古川 雄大(西武)外野手のルーキー回顧へ







古川 雄大(佐伯鶴城3年)中堅 186/89 右/右 





 「身体能力の化け物」





 夏の大会を観ていて、この選手の身体能力はホンモノだと実感させられた 古川 雄大 。一体、どのような選手なのか検証してみたい。


走塁面:☆☆☆☆ 4.0

 一塁までの到達タイムは、速い時で右打席から 4.1秒前後。 これを左打者に換算すると、3.85秒前後に相当し、プロでも上位クラスの脚力であることがわかる。夏の大会では、4試合で3盗塁 。積極的に走る意欲はあるが、現時点でそこまで盗塁技術があるのかは微妙。大きなストライドではあるが、打球の一歩目のスタート・判断力・トップスピードまでの加速などは大型だが悪くなかった。今後、プロでも走る勇気や意識を持ち付けることができるか? あるいは、そういったセンスを持っているかでプロで足を売りにして行けるか変わってきそうだ。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 物凄く打球への反応が鋭いとかキャッチングが上手いとかいった印象はないのだが、肩の強さはプロでも売りにできるものがある。プロでも上位クラスの脚力があり広い守備範囲も期待でき、身体能力的にはプロでも中堅を任される、あるいは、球界を代表する外野手になれるだけのものを持っている。打球への落下点までの入りを観ていると、慎重に捕球体勢に入ってくる感じで、けして上手くは見えない。また送球も、時々何処投げているんだといった暴投も観られるので、まだまだこれからといった感じはする。あとは、貪欲に何処まで守備を追求できるのか? あるいは、そういったセンスがあるのかは混ぜてみないとなんとも言えない。

純粋な走力や肩が一級品であることは間違いないが、盗塁するセンスや守備勘などがそこまで優れているのかまでは、ちょっと掴みきれなかった部分がある。現時点では、走塁は思ったより良い感じで、守備はまだまだこれからかなといった気もしなくはない。


(打撃内容)

 体が強いので当たれば飛んでゆくものの、ボールを上手く遠くに運ぶといった技術で飛ばすタイプではない。そのため、将来は30本打つというよりは、現時点では20本ぐらいの素材といった感じはする。ボール球にバットが止まらず振ってしまう選球眼の悪さが目立っているが、追い込まれるとセンターから右方向への打撃に切り替える柔軟性は持っている。ちなみにこの夏は、4試合で 1本 2点 3盗 打率.357厘 といった成績を残していた。

<構え> ☆☆★ 2.5

 軽くクローズ気味に立ち、前の足のカカトを浮かして立っている。グリップは高めに添え、あらかじめ捕手側に引いて構えられている。やや後ろ足に体重を預けつつ、腰はあまり座らず、全体のバランスとしてはどうか? それでも、両眼での前の見据えは、それなりにもできている。気になるのは、打席で力が入りすぎているので、固く感じられるのは気になる材料。

<仕掛け> 遅すぎ

 ベース側につま先立ちして、リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。日本人のヘッドスピードやパワーを考えると、ここまで遅い仕掛けだとプロレベルの投手と対峙した時に、対応しきれない可能性が出てくる。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 小さく足を上げて、ベースから少し離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」が取れず、狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められる。軽くアウトステップするように、追い込まれるまでは内角への意識が強いように感じられた。

 ステップは狭めではあるが、なんとかブレずに地面捉えて離さない。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも、食らいつくことはできている。この選手は、追い込まれるとセンターから右方向に切り替える意識を持っている。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 あらかじめ捕手方向にグリップを引いているので、「トップ」は早めに作れているように見えます。しかし、そこから少しヒッチしてから振り出すので、立ち遅れる傾向にあります。バットの振り出しは、結構上からミートポイントまでふり下ろしてくる来る感じで、ヘッドを立て広い面でボールを捉えるというよりも、ボールの下にバットを潜らせる感じのインパクト。そのため打ち損じも多いのですが、捉えられれば長打も結構多くなるかと。スイングの孤は大きくとりとれ、しっかりタイミングが合えば長打が期待できます

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少ない。体の開きも我慢できているし、軸足にも強さが感じられる。しかしステップが狭く足元が窮屈なので、対応力といった部分では疑問が残る。そのせいなのか? 軸足の形も崩れることが多く不安定に。

(打撃のまとめ)

 大きなスイングと尋常じゃない体の強さもあり、上手く捉えれば長打が期待できるのは確か。その一方で、タイミングの取り方、足元の窮屈さ、ヒッチする癖など、ボールを確実に捉えるという意味では課題も多い。そういった選手を、西武の指導でどのように導いてゆくのか気になるところ。ただ、圧倒的なポテンシャルの選手は、技術を凌駕して行けるというのも、また確かなのだが。


(最後に)

 規格外の選手に育つ可能性は秘めており、非常にプロが好むのも理解できます。その一方で、技術的には課題が多い選手で、時間はかかりそうだなと思う部分もあります。プレースタイルも野性味溢れる選手で、イメージ的には 大田 泰示(巨人~日ハム~DeNA)に似たタイプなのかなといった感じが。果たして彼は、その大田を凌ぐような選手に育つのでしょうか?


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2022年夏 大分大会)