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田中 晴也(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







田中 晴也(日本文理3年)投手 186/82 右/左 





 「スケールより実戦型」





 5月に生で見た時に、この選手は力でねじ伏せる投球よりも、少し力を抜いて制球力重視の方が、持ち味が出るタイプではないかと記した 田中 晴也 。甲子園では緒戦で敗れてしまったが、この夏の彼のベストピッチングと思える北越戦を改めてみて、彼のこの夏の成長ぶりを確信した。


(投球内容)

 甲子園では、海星相手に7失点して緒戦で敗退でした。しかし、新潟大会では、34回 19安 14四死 35三 防 0.26 といった内容でした。

ストレート 140キロ前後~MAX150キロ ☆☆☆★ 3.5

 春は、初回から速い球を投げようと力んでしまい、ボールが上吊って失点していました。それに比べると、夏の大会は慎重に立ち上がりから投げていたように思えます。それでも初回から、打者の内角を厳しく突くなど実戦的な投球を魅せます。エンジンがかかってくると、テンポも上がり球筋も定まって来るので、そこから力を入れて要所では150キロ近いボールを投げ込んできます。特に、新潟大会の準決勝・北越戦では、最速で150キロを記録していました。ただし、基本的に力でねじ伏せるといったタイプではないように思えます。

変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 小さく曲がるカットボール気味なスライダーと、曲がりながら沈むスライダーの二種類があり使い分けてきます。またスプリットのような落差の少ないフォークも結構使ってくるのですが、チェンジアップとの区別の難しいです。さらに時々、緩いカーブなども持っています。球種は多彩で多く使ってくるのですが、空振りを狙った誘うという絶対的な決め球はありません。

その他

 クィックも1.05秒前後の速いものと、1.2秒前後の遅いものを使い分けます。牽制は非常に鋭いですし、フィールディングも上手いです。打撃でも体幹が強く長打力がある選手なのですが、将来的に野手に転向するならサードあたりならば行けるかもしれません。

(投球のまとめ)

 内外角にボールを散らせつつ、変化球も多く織り交ぜて的を絞らせません。ランナーを背負うと、結構ボールを長く持ったり、パッとマウンドを外したりと、非常に投手らしい一面が見られます。立ち上がりに力んで制球を乱すことが多く、そこで失点してしまう課題はあります。しかしそこを乗り越えると、厳しいところを突いたり、精度の高い制球力や投球術で相手を仕留めてきます。そのためプロで大成するとすれば、力でゴリ押しするリリーフではなく、先発としてではないかと見ています。


(成績から考える)

 甲子園では、6回 8安 5四死 10三 7失点 で敗れましたが、上記でも記したように、新潟大会では 34回 19安 14四死 35三 防 0.26といった内容に。どちらが彼の本当の姿かと言えば、どちらの側面もあるのが、現状の彼のような気がします。甲子園では、その悪い方が顔を覗かせてしまったのかなと。春にフォーム分析はしているので、新潟大会の成績を元に考えることにします。

1,被安打は投球回数の70%台 ◎

 被安打率は、55.9% 。特に立ち上がりに甘く高めに浮いた球をヒットされることはありますが、イニングが進むにつれ被安打も減ってゆくタイプかと。県レベルだと、なかなk容易には捉えられなかったことがわかります。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球率は、41.2% と、高めです。これも、立ち上がりの不安定さを乗り換えると、内角の厳しいところ、外角のコーナー一杯に決まり出し繊細なコントロールが見られます。力んで速い球を投げると制球は乱れますが、140キロ前後ぐらいでセーブして投げると、両サイドへの制球はかなりハイレベルです。それでも高めに抜けやすい、集まりやすいという傾向は、エンジンがかかってもみられます。

3,三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 奪三振は投球回数を上回っており、この基準も充分クリアできています。地方大会と全国大会とのレベル差もありますが、真っ直ぐの威力と変化球のレベルは、ある程度のものは持っています。ただし、プロレベルだと三振が思い通りとれず苦しむかもしれません。

