22ky-23









イヒネ・イツア(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ







イヒネ・イツア(誉3年)遊撃 182/84 右/左 





「どう評価すべきか?」 





 ドラフト候補を意識してみようになって35年、「迷スカウト」を立ち上げて活動するようになってから23年、イヒネ・イツア のような遊撃手を私はみたことがなかった。そのため、過去のいかなる選手とも比較が困難であり、この選手をどのように評価すれば良いのか正直よくわからない。


走塁面:☆☆★ 3.5

 一塁までの塁間は、下級生の時のタイムではあるものの 4.25秒前後 だった。このタイムは、プロ入りするような選手では 中の下 ぐらいのタイムであり、けして足を売りにする選手には見えない。それでも二塁打の時には 8.2秒、三塁打の時には 11.1秒 を切るなど、持っている走力はかなり高い。そのため、トップスピードに入るまでには時間がかかるものの、ベースラニングなどではグングン加速する。プロで盗塁をバシバシできるような選手になるのかと言われると疑問は残るが、持っている走力自体はそれなりに高いものがあると考えて良いだろう。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 昨年は、独特の動きを魅せながら捕球し、その体勢のまま送球するなど、日本人には真似できないプレーをする印象が強かった。しかし今年は、だいぶ形が常識の範疇に収まってきた。>咄嗟の反応にも優れ球際でも強く、それでいて守備範囲も広い。ただし、地肩は強いのだが、かなり送球は不安定。そういった意味では、プロでもショートを担って行けるのかどうかも、正直混ぜてみないとわからない。それでも、このスケールのショートは、今まで見たことがないので、異次元のプレーを魅せてくれるのではないかという期待感は半端ではない。やはり彼の魅力は、遊撃の守備にあると言えるので。


(打撃内容)

 この夏は、2試合で 7打数5安打 1本 7点 打率.714厘 と、いいところを見せつけたまま終わりました。ただし、本当の意味で良い投手との対戦も無く、何処までこの試合の内容を評価してよいのかは微妙なところではあります。というのは、2年秋の秋季大会では、.167厘。3年春の春季大会では、.250厘 と脆さを露呈していたので、本当に覚醒していたのかどうかは正直よくわかりません。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足をベース側に置き、カカトを浮かして構えるクローズドスタンス。グリップをあらかじめ捕手側に引きつつ、その高さは平均的です。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスとしてはそれなり。彼の良いのは、打席の中でリラックスして入れているところではないのでしょうか。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下る時にベース側につま先立ちし直し、本格的に動き出すのは、投手がリリースを迎える直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。通常日本人だと、ここまで遅いタイミングでの始動は扱うのが難しいのですが、両親がナイジェリア人の彼の場合、このタイミングでもありなのではないかとは感じます。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 足を小さくステップして、軽くベースから離れた方向に踏み出します。始動~着地までの「間」は短く、狙い球を絞り、その球を逃さないということが求められます。軽くアウトステップするように、意識は内角寄りにあるのではないのでしょうか。

 踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレずに止まっています。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。見ていると、外角の球に対してはチョンと当てたり、軽く払うような感じでしっかりは振れていません。それでも飛んで行ってしまうのは、金属バットの恩恵と彼の肉体的資質の高さからかもしれません。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、打撃の準備である「トップ」の形を作るのは早いです。始動の遅さを、ここでかなり補うことはできています。振り出しは、けして内からバットが出てくる感じではありません。それでもインパクトまで遠回り出てくることはなく、ボールを捉える際にも上手くヘッドを立てて、外角の球を捉えている印象です。それでいて内角の球にも開かずさばけますし、打てる幅は限られている感じはしますが、打てるゾーンの球を仕留められる技術は持っています。

 インパクト後は、フォロースルーも使って、ボールに角度を付けて飛ばすことができます。長打が多いのも、この動作の恩恵が大きいのではないのでしょうか。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢できていますし、軸足も比較的安定しています。まだ軸足の内モモの筋肉が凄く発達している感じはしないものの、天性の体の強さなのか? 打球は遠くに飛んでゆきます。

(打撃のまとめ)

