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茨木 秀俊(阪神)投手のルーキー回顧へ







茨木 秀俊(帝京長岡3年)投手 182/85 右/右 





「思ったほど伸びなかった」 





 今年の候補の中でも、そのフォームや身のこなし は、全国NO.1ではないかと評価していた 茨木 秀俊 。 しかし、この一年での成長は、こちらが思い描いていたほどではなかったというのが、正直なところだった。


(投球フォーム)

 誰もがみても、一目で おっ! と思わせるフォームで投げ込んできます。それでもこの夏は、チームを新潟大会の決勝まで導きました。 5試合 39回2/3 22安 12四死 38三 防 0.68 と、数字的には安定していました。

ストレート 135~140キロ前半 ☆☆☆ 3.0

 球速やボールの感じは、昨夏みた時と殆ど変わっていませんでした。まだボールの質・球威は高校生のそれで、まだ身が入っていない印象。それでも、両サイドにしっかり投げ分けられるコントロールがあります。したがって、右打者の内角には意識して突くことができます。左打者に対しては、やや的がつけ難いのか? 制球が乱れる傾向があります。本格派ですが、四死球を連発して試合を壊すといった、そういった怖さはありません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップでカウントを整えてくる。その合間に、緩いカーブなど織り交ぜる感じ。どの球もカウント球で、それほど空振りを誘うといった球種ではないような気がする。今後、変化球にいかに磨きをかけられるかではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒ぐらいと、それなり。牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも悪くない。そういった投げる以外の動作は悪くはない。まだ、微妙を出し入れするとか、「間」を上手く使ってといったほどの投球術はみられない。ただし、普段から自分のペースでは投げられている気がする。

(投球のまとめ)

 ボールの威力・変化球の持ち球や精度は、それほどこの一年で変わってきていない。あくまでも、彼のもつ柔らかい腕の振りと、筋の良さは損なわずに健在だったというのを確認した感じの最終学年であった。本当の意味で才能が開花するのは、プロ入りして数年後といった感じだろうか。土台は良いので、素直に肉付けして行ければといった気がする。


(投球フォーム)

 昨年からの違いを中心に、フォーム分析を行ってゆきたい。ワインドアップから、足を引き上げる勢いはそれほどではないのですが、高さはそれなり。軸足一本で立った時には、膝に余裕がありバランス良く立てている。フォームの導入部は、昨夏と変わっていなかった。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足をピンと伸ばさないまま重心を沈めて来るので、お尻の一塁側への落としには甘さが残る。カーブやフォークなどを投げられないことはないが、捻り出すスペースが確保しきれないので変化は鈍くなりがち。

 「着地」までの地面の捉えも可も不可もなしといった感じで、体を捻り出す時間も並ぐらい。柔らかい腕の振りで良い変化球を投げられそうなものの、現状これといった変化球がないのは、この辺の動作が大きいのではないのだろうか。昨年は、ここまで足を伸ばさないフォームではなかった記憶があるので、この辺の動作は変わっているのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができている。軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはしやすそう。一方で、足の甲での地面の捉えは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は前で放せているように見えるが、思ったほどボールを押し込めていないような。そういった意味では、驚嘆にないにしろサイドよりも高さの方に問題があるフォームだといえよう。昨年は、足の甲でもしっかり地面が捉えられていないので、その点では昨夏の方が良かった用に思えます。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さが残るのですが、カーブを使う頻度はそれほど多くはありません。またフォークは現状みられないことを考えると、そこまで窮屈になって肘に負担がという場面は少ないのでは?

腕の送り出しを見ていても、肩への負担も特に感じられません。現状それほど力投派といったほどでもないので、故障のリスクは少ないフォームではないかとみています。

<実戦的な術> ☆☆☆★

 「着地」までの粘りは平均的で、打者としてはタイミングが合わせ難いということは無さそう。その一方で、ボールの出どころは隠せているので、投げミスをしなければそこまで痛打を浴びることはないのかなと。

 腕はしっかり投げ終わったあと体に絡んでくるなど、打者としては吊られやすい。ボールの出どころも隠せているので、ストライクゾーンからボールゾーンに逃げてゆく球が投げられれば、それなりに空振りは誘えるのではないのだろうか。また「球持ち」も良く、体重は前に乗せられている。むしろ、ちょっと前に突っ込み過ぎなのではないかという気もするぐらいだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」や「開き」などを中心に、各動作良い。足の甲の地面の捉えが浅いことからも、ボールが高めに集まりやすい点は見られるものの、制球で苦しむタイプでは無さそう。故障のリスクも低いが、将来的に武器になる変化球を習得できるのかという部分での疑問は残った。全体的には、昨年の方が下半身の使い方やお尻の落としは良かった感じで、肉体の成長をフォームの悪化で帳消しにしてしまったのではないかと考える。


(最後に)

 この一年では、目にみえて良くなった部分は見出し難い。それでも、元々持っている資質の高さはぴか一で、球界を代表する投手育成力の高い阪神ならば、見違えるほどの投手に仕立てられるのではないかという期待は抱きたくなる。しかしそのためには、一にも二にもストレートがプロの球になることが求められる。これを、どのぐらいの期間で実現できるかで、大成への時期も変わってきそうだ。それでも順調にゆけば、3年後ぐらいには、かなりの確率で先発の一角に入ってくるのではないかと期待したい。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2022年夏 新潟大会)


