22kp-32





草野 陽斗(DeNA)投手の個別寸評へ







草野 陽斗(東日本国際大昌平3年)投手 175/82 右/右 
 




 「全然知らなかった」





 夏の福島大会準決勝の聖光学院戦まで、私はこの 草野 陽斗 のことを知らなかった。聖光学院目当てで見たこの試合で、対戦相手の投手が思いのほか良かった。その投手を、苦もなく攻略した聖光学院の強さを改めて実感させられることになる。


(投球内容)

 夏の大会のあと調べてみると、春季大会では17イニングを投げて22奪三振。すでに春の時点で、151キロを記録して県内では話題になっていたという。中背の体格ながら、ガッチリとしていて馬力のある投手です。

ストレート 常時145キロ前後~後半 ☆☆☆★ 3.5

 聖光学院が相手ということで、初回から全開で投げていたのだろう。球速も140キロ台後半を連発し、そのボールは実に力強い球筋は全体的に真ん中~高めに集まりやすいとはいえ勢いがあり、空振りを誘えるし球威もあって力強い。この夏は、20回2/3イニングを投げて7四死球と、細かい制球力はないが荒れ荒れといったタイプではけしてない。それでも聖光学院に、2回2/3で5安打を浴びたように、ボール自体が見やすく合われやすいのかもしれない。

変化球 スライダー ☆☆☆ 3.0

 ブレーキの効いたスライダーでカウントを整え、縦のスライダーも多く織り交ぜてきます。ただし、縦のスライダーは振ってもらえないことが多いので、低めに目付けを引き付けておいて、高めの真っ直ぐを活かすという役割になっているのかと。今後、この縦の変化でいかに空振りが奪えるようになれるのかが大事なのではないのでしょうか。また、真っ直ぐかスライダーかという投球なので、もう少し球速帯の違う変化球を覚えて投球の幅を広げて欲しいところです。ちなみにこの夏は、20回2/3イニングで26奪三振を記録しており、春同様に多くの三振が奪えていた。

その他

 クィックは、1.05秒ぐらいと素早く投げ込んでくる。牽制やフィールディングはよくわからなかったが、ランナーを出してもじっくりボールを持ったり、パッとマウンドを外したりできていた。ガンガン力だけで押そうというタイプではなく、意外に冷静な一面も垣間見られた。

(投球のまとめ)

 やみくもに力だけで押そうとするわけでもなく、水準を満たす変化球のキレや許容範囲で収まる制球力がある。まして、ピンチでも冷静に自分の投球を貫ける冷静さとタフな精神力を持っている。まだまだ未熟な部分はあるが、可能性を感じさせる素材であるのは間違いない。いかにすれば相手は打ち難いのか? そういったものも追求できるようになれば、一軍でも活躍できる投手になれるかもしれない。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を勢い良く高く引き上げてきます。軸足一本で立ったときにも、膝がピンと伸び切ることがないので力みは感じられません。全体のバランスとしては、平均的な立ち方です。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側にしっかり落とせるフォームで、体を捻り出すスペースを確保。そのため、カーブやフォークのような捻り出して投げるのにも適したフォームです。

 「着地」までの地面の捉えも程よく、適度に体を捻り出す時間を確保。曲がりの大きな、武器になる変化球の習得も期待できます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブを内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸がブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは。 また足の甲の地面の捉えもしっかりできており、浮き上がろうとする力を抑えることができています。これでも球筋が高いのは、まだリリース時の押し込みが充分ではないのか? 体を激しく使って(特に上下動が)、リリースが不安定なのかもしれません。けして、「球持ち」自体が悪いわけではないので。

 体がしっかりできてきたり、無駄な動きを減らすことで、将来的には制球力を伴った剛球投手になれる可能性を秘めています。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻が落とせるので窮屈ではなくなり、カーブやフォークなどを投げても肘への負担は少ないのでは? またそういった球種は、現時点ではほとんど見られません。またボールの送り出しを見ても、肩に負担がかかるような感じはありませんでした。少々力投派の部分があるので、そのへんは疲れを溜めやすい部分はあるように思えます。そこまで体を振らなくても、安定して強く速い球が投げられるようになるのが理想です。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れており、打者としては合わされやすいフォームというわけではなさそう。ボールの出どころも思ったほど早く見えてきているわけではないので、むしろ単調な配球など別に大きな要因があったのかもしれません。この夏全体を通してみると、20回2/3イニングで15安打と被安打率は72.6%と、けして多かったわけではありません。あくまでも打ち込まれたのは、甲子園ベスト4の聖光学院戦のみでした。

 また腕は強く振れているのですが、まだ体に絡んで来るような粘っこさは感じられません。その辺が出てくると、もっと打者の空振りを誘えるようになるかもしれません。ボールにはしっかり体重を乗せてからリリースできており、前にグッと乗せられて地面の蹴り上げも強いです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」は良いので、あとは平均的な「開き」と「球持ち」がさらに粘っこくなると実戦的になれそうです。高めに集まりやすい球筋も、フォームはしっかりしているので土台をしっかり作って無駄な動きを減らせれば安定してきそう。故障のリスクも無理に力を入れて投げなくても速い球を投げられるようになれば、より負担は減るのでは? 良い変化球を投げられる下地もあるので、技術的にはかなり総合力の高い良いフォームだと評価できます。


(最後に)

 馬力で押すだけの粗っぽい投手ではなく、変化球・制球力・マウンドさばきなど加味した好素材だと評価します。福島県内では、恐らく 尾形 崇斗(学法石川-ソフトバンク)以来の逸材といった感じです。ドラフトとなると、下位~育成 あたりになると思いますが、個人的にはフォーム技術も高く、まだまだ伸びると判断して高く評価してみたいところです。


蔵の評価:☆☆(中位指名級)


(2022年夏 福島大会)