4,防御率は0点台 ◎

 高校生の県大会レベルであれば、やはり0点台を望みたいところ。その点でも、0.26 なので文句はありません。

(成績から考える)

 この夏の新潟大会の内容をみれば、最後の夏は力と技のバランスがかなり上手く取れていたように思います。やはり、彼のいるチームが甲子園に出てきたのは必然だったと考えられます。しかしそれが、まだ全国レベル・より高いレベルで力を発揮できる領域には届いていないようにも感じられました。


(最後に)

 タイプ的には、両サイドで緩さぶりをかける 西 勇輝(オリックス-阪神)タイプの、先発投手に育つのではないかと期待しています。まだ即二軍で結果が残せるレベルかと言われると疑問ですが、この力と技のバランスがプロの世界でも発揮できるようになると、先発でも結果が残るようになるのではないのでしょうか。そういった意味では、立ち上がりの問題をクリアできれば、意外に早く3年目ぐらいには一軍ローテーションに入ってきても不思議ではないと見ています。正統派の投手を育てるのには定評のあるロッテだけに、期待が高まるところです。春よりも立ち上がりの工夫も見られるようになり、力と技のバランスも良くなっていました。その点を考慮して、春よりもワンランク高い評価を最後に記したいと思います。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2022年夏 新潟大会)



 








田中 晴也(日本文理3年)投手 186/82 右/左 





「それほど圧倒的ではなかった」 





 今年の高校NO.1の呼び声も高い 田中 晴也 。4月25日まで対外試合禁止の処分を受けていた影響もあるのか? まだ調整途上だったのかもしれない。そのため、相手で力で圧倒するような、凄みのあるボールは観られなかった。


(投球内容)

 ちょっと試合前から所作をみていると、あまり集中力がないのかなという心配は持ってみていた。そのため、不用意に甘く入って初回失点をきっした。しかし、以後は、しっかり自分の投球を取り戻していったのだが。

ストレート 常時140キロ前後~MAX92マイル(148キロ) ☆☆☆★ 3.5

 立ち上がりから92マイル・148キロを記録していたものの、ボール自体はあまり来ていませんでした。むしろ2イニング目以降、球速は140キロ前後でも、しっかりコースにコントロールされていた球の方が、球質の面でも余分の力が抜けていて良かったように思えます。要所で145キロを超えるような力のある球も投げていたのですが、むしろ力を入れて投げると甘く入り、それでいて相手打者を力で押し込めるほどではないので、痛打を浴びる場面もみられました。普段からこうなのか? これからもっと調子が上がってきた時にはどうなのか? その辺は、今後の試合をみて見極めてみたいところです。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 右打者の外角に、スライダーやカット気味な小さく逃げる球を上手くコントロールしていました。また投球の中では、スプリット気味に小さく沈む球を多く織り交ぜてきます。フォークとのことですが、ストンと落差があって沈む感じではありません。余裕があると、緩いカーブを投げたり、左打者にはチェンジアップのような球も見られます。フォークとチェンジアップの区別が、つかないような落差です。現状は、右打者外角のスライダーを振らせるのが持ち味なのでしょうが、絶対的な変化球があるといった感じではありませんでした。

その他

 クィックは1.05秒前後とまずまずで、フィールディングの動きも悪くありません。牽制はこの試合あまり目立なかったのですが、元々入れてくるタイミングが上手い選手です。パッとランナーを背負ってでもマウンドを外すなど、投手らしい一面も垣間見られました。

(投球のまとめ)

