22kp-6





斎藤 響介(オリックス)投手のルーキー回顧へ







齋藤 響介(盛岡中央3年)投手 177/72 右/右 
 




 「プロ志望に転換」





 下級生の時から東北を代表する好投手として知られ、3年春には150キロ台王台にも到達したという 齋藤 響介 。しかし、進学が濃厚という噂が流れており、まさかプロ志望届を出すとは私自身あんまり考えていなかった。特に、甲子園にでも出場して、高い評価をされない限りとはと。

(投球内容)

 小さめなテイクバックから、クィック気味なフォームで投げ込んできます。この夏は最速152キロを記録するなど状態も良かったのですが、さすがにこの夏6試合目となった決勝戦では体力的にも一杯一杯になってしまった印象は否めませんでした。

ストレート 常時145キロ前後~MAX152キロ ☆☆☆★ 3.5

 小さめのテイクバックから、ピュッと突然ボールが出てくる感じで、球速表示云々に関係なく異質のキレがあります。実際この夏も、右投手としては破格の 45回2/3イニングで57奪三振の三振比率は尋常ではありません。全体的に球筋が高いのは気になるのですが、打者の内角を厳しく突いたり、四死球も12個で 26.3% と優秀です。ストライクゾーンの枠の中では甘い部分はあるのですが、四死球で自滅するような選手ではありません。

変化球 カーブ・スライダー・カットボール・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 基本的には、カーブとスライダーとのコンビネーションで組み立てられ、時々カットボールやフォークを交えてきます。スライダーではカウントがしっかり取れるのですが、高めに甘く入ることが多いので気になります。フォークもあるのですが、まだその精度・落差という意味では、発展途上ではないかと感じます。まだ変化球には、絶対的なものはなく真っ直ぐに依存したピッチングスタイルです。

その他

 マウンドさばきが洗練されていて、投手としてのセンスの良さを感じます。クィックは1.0秒前後と高速で、牽制も非常に鋭い。フィールディングも上手く、運動能力の高さが伺えます。気持ちを全面に出す力投派の側面もありますが、投げるタイミングを変えたりと冷静さも兼ね備えています。

(投球のまとめ)

 ボールに非常に勢いとキレが感じられるので、岩手の球場のスピードガンが出やすい出にくいというのは関係なく、異質のキレの良さを感じます。ただし、体格の無さから来る素材としての奥行きの無さと、高めに甘く入る球もあるので、プロの打者相手だと手痛いところで痛打を浴びるケースも多いかもしれません。その辺を回避するだけの、ボールの威力や細心の注意を投球に払えるかで変わってきそうです。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくてもクィックで投げ込んでくる選手で、軸足に体重を乗る前に重心を沈ませてきます。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種に無理は感じられません。ただし、多少変化が鈍くなる恐れはあります。また「着地」までの地面の捉えも早すぎることはないのですが、武器になる変化球を習得できるかは微妙ですが、それなりにキレのある変化球は投げられると思いますが。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられおり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。しかし、リリース時に頭と腕の角度が開き過ぎているので、外回りにブンと腕が振れる形になり、軸がブレやすくなっています。このことにより、コントロールがアバウトになりすいのではないかと。

 また足の甲での地面の捉えも浅いので、浮き上がろうとする力を充分には抑え込めていません。「球持ち」は良く前で放せているものの、まだまだ球筋が全体が高い傾向にあります。四死球で自滅する危うさはないのですが、ストライクゾーンの枠の中では甘い球も少なくありません。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのでは? 腕の送り出しにも無理な角度は感じられないものの、腕が外旋してブンと振るために、ある程度肩への負担はあるように感じます。またそれなりに全身を使った力投派でもあるので、疲労は溜めやすいのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 地面を捉えるのが早すぎる感じはしなく、むしろ小さめのテイクバックとボールの出どころをある程度隠せているところからも、見えないところからピュッと来るギャップは作れていると考えられます。それにキレ味抜群の球質も相まって、どうしても打者差し込まれ振り遅れやすいフォームを作れていると考えられます。

 腕も適度に振れていて体に絡んでくる粘りもあるので、打者としては勢いで空振りをしやすいこと。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースはできているのですが、一塁側に投げ終わったあと流れてしまうことが少なくありません。そのため作り出したエネルギーを、ダイレクトにボールに伝えきれないロスが生じます。このへんは、今後の課題として残りそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「球持ち」を中心に昨夏より良くなっていることが伺える。「体重移動」に関しては、まだステップの幅が適正でないのか? あるいは支える下半身が弱いのか? 投げ終わったあと、一塁側に流れるロスが見られる。この辺が改善されれば、さらに球質は向上するのではないのだろうか。

 制球を司る動作や故障の動作は平均的で、今後武器になるほどの変化球を習得して行けるかが鍵になる。しかし、大きな欠点はなく、肉体の上積みも望めそうなので、さらに良くなって行ける可能性があるのではないのだろうか。


