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野中 天翔(ノースアジア大明桜3年)投手 180/83 左/左 | |
投げているボールよりも、球速表示が出ているように見える 野中 天翔 。その球速は、コンスタントに140キロ台を記録してきた。夏の大会までその存在を知らない選手であったが、プロから指名されることになる。 (投球内容) 3年夏の大会では、3試合で 12回1/3 9安 6四死 19三 防 3.85 。特に、敗れた準々決勝の秋田南戦での5失点によって、防御率が悪化してしまった。それでも、投球回数を遥かに上回る奪三振の多さが際立つ。 ストレート 140キロ前後~140キロ台中盤 ☆☆★ 2.5 常時135キロぐらいに見えるのだが、思いのほか球速表示が速いのに驚いた。それだけまだ、ボールの質という意味では物足りないということだろう。また制球もアバウトで、投球回数の半分近い四死球は気になるところ。 変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆★ 2.5 スライダーで、カウントを整えてくることが多い。特に空振りを誘うほどのキレは感じないが、ストライクは取れている。時々チェンジアップ系の球も投げてきており、この球の精度が上がってくると投球が楽になりそうだ。 その他 クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。むしろ、フィールディングの動きの良さが目立っていた。特に「間」を上手く使うとか、微妙な出し入れをするといった、そういった投球術はまだ観られない。 (投球のまとめ) まだまだ、左腕から140キロ台のボールを投げ込んでくるだけといった感じ。それだけ投球術・制球力・変化球 という観点では物足りない。その辺、プロの環境で指導・育成された時に、どのレベルまで引き上げられるかに懸かっている。 (投球フォーム) セットポジションから、カカトを浮かして伸び上がるヒールUPを行って、勢い良く足を引き上げてきます。軸足一本で立った時に、膝から上が真っ直ぐ伸びてしまい、バランスこそ悪く有りませんが少し力みが感じられます。テイクバックを大きめにとった、スリークォーターで投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 前に倒れ込むように重心を下げて来るので、お尻はバッテリーライン上に落ちがち。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に沈む球の変化には鈍くなりがち。実際には、そういった球種はみられない。 それでも前にステップすることができているので、体を捻り出す時間は平均的。武器になるような大きな変化は望めないが、球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。 その一方で、足の甲の地面の捉えが浅く、浮き上がろうとする力を抑え込めていない。また上下動が激しいフォームなので、高低の制球力に課題が残る。「球持ち」自体は悪くないので、リリースが安定してくれば手元でもボールをコントロールできそうなものなのだが。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としは窮屈なものの、カーブやフォークを使ってくる投手ではないので、それほど肘への負担は気にしなくても良さそう。また腕の送り出しを観ていると、肩への負担も少なそうだ。力投派といったほどでもないので、現時点では故障のリスクはあまり高くないように見える。ただし、一つ気になることがあるとすれば、あまり夏の大会で長いイニングは投げない間に交代していたということ。単に、夏の大会を意識して負担を軽減するためだったのか? <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的で、特に合わされ難いということは無さそう。ただし、ボールの出どころは隠せており、見えないところからボールは出てくるようには見えるのではないのだろうか。 投げ終わったあと腕が体に絡むなど、腕は振れているように見えます。そのため、三振も多く奪えているのでは? 踏み込んだ足が早めに地面捉えてブロックしてしまうので、前にしっかり体重が乗っていっていません。このへんが変わってくると、球速に見合わって球がゆくようになるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「開き」「球持ち」「体重移動」では、「着地」の粘りの無さが、「体重移動」に影響してボールの質の低下を生んでいるように思える。「開き」は抑えられ「球持ち」の良いので、打ち難さは演出できているので。制球を司る動作では、高めに抜けやすい課題があり、故障のリスクはさほど高くないものの、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙な感じ。打ち難さはあるものの、真っ直ぐの質、変化球の特徴をいかに見出して行けるかが鍵になりそうだ。 (最後に) 現状はまだまだ発展途上の選手であり、総合力で本会議にかからなかったのは頷ける気は致します。同じ育成枠から入った 砂田 毅樹(DeNA)左腕の高校時代に比べると、ワンランク実戦力では劣る気がします。しかし、砂田以上に球速は望めるタイプなので、育成力のある中日がどのように導いて行くのかは興味深い。ある程度時間はかかると思うが、ぜひスケールの大きな投手に育っていって欲しい。 (2022年夏 秋田大会) |