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森本 哲星(巨人)投手のルーキー回顧へ







森本 哲星(市立船橋3年)投手 175/72 左/左 
 




 「意外に力強い」





 球速こそ140キロ前後ではあるが、打者が思わず押し込まれるボールの強さがある 森本 哲星 。いろいろ細かいことまで考えて投球をしており、野球センスにも優れていた。


(投球内容)

 この夏の千葉大会では、5試合に登板して 26回2/3 29安 10四死 28三 防 2.36 。 数字的には、特筆すべきほどのものはなかった。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ ☆☆☆ 3.0

 球速は140キロ前後と、ドラフトで指名される左腕としてはやや遅い部類。それでも手元までのボールの強さがあり、打者は思わず押し込まれてしまう。その球を、両サイドに散らせて来る。やや力んで高めに抜けてしまうことは多いが、右打者の内角クロスを厳しく突くことはできていた。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆★ 2.5

 変化球は、基本的に横に滑るスライダーとのコンビネーション。特にこの球は、カウントを稼ぐだけでなく、右打者にはインコースに食い込ませて来る。時々高く、抜けて来ることも少なくないのだが。チェンジアップもあるようだが、右打者に対してもスライダーを使うことが多く、チェンジアップやカーブといった球種は滅多にみられない。

その他

 甲子園では、鋭すぎる牽制で野手が捕れずに進塁させる場面もあった。しかし、基本的には左腕らしく上手い部類なのだろう。クィックは、0.9秒台~全く使わずに1.7秒ぐらいかけて投げることもあり、一球一球走者が出ると投げるタイミングを変えて投球できていた。特に興南戦では、試合序盤のランナーを背負う場面からのリリーフ。それでもそういったことができる、精神的余裕は持ち合わせているようだ。

(投球のまとめ)

 まだ球速、変化球の種類・細かい制球力など、総合力では物足りない。その点で、育成枠での評価は妥当だったのだろう。ただし、投球センスは持っており、球速以上に感じさせる球でもあるので、育成9位でも大きくは見劣りしない。そういった意味では、今後の成長次第では、支配下・一軍へといった可能性は秘めた投手なのかもしれない。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、その可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ぐらいで、高さはそれなり高さです。軸足の膝には力みは感じられず、全体のバランスとしてはそれなりといった感じでした。

<広がる可能性> ☆☆ 2.0

 引き上げた足をピンと伸ばさないで重心を落としてくるので、バッテリーライン上にお尻は落ちます。こうなると、カーブで緩急を利かしたりフォークのような鋭く落ちる縦の変化を投げようとすると、窮屈になってしまいます。

 「着地」までの地面の捉えも早めで、体を捻り出す時間も十分ではありません。したがって曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化球で投球を広げてゆくことになろうかと思います。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。またフォームが、縦に推進するので、両サイドのブレは生じ難いと考えられます。したがって、コーナーへの投げ訳はつけやすいかと。

 その一方で、足の甲での地面の捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいです。また「球持ち」も充分押し込めているとはいえず、高めに集まったり抜けやすい要因を作ります。この選手の制球は、高低の制球に課題があるといえます。

<故障のリスク> ☆☆ 2.0

 お尻が落とせず窮屈なのですが、無理にカーブやフォーク系の球を使って来ないので、肘への負担を生じる場面は少ないのかもしれません。しかし、極端にボールを持っている方の肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がる。そういった送り出しなので、肩への負担は大きいと考えられます。フォームは結構力投派なので、疲労も溜めやすいと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがなくフォームは淡泊なのですが、ボールの出どころは隠せているので、突然ボールが出てくる感じに陥るのかもしれません。そういった意味では、打者は差し込まれやすいのではと。

 腕は強く振れており、打者は吊られやすいはず。しかし、踏み込んだ前の足が早く地面を捉えブロックしてしまうので、体重がグッとは前に乗って行きません

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外に課題を抱えていることがわかります。そのため故障のリスクが高く、高低の制球力や今後どうやって武器になる球を見出して行けるのか?という、不安要素はつきまといます。


(最後に)

 実際の投球をみた感じでは、意外に面白いかもと思わせてくれるものはありました。ただし、現時点ではまだ高校からプロに入るほどの総合力には至っていない判断します。また、今後もフォームに多くの課題を抱えており、リスキーな素材あることは否めません。そういった意味では、ワンクッション置いてからのプロ入りの方が妥当な判断なのかもしれませんね。


(2022年夏 甲子園)