 








茨木 秀俊(帝京長岡2年)投手 184/83 右/右 
 




 「センスはピカイチ」





 投げているフォーム・身のこなし・変化球のキレなど、筋の良さという意味では全国屈指の素材ではないかと思われる 茨木 秀俊 。このひと冬の成長次第では、ドラフト上位も意識できる素材ではないかと思うのだ。


(投球内容)

 昨年から監督に就任した、元日ハムの 芝草 宇宙 監督の元、指導を受けているという。凄みのある素材というよりも、芝草氏の現役時代同様に、センスに秀でたタイプではないのでしょうか。昨夏の大会では、すでに旧チームから背番号1を付けていました。しかし、大会に登場してきたのは、日本文理 との試合から。この試合に満を持して登場し、7回を投げて9安打・7失点と打たれ敗れます。秋にはチームを北信越大会に導き、最速143キロまで記録したと言います。

ストレート 135~140キロ台前半 ☆☆☆ 3.0

 適度に勢いと伸びを感じさせるボールを、両サイドに投げ分けてきます。まだ球威が物足りなく、力で押し切れるほどのものはありませんでした。そのため、甘くない球でもはじき返されたりと、力で押し込むことができずに敗れました。そういったボールの強さ・体力などは、これからの課題ではないかと考えられます。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りするスライダーに、緩いカーブ。さらに、打者のタイミングを狂わせるチェンジアップなどがあります。変化球のキレ・曲がりも悪くなく、真っ直ぐに磨きがかかれば、さらに効果的に使えるようになるのではないのでしょうか。

その他

 牽制も鋭く、頻繁に走者が出ると投げてきます。クィックも0.9~1.0秒と高速ですし、フィールディングの身のこなしも悪く有りませんでした。そういった野球センスは、ピカイチなのだと思います。執拗に牽制を入れるように、少し神経質なところがあるのかもしれません。

(投球のまとめ)

 フォーム・制球力・変化球 などのセンスはピカイチです。まだ真っすぐの球威・勢いが持続せずに、序盤で陰りが見えたところを、日本文理打線に捕まり大量失点に。秋には、自己最速の143キロ(夏は141キロ)を記録したように、少しずつ資質を伸ばしている最中です。そのため一冬越えて、どのぐらいビシッとするかで順位も変わってきそうです。そのへんは、元プロ野球出身の監督ですから、ぬかりなく指導してくれるのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から将来像を探ってみたいと思います。ワインドアップで振りかぶり、それほど勢い良く足を引き上げて来るわけではないのですが、高い位置まで上げてきます。軸足の膝にも余裕があり、実にバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 それほど一塁側にお尻を深く落としてくるフォームではないのですが、カーブやフォークが投げられないことはないと思います。ただし、こういった球を投げても捻り出すスペースは充分ではないので、曲がりはあまり良くないかもしれません。

 むしろ前にしっかり足を逃がすことができ、「着地」までの時間を稼ぐことができています。すなわち、体を捻り出す時間が確保できているので、カーブやフォーク以外の球種ならば、曲がりの大きな変化球の習得も期待できます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めていますし、フォームも縦推進の傾向が強くブレ難い。そのため、両コーナーへの制球は安定しやすいと考えられます。足の甲での地面の捉えも好いので、浮き上がろうとする力も抑え込めています。故に、ボールも高めには集まり難いのではないかと。

 まして、「球持ち」もまずまずで、ボールもある程度押し込めています。まだ低めにビシバシ集まるという感じではありませんが、指先の感覚も良さそうですし、安定した制球力が期待できます。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としも、カーブやフォークが投げられないほどではないでしょう。まして、そういった球も殆どみられません。そういった意味では、窮屈になり難く肘への負担は大きくは無さそうです。

 ややボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が上がり気味なフォームではあるのですが、肩への負担が極端に高いというほどでも無さそう。現状は、力投派という感じもしないので、疲労を溜めやすいということも無さそうです。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもそれなりに作れていますし、ボールの出どころも平均的かと。したがって打者が苦になるほどではないにしろ、コントロールミスをしなければ、大丈夫な気はします。

 何より投げ終わったあと体に絡んでくる腕の振りの柔らかさは見事で、さらに腕の振りが鋭くなるとか真っすぐの勢いが増してくれば、打者の空振りもどんどん奪えるようになるのでは? ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできているので、ウェートや筋力が伴ってくれば、素直にボールに反映されるフィニッシュとなっています。その証として、投げ終わったあとの地面の蹴り上げも素晴らしいです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が並な以外はまずまずの動作がすでにできています。制球を司る動作も、将来的に武器になる変化球の習得も期待できそうですし、あとは故障に注意しつつ筋力やウェートアップ、股関節の柔軟性を養って行ければ、大きくいじる必要は無さそうなぐらい土台の良さもピカイチです。


(最後に)

 まだ発展途上の選手だとは思いますが、夏までに相当なレベルにまで昇りつめても不思議ではありません。土台とセンスは今年の候補中でも屈指ではないかと思えるだけに、地道にトレーニングを積んで行ければ上位指名も夢ではないでしょう。個人的にはこのオフみた高校生の中では、一番 おっ! と思わせてくれる素材でした。


(2021年夏 新潟大会)