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古賀 康誠(下関国際3年)投手 180/80 左/左 | |
この夏の山口大会を見ていたら、たまたま目に入った 古賀 康誠 。全身を使った力投派のフォームから、140キロ台中盤を連発するボールの勢いには目をひくものがあった。山口大会の終盤では、体調をを崩し登板できず。甲子園初戦の先発のマウンドには上がったものの、左腕の球速が出にくい甲子園のガンということもあり、140キロ台前半の球速に留まった。 (投球内容) それでも甲子園では、5試合に登板し、28回1/3イニングで、22安 19四死 19三 防 2.70 と成績で、チームの準優勝に貢献した。 ストレート 135キロ前後~MAX147キロ ☆☆☆ 3.0 山口大会で魅せたような迫力のボールは甲子園では見られなかったが、それでも重い球質の速球を両サイドに散らすことはできていた。球筋が暴れる傾向はあるものの、ストライクゾーンの外へ外へと散って、甘いゾーンに入って来ないところは好いところ。その証に、28回1/3イニングを投げて、被安打は22本と被安打率は 78.0% とまずまずの内容だった。しかしその一方で、四死球は19個と、四死球率は67.1%に昇り、基準である投球回数の1/3以下の倍以上のペースでランナーを出すなど、制球力に課題を残した。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 角度よく投げ下ろされる腕の振りから、曲がりながら沈むスライダーのキレは効果的。他にも小さく逃げるチェンジアップや緩いカーブを時々織り交ぜてくる。このスライダーではカウントを整えることができるなど、粗っぽい制球でも試合を壊さないのは、この球の存在が大きい。しかし、変化球の曲がりがよく見える一方で、1イニングあたりの奪三振率は 0.67個 と平凡なのは気になる材料。 その他 牽制は、左腕だがそれほど走者を刺そうといった鋭いものは観られない。クィックは、1.1秒台とまずまずで、フィールディングの動きも悪くなかった。しいて言えば、少し送球がどうなのかな?という疑問は残ったのだが。 間を使うとか、微妙な出し入れとかそういった技術はなく、投げっぷりの好い大胆な投球が持ち味。 (投球のまとめ) 山口大会の投球が幻だったのか? それとも甲子園では慎重だったのかは定かではない。しかし、ボールの威力という意味では魅力的も、かなり危ういバランスの上で成り立っているので、そのへんはフォームを分析することで、今後の将来像を考えてみた。 (投球フォーム) 大きなテイクバックをとって投げ込む力投派ですが、思いのほかフォームの入りは静かで足も高い位置まで引き上げてきません。軸足一本で立ったときには膝がピンと伸び切ってしまい、トの字 の形になってしまい突っ込みやすい立ち方になっているのは気になりました。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。したがって体を捻り出すスペースとしては不十分で、捻り出して投げるカーブやフォークといった球種を投げるのには適していません。 また「着地」までの地面の捉えが早く、体を捻り出す時間も確保できていません。したがって大きな曲がりの変化よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げて行きそうなフォームです。しかし現時点でも、曲がりの大きなスライダーやブレーキの好いチェンジアップは使えており、そこまでこの点は気にしなくても好いのかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力は内に留められている。そのため軸のブレを防いでいうように見えるのだが、腕が外旋してブンと振るので、そのことで制球を乱しやすい要因を作っている。それでもボールは、適度に両サイドに散らすことはできていた。 気になるのは、足が地面から離れて投げているので、どうしても浮き上がろうする力を抑えられずボールは上吊りやすい。けして「球持ち」も良くないので、高めに集まりやすいのを修正できてはいない。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻を三塁側(左投手の場合は)に落とせない部分はあるものの、カーブの頻度が少ない上にフォーク系の球も投げていないようなので、現時点ではあまり気にしなくても良さそうだ。 またボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がやってリリースしているのも多少は気になるが、それほど極端ではないので、これもそこまで神経質にならなくも良さそう。ただし、力投派でもあるので、疲労は溜めやすいとみている。そのため、体のケアには充分注意してもらいたい。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがなく、イチ・ニ・サンで合わされやすい恐れはあるものの、ボールの出どころが隠せている。そのうえ球筋に角度があるので、思ったほどは合わされやすくはないように感じる。そのへんは、被安打率が80%を切っているところからも伺われる。 腕は強く振れているので、打者が思わず吊られそう。そう思いつつも、実際のところの奪三振率の低さは、何かフォームに原因がありそうだ。また踏み込んだ足元が早く地面を捉えてブロックしてしまい、前への体重移動を阻害してしまっている。この点を改善できれば、もっと迫力のあるボールを打者に投げ込めるのではないのだろうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」を除くと課題が多い。制球を司る動作や故障のリスクも高く、また武器になる変化球を習得できるのか?といった疑問も残り、技術的な観点で言えば、かなりリスキーな素材だと判断さざるえない。 (最後に) 実際の粗っぽい投球や技術的に課題が多いのは気になるものの、140キロ台中盤を連発できるサウスポーといった意味では、興味を示す球団があるかもしれません。育成会議あたりになるかもしれませんが、当日指名があるのか注視したい一人です。フォームや投球のイメージからすると、濱口遥大(DeNA)左腕に、近いタイプではないのでしょうか。 (2022年夏 山口大会) |