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今野 瑠斗(DeNA)投手のルーキー回顧へ







今野 瑠斗(東京都市大塩尻3年)投手 182/86 右/右 
 




 「基礎はできている」





 球速は140キロ程度でも、すでに投手としての形はできつつある 今野 瑠斗 。あとは、素直に球威・球速を増すことができれば、一軍での活躍も見込めるのではないのだろうか。


(投球内容)

 この夏は4試合に登板し、チームを長野大会の決勝まで導きました。31イニングを投げて21安打 8四死 23三 防 1.74 といった内容でした。

ストレート 135~140キロ強 ☆☆★ 2.5

 確かに球速は130キロ台後半ぐらいと、ドラフト指名される高校生としてはやや物足りません。しかし、球質的には打者の手元まで適度な強さが感じられますし、打者の外角に安定して投げられる制球力があります。そのため四死球率は、25.8% と投球回数の1/4程度で、四死球で自滅する、そういった危うさありません。しいて言えば、全体的に少しボールが高いかなといった程度。

変化球 スライダーなど ☆☆★ 2.5

 変化球は、ほとんどがスライダーとのコンビネーション。この球でカウントが整えられるだけでなく、縦割れの変化で良いアクセントになっています。他にも球種はあるようですが、この夏初登板となった岩村田戦を見る限りはよくわかりませんでした。1イニングあたりの奪三振は、0.74個 と平凡で、三振がとれる球種の習得がこれからの課題となりそうです。

その他

 クィックは、0.9秒前後と高速で投げ込んできます。また、ランナーを背負うと長くボールを持ったり、ランナーにしっかり目配せをしたりと、余裕を持って投球ができていました。そういった投球術やマウンドさばきには、センスを感じさせる選手です。

(投球のまとめ)

 確かに球速や使える球種の少なさを考えると、本会議で指名するのにはまだ物足りません。それでも投球の基礎的な部分はできており、今後球速を増すこと、使える変化球を増やすことができれば、支配下入りや一軍での登板も期待できる、先発タイプの好投手です。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時には、膝はピンと伸び切ることなく力みは感じられません。そのため軸足一本で、適度にバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足を、それほど高い位置でピンと伸ばさないので、お尻の一塁側にへの落としには甘さは残ります。それでも、カーブやフォークなどの捻り出すスペースが確保できないほど窮屈に見えません。

 気になるのは、「着地」までの地面の捉えに粘りがなく淡泊だということ。したがって曲がりの大きな変化球が投げ難く、現状は球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げることになりそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。そのため、両コーナーへの投げわけは、比較的つけやすいのではないかと。

 気になるのは、足の甲での地面の捉えが短く浅いこと。ゆえに浮き上がろうとする力を充分抑え込めず、ボールが上吊りやすい要因になっているのではないのでしょうか。それでも「球持ち」が悪くなく指先の感覚に優れていそうなので、制球を乱して苦労するといったことは無さそうです。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としに甘さは残しますが、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種が投げられないほどではありません。現状は、そういった球種もほとんど観られないので、気にするほどではないのでしょう。

 腕の送り出しを観ていても、肩に負担のかかるような無理な投げ方でもありません。けして力投派といった感じでもないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。そういった意味では、故障のリスクは低く見えます。

<実戦的な術> ☆☆ 2.0

 「着地」までの粘りがなく淡泊なので、打者としてはタイミングをイチ・ニ・サン で合わせやすいと考えられます。また、ボールの出どころも、さほど隠せているフォームではありません。

 また振り下ろした腕が、体に絡んで来ないなど、まだリリースにも鋭さや粘りの点でも物足りません。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできているとはいえず、前にグッと体重が乗ってきている感じではありません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「体重移動」に課題があり、「球持ち」「開き」も、さらに粘っこそが欲しいところです。故障のリスクは低く、制球を司る動作も、足の甲でもう少し長くしっかり地面が捉えられるようになると、もっと低めに集められそうです。あとは、武器になる変化球をいかに身につけられるかではないのでしょうか。


(最後に)

 投球の基礎はできているのですが、まだ真っすぐの球速や武器になる変化球がないこと。そして、フォームも合わされやすいなど課題が残ります。そのため、出力が上がれば面白いと思うのですが、それまでにプロの打力に潰されてしまわないか心配な部分はあります。現状は、期待の持てる選手ではあるものの、育成枠での指名が妥当だったと判断します。しかしピッチングができるセンスの持ち主だけに、育成枠での指名でも将来一軍のローテーション投手まで、昇りつめられる可能性は秘めている選手ではないのでしょうか。


(2022年夏 長野大会)