 投げるタイミングを変えたりとか、微妙bなコースの出し入れができるわけではありません。それでもだいぶ昨夏に比べると、投手らしい投手にはなってきました。要所で速い球を投げてという感じだったのが、しっかり内角外角にコントロールして、投球を組み立てられる姿をみたのは新たな収穫でした。現状は、力でねじ伏せようとするよりも、140キロぐらいの球でコースに丹念に集められる制球力や変化球を織り交ぜ、試合を組み立てられる投球術の方を評価したい内容でした。ただし、しかし高校NO.1だとか、上位指名を意識するのであれば、もう少し力で行った時には相手を圧倒して欲しいなとは感じました。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。昨年よりも軸足の膝に力みがなく立てるようになり、バランスは良くなっているように思えます。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としは甘くなりがち。カーブやフォークが投げられないことはないと思うが、どうしても曲がりや落差が鈍くなる恐れはある。

 「着地」までの地面の捉えはそこそこで、体を捻り出す時間はそれなり。武器になるほどの変化球を、今後習得できるかは微妙な感じ。球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力は内に留められている。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。

 足の甲の地面の捉えが浮いていたのが、少し地面を捉えるようにはなってきている。それでもまだ充分に浮き上がろうとする力を抑え込めていないので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。また「球持ち」並でボールを押し込めていないので、その点でもボールは高めに集まりやすい。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すが、カーブやフォークが投げられないほど窮屈ではないだろう。ただし、縦の変化の割合は多いので、肘へのケアには充分注意してもらいたい。

 ボールを持っている肩が若干上がり気味で、グラブを持っている肩が下がり気味。それほど気にするほどではないが、多少肩への負担も生じる可能性がある。けして力投派ということはないので、疲れを溜めやすいということはないとおもうのだが。

<実践的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど苦になるフォームではない。それでも、ボールの出どころは隠せている。腕も適度には絡んでくるが、そこまで強く叩けているというほどではない。ボールへの体重の乗せはまだ不十分で、グッと前に体重が乗って行っている感じではないので、ここが変わってくるとボールの勢いも変わってきそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「開き」以外は平凡で、特に「体重移動」や「球持ち」などが物足りなく、ボールの質に影響している。制球を司る動作では高めに集まりやすいこと、故障のリスクはそこまで負担は大きくは無さそう。また将来的に、武器になるほどの変化球を見出だせるかは微妙なフォームとの印象を受けた。いずれにしても、まだ発展途上であり、これからの取り組みと意識次第ではないのだろうか。


(最後に)

 上位指名される選手だとは思っているが、この日のパフォーマンスを見る限りは 上位指名確定 といえるほどの圧倒的な内容ではなかった。特に上位指名を狙うのであれば、高校生相手に力で圧倒する凄みやボールの強さみたいのが欲しいのだが、現状はまだまだその可能性に期待するといった感じで物足りなさが残った。思った以上に投手らしくなっており、そういった実戦力の部分での成長は感じられたものの、 力と技 のバランスがまだ不十分であり、それが整ったときに上位指名の評価ができるようになるのではないかと考えている。最後の夏に、さらに力を強さを増した姿を期待して、今はその時を待ちたい。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2022年 春季新潟大会) 










田中 晴也(日本文理2年)投手 185/82 右/左 
 




 「秋の時点では高校NO.1」





 秋の時点で、高校生で一番の投手は?と訊かれれば、迷いなくこの 田中 晴也 の名前をあげるだろう。しかし、それだからといって、来年の1位が確定的かと言われれば、まだまだこの冬の成長次第といった気がする。そんな田中の投手の、可能性について考えてみたい。


(投球内容)

 夏の甲子園では、敦賀気比戦に先発。8イニングを投げて、15安打・8失点と苦い登板となった。続く秋の大会では、北信越大会の準々決勝まで駒を進めるも、星稜高校の前に、8回を投げて5安打に抑えるも3失点で敗れて、選抜出場は絶望的になってしまった。

ストレート 常時140~MAX147キロ ☆☆☆★ 3.5

 適度な勢いと、ズシッとミットにおさまる球威を感じさせる真っ直ぐです。コースに適度に散っており、制球もそこまで粗くない。ただし、ボールが見やすいのか? 打者が詰まりながらもヒットにされてしまう場面が多かったのは、敦賀気比戦を観ていて気になりました。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォークなど ☆☆★ 2.5

