22kp-35
吉村 優聖歩(明徳義塾3年)投手 181/72 左/左 | |
投げる時に、体を二塁方向に捻りながら、それでいて一塁側にアウトステップするトルネード。さらに、腕を横から出して投げ込んでくる 吉村 優聖歩 。なかなか、ここまでいろいろ織り交ぜて投げる変則投手は、プロにもいないと言わざるえないだろう。 (投球内容) U-18の高校ジャパンの一員にも選出され、3試合 7回1/3 5安打 5三振 0四死球 防御率 2.45 という成績を残し、一定の役割を果たした。この選手、変則の割に、コントロールが安定しているところが良いところではないのだろうか。 ストレート 130キロ~130キロ台中盤 ☆☆★ 2.5 変則故に、球速という意味ではかなり劣ります。しかし、独特の球筋とボールの出どころを抑えたフォームでタイミングが図り難い上に、意外に打者の手元でのボールの強さがあり、球速の無さはあまり感じられません。ボールも大まかに両サイドに散らすことができ、コントロールに苦しむタイプでは無さそうです。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 110キロ台のスライダーと、120キロ台のチェンジアップを織り交ぜてきます。この2つの球種は、空振りを誘うほどの大きな変化はしないものの、ストライクゾーンにしっかり集めることができています。 その他 クィックは、1.1~1.25秒ぐらいとバラツキがあるのですが、あえて投げるタイミングを変えて投げているのかもしれません。牽制も独特のタイミングで入れて来るので、打者はスタートが切りにくい、あるいは刺されてしまうこともありそうです。 (投球のまとめ) 相手に嫌がられることに特化したフォームであり、それでいて制球力・マウンドさばきの良いサウスポー。チームにこういった投手アクセントになる投手が欲しい球団にとっては、面白い存在ではないのでしょうか。 (投球フォーム) 足の上げは静かで、あまり引き上げてきません。また軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びがちで、直立気味立ってしまっています。しかし、立ち方自体に力みが感じられないところは良いところ。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 体を前に折って重心を沈ませてくるので、お尻はバッテリー上に落ちてしまっています。フォームの構造上仕方ないのですが、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適した投げ方とは言えません。 また「着地」までの地面の捉えがあっさりしているので、体を捻り出す時間は物足りません。したがって、曲がりの大きな変化球は望み難いのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする力を内に留めることはできている。インステップしてブンと腕が外旋して振られるサイドなので、ある程度はブレが生じてしまうのは致し方ないか。 それでも足の甲でも地面を捉えることができており、浮き上がろうする力を抑えられている。まだリリースが浅いぶん球筋が安定しなかったり高めに抜けやすい側面はあるが、そのへんは下半身がしっかりしてくればもっと安定してきそう。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせないフォームではあるが、基本的にカーブやフォークといった捻り出して投げる球種はみられない。したがって肘への負担は、それほど大きくはないのではないかと考えられる。ただしサイドハンドは、その投げ方故か? 肘を痛める選手は少なくない。 また腕には無理な角度がないので、肩への負担は少なそう。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか? しかし変則は、思わぬところに負担がかかっていることがあるので、体のケアには充分注意してもらいたい。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りという意味では、あっさりしていて合わされやすい。その辺を、インステップしたりサイドから投げ込むことで、左打者の背中越しの見えないところからボールが出くてくるような独特の球筋で補っている。 また腕は投げ終わったあと体に絡んで来るなど、適度な粘りはみられる。どうしてもインステップして踏み出すぶん、ボールへの力の伝え方は逃げてしまうので、球威や球速は生み出し難い。これは、フォームの構造上致し方ないだろう。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は充分抑えられ、球の出どころを隠せている。その一方で、「着地」や「球持ち」の粘りがなく淡白な部分は否めない。「体重移動」に関しては、フォームの構造上致し方ないかと。制球を司る動作はまずまずで、故障のリスクも高くはない。サイド故に、いかに投球の幅を広げて行けるかが鍵になってきそうだ。 (最後に) 対左打者に強いタイプの左腕が欲しい球団にとっては、ぜひ投手陣に加えてみたいと思わせる特徴がある。どうしても球速不足の部分からも、本会議での指名は厳しいかもしれない。その一方で、この手のタイプにしては制球力が良いというのも買いであり、育成あたりならば面白いのではないかとみている。本人がそれでもプロ入りしたいというのならば、ありなのではないのだろうか。 (2022年夏 甲子園) |