(最後に)

 キレ型で球威に欠ける点と高めに甘く入ることで、プロの打者に痛打を浴びる場面も結構出てくるだろう。しかし、尋常じゃない球のキレを活かすだけの野球センスもあり、山本由伸(オリックス)のようにプロで異彩を放つことができる可能性は秘めている。ドラフトでは、4位前後の指名は期待しても良いのではないのだろうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2022年夏 岩手大会)










斎藤 響介(盛岡中央2年)投手 177/69 右/右 





 「完成度の高い好投手」





 素材で圧倒するポテンシャル型というよりも、センスと完成度で勝負する実戦派という感じがする 斎藤 響介 。22年度の東北地区を代表する存在として、これからクローズアップされる機会も増えて来るだろう。


(投球内容)

 夏の岩手大会では、チーム本塁打が200本以上と評判だった盛岡付属打線に、真っ向内角攻めで勝負した投球が印象的でした。中盤以降スタミナが切れたところを大量失点することになったものの、序盤は強力打線を力で抑え込む見事な投球でした。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 勢いのある真っ直ぐをガンガン両サイドに投げ分けて来るタイプで、2回戦の水沢商業戦では149キロまで到達したと言います。打者の内角も強気に突いて来るのですが、全体的にボールが高いので、勢いが鈍ると長打を浴びやすい傾向にあります。それほど、四死球を出すような危ういタイプではないのですが・・・。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・スプリット ☆☆☆ 3.0

 横滑りするスライダーと、緩いカーブとのコンビネーションが目立つ。その他にチェンジアップなどもあるだが、あまり使って来ない。フォークなどもあるようだが、正直チェンジアップと見分けは付かない感じ。そのため現状は、カーブ・スライダーが中心であり、打者の空振りを誘うほどの変化球はないように思える。ただし、変化球を投げるセンスやキレ自体がが悪いわけではない。

その他

 牽制はかなり鋭く、クィックも1.05秒前後とまずまず。投げるタイミングも変えるなど、いろいろ工夫しているのは伝わって来る。

(投球のまとめ)

 初回から、強打の盛岡大付属打線を臆することなく攻める姿には好感が持てた。その一方で、3回ぐらいから勢いが鈍ってきたように、筋力・体力の物足りなさも残ったのは確か。そのへんを、一冬の間にどのぐらい払拭できるだろうか? 恐らく最速では、最終学年には150キロを越えて来るだろうが、問題はそういった球をどのぐらい持続できるかではないかと思うのだ。腕の振りも良く、真っ直ぐが良ければ変化球も活きるタイプだと考えられる。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみたい。足を引き上げる勢いはあるものの、その高さは平均的。軸足の膝には余裕があり、全体のバランスはそれなりといった感じだった。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほどでは無さそう。前へしっかりステップしており、「着地」までの地面の捉えもそれなりで、体を捻り出す時間もある程度覚悟。したがって大きな曲がりを望めるかは微妙なものの、ある程度キレのある変化球は投げられる下地はあるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内にしっかり抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。しかし、足の甲での地面の捉えが少し浅いのと「球持ち」がそこまでではないので、ボールが押し込めていない。そのことで、ボールが上吊りやすいのではないのだろうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークを投げても窮屈になるほどではないように思える。また、そういった球種も多投しなければ、肘への負担は大きくはないだろう。

 腕の送り出しを見ていても、肩に負担がかかるといったほどでもない。結構、全身を使って投げ込む力投派ではあるので、疲労は溜めやすいのかもしれないが。疲れからフォームを崩して、怪我につながらなければとは思うが、故障のリスクはけして高くはないようにみえる。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、ボールの出どころも平均的といった感じ。けして苦になるフォームではないが、投げミスをしなければ痛打は喰らいやすいわけではないだろう。

 腕は強く振れていて、打者は誘われやすい勢いは感じられる。あとは、もう少しシッカリ体重を乗せてからリリースできれば、打者の手元までグッと前に乗って来るような球威が出てきそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「開き」「体重移動」にもう少し粘りが出てくると良いのだが。故障のリスクはさほど高くは見えないが、ボールが高めに集まりやすいことと、武器になるほどの変化球を習得できるのかは微妙なフォームとなっている。実戦的というほどでも無ければ、素材型というほど未完成なフォームでもないように思える。


(最後に)

 良いボールを投げ続けられるだけの体力・筋力がまだ不足していて、その腕の振りに体がついていっていない感じがする。そういった確かな土台を作った上でこの投球ができれば、全国レベルの実戦派になれるのではないのだろうか。速い球を追求するのは構わないが、中身がともなっての球速とだという認識は持って頂きたい。それができれば、高校からのプロ入りも現実味を帯びてきそうだ。現状は、プロというよりも名門・強豪大学に進んで確かな筋力・体力を身につけた4年後に上位指名を狙う、そんなタイプに見えました。


(2021年夏 岩手大会)