 スライダーやチェンジアップを中心に使って来る配球で、たまに緩いカーブやフォークも使ってきます。日本文理伝統の、フォークに依存したピッチングスタイルではありません。特に、変化球で空振りを狙って取れるような球は持ち合わせていませんでした。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。牽制は、まずまずのタイミングで入れてきます。細かい出し入れとか間を使った投球術などは観られず、まだまだストライクゾーンに威力のある球を投げ込んでくるだけといった感じです。

(投球のまとめ)

 強豪校相手に、力で押し切るとかいうほどの絶対的なものはなく、それでいて変化球や投球術で上手くかわしたり、試合をまとめるといった総合力もそこまでは高くない。あくまでも、そうなれる可能性を秘めているといった部分で評価したい素材なのではないのだろうか。





(投球フォーム)

 そのためには、技術的に何が必要で物足りないのか?フォームを分析して考えて行きたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った時には、膝に力みは感じられないものの、全体のバランスとしてはもう一つといった印象。理想的な立ち方とは、Yの字 になる形で、できるだけ トの字 のような突っ立った立ち方は避けたい。こういった立ち方になると、なんとかバランスを保とうと余計なところに力が入ったり、いち早く倒れ込んで突っ込みやすいフォームに繋がるからだ。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としは、体を捻り出すのに充分といったほどではない。それでも、カーブやフォークといった球種が投げられないほどではないだろう。そういった球の曲がりが、中途半端になりやすいということ。

 それ以上に気になるのは、「着地」までの地面の粘りが平凡で、体を捻り出す時間が充分ではないこと。こうなると変化が中途半端になってしまうので、良い変化球を投げるためには「着地」までの時間を稼げる意識を持ちたい。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドのブレは少なく安定しやすい。ただし、足の甲の地面の捉えが浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが高めに集まりやすい。ある程度「球持ち」が良く、ボールを押し込むことができているので、そこまで抜ける球は観られないが、低めにはなかなかボールが集まってこない。無理に低めに投げようとして、引っ掛かり過ぎてしまうことも少なくない。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としには甘さは残すものの、カーブやフォークを投げられないほど窮屈ではないだろう。こういった球種を投げる頻度も今のところは少ないので、そこまで肘への負担は気にしなくても良いのでは。

 また腕の送り出しを観ていても、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということは少ないのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがそれほどではない上に、ボールの出どころも比較的見やすく、打者としては苦になるフォームではないように思える。

 腕はしっかり振れているものの、ボールが見やすいので縦の変化球を振ってもらえない可能性が高い。また足が浮いてしまうことで、下半身のエネルギー伝達は遮断されてしまっている。そのため、腕や上体の振りでキレを生み出してゆくしかなくなってゆく。逆にこのフォームで、あの球威をどうやって生み出しているのかは気になるところではある。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」「体重移動」に関しては、もう少し粘りなり我慢が欲しい。それらの動作をもっと改善できる方法は、股関節の柔軟性を高めつつ下半身を強化して、「着地」までのタイミングを遅らせられるようになることだろう。故障のリスクが低いのは良いが、現状制球を司る動作は平凡で、将来的に武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙。フォーム的には、ここから伸び悩む可能性は低くはない。


(最後に)

 秋の時点では全国屈指の素材ではあるものの、来年の今頃もそうで有り続けられるかは微妙だと言わざるえない。そのため、全国レベルの相手には、どうしてもまだ力で圧倒するなり、総合力で抑え込めるまでのレベルには至っていない。高い目標を設定して、この冬を乗り越えられるのか。そして、貪欲に知識を取り込めた入り、いろいろ打ち込められるセンスと努力できる才能があるかに懸かっている。現状は、上位候補の一人といった位置づけではないのだろうか。



(2021年夏 甲子園)