が窮屈に見えました。 始動は投手の重心が下がり初めてから、足元が動かないで良いのはセンターから右方向への打球を意識する時で良いという割り切りは欲しいかなと感じます。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球には立ち遅れません。ただし、ボールを呼び込む時に肩が内に入り込み過ぎていたり、投手側にバットが倒れ過ぎていることで、内角寄りの球に対しスムーズにバットが出てきません。 スイング軌道もやや外回りになってしまっていて、それをなんとかヘッドを立てようとすることで抑え込んで見えました。元来は、内角の球をさばくのには非凡なものを持っている選手なので、ちょっとしたことで修正は可能だとは思うのですが ・・・。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げはそれなりといった感じで、体の開きもなんとか我慢。軸足の内モモの筋肉は発達しているものの、やや足元が窮屈に見えました。ボールを呼び込むの意識しすぎて、返っていびつな形になってしまっていたのかもしれません。 (打撃のまとめ) 左投手の・冨田 遼弥(鳴門)投手に対応しやすいように、クロスで呼び込みやすい形にしていたのかもしれませんが、全体的に秋よりも動作が窮屈になり、打撃の幅が無くなっていたのは気になりました。しかしそのへんは、もともとできていた部分を直すことで、充分に修正可能だろうとはみています。 (最後に) ディフェンス面が良くなった一方で、打撃面でのアピールが薄れた気がします。そのため上位指名を確実にするためには、打撃でのアピールが不可欠だと考えられます。その攻守のバランスがとれてくれば、上位指名も現実味を帯びてくるのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2022年 選抜大会) |
松尾 汐恩(大阪桐蔭2年)捕手 178/75 右/右 | |
長くボールを呼び込む「間」を持ち、内角のさばきも実に見事な 松尾 汐恩 。こと打撃に関しては、なかなか非凡な才能を持った選手ではないのだろうか。いわゆる近年のトレンドである「打てる捕手」を地でゆく選手なのかもしれない。 (ディフェンス面) 1年秋から捕手に転向したということで、捕手歴は僅かに1年。投手にミットを示しつつ、そのグラブを下げながら捕球します。それほどキャッチング自体に特別なものは感じられないのですが、フットワークなどは良くワンバウンド処理でも素早く下からミットが出たりと動きはまずまず。 投手へもちゃんと立って返球しますが、その割に返球が強く丁寧なのか雑なのかよくわかりません。ただし、全体的にプレーは荒っぽくみえるので、繊細さや周りへの注意力など、まだまだこれからの選手なのではないかと感じます。 小さなモーションでも、二塁にしっかり到達できる地肩の強さはあります。そのためうまくハマったときには、1.8秒台中盤ぐらいと優秀なタイムを叩き出します。ただし、イニング間送球などをみていると、まだまだ制球にバラツキが目立ち、自分の型というものが決まっていないようにみえ、再現性は低いのではないかと考えられます。 資質的にはプロを意識できる選手だと思いますが、捕手としての適性があるのかと言われると、現時点では微妙です。そのため、プロで信頼される捕手になるためには、もっと深く捕手というポジションにこだわりなり愛着を持って取り組まないと行けないのではないのでしょうか。 (打撃内容) 秋の日本一になった神宮大会では、3試合 2本 4点 打率.615厘 と、大阪桐蔭の三番打者として打ちまくりました。そのうち2本のホームランは、決勝の広陵戦で放ったものです。 <構え> ☆☆★ 2.5 幾分クロス気味立って、前の足のカカトを浮かして構えます。グリップを高めに添えつつ、腰の据わりや全体のバランスとしてはもう一つで、両眼で前を見据えるのは並ぐらいといった感じでしょうか。クロスに構え割に、特にセンターから右方向への打撃を意識しているようにも感じられません。何か、この方がしっくりするという意図があったのでしょうか? <仕掛け> 早すぎ 投手の重心が下る前から、足を引き上げて長くボールを持ちます。このタイミングだと、まだ投手が投げるタイミングを変えて来ることが可能なので、フォームによってタイミングを狂わされる危険性はあります。基本的に、それだけ長くボールをみるということで、対応力を重視したアベレージ傾ヒッターの傾向が強い打者だと考えられます。 <足の運び> ☆☆☆☆ 4.0 足を早めに引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は充分とれているので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にも止まってブレません。そのため逃げてゆく球や低めの球にも喰らいつくことができ、右方向への打撃も可能にしています。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 早めに打撃のための「トップ」を作り、速い球に立ち遅れる心配はありません。バットの振り出しも平均的で、インパクトまで大きなロスもそれほど大きくない感じ。インパクトの際のヘッドの下がりもさほどなく、ボールを捉えてからも大きな弧を描いて強烈な打球を生み出します。右方向にホームランが出るタイプには見えませんでしたが、うまく巻き込めた時には左中間スタンドに叩き込めるパンチ力を秘めています。また内角の球をさばくのも非凡で、肘をしっかりたたんでキレイに抜けてきます。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げはあるので、目線の上下動はそれなりといった感じ。体の開きは我慢できており、軸足の形も大きくは崩れません。比較的、調子の波は少ないのではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) ボールを呼び込んで捉えるまでの「間」のとり方が素晴らしく、内角をキレイに振り抜ける技術にも非凡なものを感じます。外角をさばくのにも大きな癖はありませんし、長打で魅了するほどではないにしろ、実戦的な打力を身につけているのではないのでしょうか。現時点では、ディフェンスよりもオフェンスの方が目立つタイプです。 (最後に) 最近のトレンドである「打てる捕手」という意味では、高校球界でも指折りの存在ではないかと。ただし、プロで捕手を続けて行ける素材・適性はあるのかまでは半信半疑であり、今後の成長次第といった感じがします。選抜での、さらなる成長を期待してやみません。 (2021年 神宮大会) |