 始動が遅すぎるのは気になるものの、彼の血統的背景や肉体の強さを見ると、そこまでそれは気にしなくても良いのかもと。上半身のスイング軌道にも癖はないですし、受け止める下半身もしっかりしてきました。今後は、打撃の幅をいかに広げて行けるかといった感じがします。昨夏は、なぜあの形で打てるのか?と思った打撃も、だいぶ理解の及ぶフォームになってきました。

(最後に)

 規格外のポテンシャルを秘めていることは間違いないと思いますが、実際何処までレベルの高い野球に順応して行けるのかは正直よくわかりません。そういった意味では、極端に高い評価も、逆に低い評価もできない素材だなと思います。あまりショートにだとか、こんな打ち方じゃないといけないとか、常識の型にはめることなく、彼の感性を広げて行って欲しいと願うばかりです。そういった意味では、ソフトバンク に入団したのは彼にとって大きかったのではないのでしょうか。ぜひ、世界に飛び出して行くような、偉大な選手に育って行って頂きたいところです。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2022年夏 愛知大会) 









イヒネ・イツア(誉3年)遊撃 182/84 右/左 





「動きが独特」 





 ナイジェリア人の両親を持つ イヒネ・イツア は、日本人ではできないような体勢から送球したりと、独特の動きを魅せる異色な存在。まだまだ持ち得る能力を存分に発揮しているとは言い難いが、無限の可能性を秘めた内野手なのだ。


(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは、左打席から4.25秒前後と、けして速いタイムではない。走塁を見ていても、加速までが遅く、それでも二塁到達は、8.2秒を切ってくる。そのため本気で走る習慣を身につけられれば、もっと速いタイムが出ても不思議ではないだろう。

 遊撃手としても、独特の動きからの強肩を生かした送球は日本人には真似できない。球際での対応も上手く、精度はともかく広い守備範囲を誇る。プロでもショートができる素材なのか? 身体能力を生かして他のポジションを担ってゆくタイプなのかの見極めが求められることになりそうです。





(打撃内容)

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、カカトを浮かし構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては並ぐらいですが、打席でリラックスして構えられているのは良いところ。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎えるあたりで動き出す、「遅すぎる仕掛け」を採用。しかし彼のように両親が外国人で、日本人にできないヘッドスピードやパワーが違うレベルまで行ける可能性もあり、この始動のタイミングでもプロレベルで扱える可能性はあると考えられます。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの間はないので、狙い球を絞りその球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいという意志は感じられます。

 引っ張った時の打球は見事ですが、左方向にしっかりした打球を飛ばせるかには疑問を持っています。外角の球を、上手く合わせてポテンヒットを放った時には壁をしっかり作って足元も動かないでさばいていました。しかし、これがしっかりしたスイングの上で出来るのかは今後のチェックしてみたいポイントです。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さを補っています。バットの振り出しに癖がなく、インパクトまでロスなく振り下ろせることがこの選手の良いところ。ボールを捉えてからも、フォロースルーを使ってボールを遠くに運ぶことができています。バット自体も強く振れるようになってきていますし、打球に角度を付けて飛ばすこともできています。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 頭の上下動は小さめで、目線の動きは少ない。体の開きも、なんとか我慢できている感じ。軸足も地面から真っ直ぐ伸びて突っ込んでいませんし、内モモにも適度な強さも感じられます。

(打撃のまとめ)

 昨夏は、まだ才能だけで野球をやっているという感じでした。しかし、今春のプレーを確認すると、かなりバットがしっかり振れるようになっており、抑えるべきポイントもおさえられているように感じます。特に肉体に頼ったイメージを持たれがちですが、スイング軌道に大きな癖がないところが良いところではないのでしょうか。


(最後に)

 守りでも打撃でも、その精度というのがどのへんにあるのか? 私自身よくわかっていない部分があります。一体この選手は、どのぐらいの可能性を秘めているのか? 見極めて行きたいポイントです。自分をどのぐらい追い込める選手なのか? 壁にぶつかった時に乗り越えて行ける性格なのかどうか?  そういった内面的な部分を特に見極めて行きたいと思います。


(2022年 春季愛知大会)