22kp-31
田村 朋輝(酒田南3年)投手 184/84 右/右 | |
下級生の頃から名前は知っていたが、最後の夏までまともに確認することができなかった 田村 朋輝 。もっと荒れ荒れの素材型をイメージしていたのだが、意外に冷静で要所を抑えたピッチングをできる正統派だった。荒れ荒れというよりは、まだ成長途上といった感じの投手だろうか。 (投球内容) 均整のとれた体格から、ノーワインドアップから投げ込んで来る正統派です。 ストレート 140キロ~140キロ台後半 ☆☆☆★ 3.5 普段は140~中盤ぐらいで、ドラフト候補として際立って速いわけではありません。それでも、勝負どころで力を入れると140キロ台後半を出す馬力を秘めています。内角を厳しく突くコントロールがあり、ストライクを取るのに苦労するとかそういった荒々しさはかんじられません。ただし、全体的に球筋が高く、特に速い球を投げようと力むと、高めに抜けることが多いのが今後の課題でしょうか? それでも力を入れると、力でねじ伏せられる力強さも兼ね備えます。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 曲がりの大きなスライダーで、カウントはしっかり整えることができます。他にも時々緩いカーブやフォーク系球も結構使ってきます。まだフォーク系の球の精度が発展途上であり、狙って打者の空振りを誘うということはできていないように見えました。この球の精度向上が、今後大成する上で大きな鍵を握ることになりそうです。 その他 牽制は確認できなかったのですが、クィックは0.95~1.05秒ぐらいと素早く投げ込めます。フィールディングは平均的でしたが、落ち着いて処理できていました。ランナーを背負ってからも、ある程度ボールを長く持って走者に目配せをしながら投球できており、状況をみて投球ができる余裕はありそうです。 (投球のまとめ) 現状は、まだ自分の色がそれほどない選手なので、これからどういった投手に育って行くのかの方向性は見えては来ません。逆に言えば、進む環境によっていろいろな可能性を秘めているといえると思います。良く言えば悪い癖がない、悪く言えばまだ突き抜けた特徴はないとも言えます。大学生や社会人でそれだと困るのですが、高校生の場合、これに伸び代を多く残しているのであれば、こういった投手でも充分ありだと考えられます。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った時に、膝がピンと伸びて力みの感じられる立ち方で、トの字 になりがちなのは気になるところです。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、フォーム後半には一塁側に落ちて来るものの、お尻の落としには甘さを残します。したがって、カーブやフォークを投げることはできると思いますが、変化が鈍くなる恐れはあります。 それでも「着地」までの地面の捉えはそれなりに粘れており、体を捻り出す時間を確保。武器にするほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、変化球のキレが悪いということは無さそうです。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすそう。実際に、打者の外角中心に集めるものの、時々内角を厳しく突くこともできていた。 気になるのは、足の甲での地面の捉えが浅く短いということ。したがって浮き上がろうとする力を抑えられず、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」も平均的で、まだボールを押し込むほどには至っていない。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としには甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほど窮屈ではないし、こういった球を投げる頻度も多くはない。そういった意味では、肘に負担が大きくかかっているとは現状考え難い。 少しボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がるという無理な角度を作っているので、肩への負担は大きめではないかと。そのへんは、日頃からケアに注意を払ってもらいたいところ。現状は、ここぞの場面でしか全身を使って投げ込んで来ないので、そこまで疲労は溜め込みやすくは無さそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りも適度に作れている上に、ボールの出どころもある程度隠せています。そういった意味では、けして合わされやすいフォームではないようと考えられます。 振り下ろした腕が体に絡んでくるなど腕も振れているので、ボールに吊られやすくなり空振りを奪えるのではないかと。またボールにもある程度しっかり体重を乗せてからリリースはできており、地面の蹴り上げは素晴らしくなっています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たりません。体の柔軟性を養いつつ、筋力を付けて行ければ、さらに粘っこいフォームになって行けるのではないのでしょうか。肩への負担が見られるのと、ボールが上吊りやすい部分は気になるところであり、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙です。今後の取り組み次第で、そういった部分をいかに改善して行けるかに懸かっていそうです。極端に悪いところはないのですが、まだ突出したところがないのも、投球同様に技術的にも言えることなのかもしれません。 (最後に) 全てが発展途上の選手なのですが、欠点が許容範囲に留められており、長所を作り出す余地が多くの残されているのが、この選手の魅力ではないのでしょうか。導き方次第では、大いに伸びても不思議ではありません。ドラフトでも本会議中に、それも5位前後ぐらいの指名を意識できる素材だとみています。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2022年夏 山形大会) |