22ky-34
日高 暖己(富島3年)投手 184/77 右/左 | |
試合開始直後の最初の打者から、内角にズバッと投げて三振に仕留められる 日高 暖己 。そういった繊細なコントロールは、今年の高校生の中でも際立つ一人ではないのだろうか。 (投球内容) 甲子園では、優勝した下関国際と初戦で対戦。9回を投げて 13安打 4四死球 9三振 5失点 で破れました。しかし、その才能の片鱗は、充分に伝わってくる内容だったのではないのだろうか。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台後半 ☆☆☆ 3.0 まだまだ、ボールそのものの質や球威は、高校生のそれといった感じの球を投げていました。しかしその球を、両サイドににしっかり投げ分けられる確かなコマンドがあるのが、この投手の最大の魅力。宮崎予選では、最終回にその日のMAXを連発していたように、体力や筋力が無さそうに見えて、意外に余力を持って投げていることが伺われました。 変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 スライダーは縦への変化が大きな軌道で独特なのですが、この球とのコンビネーションが基本。その他に、緩いカーブ・チェンジアップなども時々交えてきますが、追い込むとストンと落ちるフォークも投げてきます。この球の精度・信頼が高まって来ると、投球もかなり変わってきそうです。キレイに抜けたときには、しっかり空振りを奪える落差があります。 その他 牽制は執拗に入れすぎかなといった神経質な一面が見られるので、もう少し打者に集中した方がとは感じました。クィックは、1.1秒台と基準以上で、時々投げるタイミングも変えて投げるような投球術も見られました。 (投球のまとめ) 投手としてのセンスを感じさせる一方で、まだまだ肉体的にも線が細く筋力・ウエートの部分にも伸びしろを残しているように見えます。コントロール・変化球も良いので、あとは真っすぐのボールの質がプロ仕様に変われるかではないのでしょうか。プロでも、近い将来ローテーション投手に入って来られる素材だと評価します。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、静かにあまり足を引き上げない静かな入りです。軸足一本で立った時に膝がピンとは伸びているのですが、力みの感じられない立ち方では立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。そういった意味では、体をひねり出すスペースは充分ではなく、カーブやフォークといった球種を投げるのには適したフォームとは言えません。しかし彼の場合、カーブのブレーキやフォークの落差は、この投げ方でも悪くありません。 「着地」までは地面に着きそうなところから、大きく前にステップすることで体を捻り出す時間を確保。そのため、変化は大きな球を投げられる下地はあります。ただし、カーブやフォークといった球種は、体への負担という意味では心配になります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの制球は安定しやすい。フォーム全体も縦に推進するので、そういったブレは極めて少ないフォームだと言えよう。 足の甲での地面の捉えもできているので、浮き上がろうとする力も抑えられている。リリースが安定すれば、もっと低めにも安定して集まってきそう。「球持ち」もよく、指先の感覚にもとても優れている。将来的にも、高い精度の制球力を誇る投手になるのではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせない割にカーブやフォークを使ってくるので、窮屈になって肘への負担は少なく無さそう。それでもそういった球種を投げる頻度は、現時点では多くはない。その辺が大きく変わって来ないのであれば、そこまで悲観することはないのかもしれない。 腕の送り出しをみても、角度はあっても大きな負担が肩にかかっているようには見えない。けして力投派でもないので、疲労も溜まり難いのではないのだろうか。 <実践的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは適度に作れているが、ボールの出どころは並といった感じだろうか。この辺もう少し、股関節の柔軟性や下半身の筋力が付いて粘れるようになると、ボールの出どころも自然と遅くなってくる可能性がある。現時点では、球威に欠ける球質も相まって、甘く入ると打ち損じをされずに打ち返されてしまうことが多い。 腕は投げ終わった後しっかり絡んでくるなど粘りがあり、打者としては吊られやすい。ボールにも適度に体重を乗せて投げられているのだが、まだウェートが充分でないのと、時々一塁側に体が流れるなどして、ダイレクトにボールに力を伝えきれていない部分がある。この辺が改善されてくると、ストレートの球質も改善されてきそうだ。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はないものの、「開き」と「体重移動」は、もっとよくなる余地が残されている。制球を司る動作に優れ、故障のリスクや武器になる変化球の習得という意味でも悪くなく、土台となるフォームは、かなりレベルが高いと見られそうだ。 (最後に) しっかりピッチングができるという、投球の土台がしっかりしている。そういったセンスもあるし、それを可能にする高い制球力も持ち合わせている。あとは、ボールの質をいかにプロ仕様に変えることができるか? この部分がクリアできれば、プロでも先発ローテーションに定着して行ける好素材だろう。ドラフトでは3位以降の指名だと思われるが、その将来性を高く買いたい。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2022年夏 甲子園) |