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門別 啓人(阪神)投手のルーキー回顧へ







門別 啓人(東海大札幌3年)投手 182/85 左/左 





「腕は振れていた」 





 生で春みたときは、体の割に大人しい感じの投球に見えた 門別 啓人 。しかし、この夏は、腕を普段から振れるようになり、その点はだいぶ良くなっていました。春は、無理に力を入れて投げると甘く入ることもあったのですが、そのへんは体ができてきたのか、速い球を投げても、ブレは少なくなってきていたのではないのでしょうか。


(投球内容)

 春に150キロを記録したという話で足を運んだのですが、130キロ台中盤~速い時で140キロ台前半ぐらい。むしろ淡々と両サイドに散らして来る実戦派の印象でした。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 夏は腕が安定して振れるようになっており、球速だけでなくボールの勢いもワンランク上がっていたように感じます。普段は両サイドに散らすピッチングは相変わらずですが、要所では力を入れて140キロ台中盤が出るようになっていました。全体的に球筋が高い部分があるのと、左打者に苦になく打たれるケースは目立ちます。逆に、右打者の内角クロスへの投球は、積極的に使えていました。

変化球 スライダー・カーブ・スプリット? ☆☆☆ 3.0

 基本的には、スライダーとのコンビネーションで打ち取るタイプです。スライダーも、カウントを整えるものと、ボールゾーンに切れ込む振らせるスライダーがあります。さらに緩いカーブや、スプリットだかチェンジアップだかよくわからないのですが、低めのゾーンに小さく沈む球もあります。変化球のキレ・精度は、それほど昨年から変わっていないようには感じました。三振の多くは、スライダーで奪っています。

その他

 クィックは、1.0秒前後と高速。牽制は軽く入れる感じで、走者を本気で刺そうといったものではないように思えます。フィールディングは、無難にさばけており下手ではありません。特に微妙な出し入れをするとか、間を意識してとか、そういった投球術は観られず。淡々と投げ込み、勝負どころでは少し力入れてという力の加減を変えて投げるといった感じでしょうか。

(投球のまとめ)

 5月の終わりの春季大会~6月の後半には夏の大会が始まる北海道。それだけに、そう大きな変化は望めないものの、それでも春見たときよりは良く見えました。150キロ出たとかそういったスケール型ではなく、淡々と両サイドに集めつつ、勝負どころで140キロ台中盤の真っ直ぐを投げ込むというスタイルです。やや 寺島 成輝(履正社-ヤクルト)と、似た感じの投手ではあるように思いました。


(投球フォーム)

 セットポジションから、高い位置まで足を引き上げてきます。軸足一本で立った時に膝がピンと伸びがちで、少し前傾姿勢に。こうなると、ツッコミやすいフォームになり「着地」までの粘りが作り難いのは気になります。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 それでも、お尻は三塁側にしっかり落ちているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げるのには無理は感じません。ただし、「着地」までの地面の捉えが平凡なので、体を捻り出す時間が確保できない。これにより、曲がりの大きな球を習得し難い可能性があります。すなわち、空振りを誘うというよりも球速のある小さな変化で投球の幅を広げてゆくことになるかもしれません。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいかと。足の甲での地面の捉えは見られるのですが、その時間が短いせいか? 浮き上がろうとする力を充分に抑えられていないように見えます。そのため、球筋も真ん中~高めに集まりやすいのではないのでしょうか。「球持ち」自体は、けして悪い選手ではないのですが。ストライクが取れず、苦しむタイプではないと考えられます。

<故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5

 お尻の落としはできているので、カーブやフォークなどを投げても負担は少なそう。腕の送り出しをみても、肩への負担も少なそうです。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。そういった意味では、>故障のリスクはかなり低いフォームだとみています。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りが平凡なので、打者からは苦になくタイミングがとられる危険性は感じられます。それでもボールの出どころはある程度隠せているように見えます。しかし、より見やすい左打者からは、結構痛打されるケースが多いこと。そのため左打者からは、それなりに見やすい可能性があります。

 夏になって腕の振りが良くなり、打者は吊られやすい傾向にあります。特に腕の振りを生かした、ボールゾーンに切れ込むスライダーを振ってもらえるケースが多いです。逆に、この球を見極められると苦しくなります。ボールへの体重の乗せ具合は平均的ですが、もう少し「着地」までの粘りが作れるようになると、リリース時に体重がグッと乗ってから投げられるようになるのではないのでしょうか。そうすれば、打者の手元まで来るような自己主張できるボールが投げ込めそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りがまだ充分ではないのが課題かと。ここが良くなると、全体が更に良くなってゆくのではと。故障のリスクが低いので、どんどん次の段階に行けそうなのは大きい。制球を司る動作も、高めに集まりやすいのは課題だが、ストライクを取るのに苦労するタイプでは無さそう。あとは、スライダーのキレは好いものの、プロで武器にできる球種を習得できるかがポイントになるのではないのだろうか。


(最後に)

 何か これは!という訴えかけてくるものに欠けるのは気になるものの、全くダメということも無さそうな選手ではある。まだ自分の投球の色というものが出せていないので、これからそういったものを出せるようになるかが鍵になりそうだ。もしプロ志望届を提出した場合には、4位前後の指名になるのではないかとみている。果たして彼は、どういった進路を選択をするのだろうか?


蔵の評価:☆☆(中位指名級)


(2022年夏 南北海道大会) 










門別 啓人(東海大札幌2年)投手 182/85 左/左 





 「木村も一年前はこんなものだったのでは?」





 ソフトバンクに3位指名された 木村 大成(北海)左腕も、秋季大会の時点では、今の 門別 啓人 と、さほど変わらない感じだったのではないかと記憶する。順調に夏まで伸びてゆければ、高校からのプロ入りも意識できる素材ではないのだろうか。


(投球内容)

 試合を見たのが、秋季大会準決勝の クラーク国際戦。準々決勝で9回完投していたあとなので、ボールの勢い・キレは落ちていたのかもしれません。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ ☆☆★ 2.5

 ボールは、130キロ台後半~速い球で140キロ台を記録している感じでした。特別ボールが手元でキレるといった感じはしないのですが、両サイドに大まかに散らせてきます。それでも2年秋の時点では、合格ラインの球速・ボールの勢いだとは思います。ただし、まだ力で相手を圧倒できるような凄みはないので、押しきれず球数が多くなってしまっている感じはしました。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど ☆☆☆ 3.0

 ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むスライダーを振らせるのが持ち味だと思うのですが、クラーク国際戦ではこの球を見極められて振ってもらえなかったのが苦しくなった要因かと。他にも緩いカーブがあったり、低めで沈むスプリットなどもあり、これらがもう少し磨かれると投球も楽になるのかなといった印象でした。特にスライダーのキレに絶対的な自信を持っていた 木村 との違いは、このスライダーの精度の差ではないかと感じます。

その他

 牽制に関してはよくわからなかったのですが、フィールディングは落ち着いて処理していました。クィックも、それなりにこなせていたように見えましたが、このへんは次回見る時にしっかりタイムを計測したいところ。

(投球のまとめ)

 適度な真っ直ぐと変化球もあり、制球、投球術含めて大きな欠点はありません。まだ凄みは感じられませんが、この辺は一冬越えた春に、どのぐらい変わってくるかではないのでしょうか。こと真っすぐの勢いは、前年の 木村大成 と秋の時点では大差は無さそうなので、今後の成長次第といった感じがします。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、この選手の可能性について考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれほどでもありません。軸足一本で立ったときにも、膝がピンと伸びてしまい直立気味に立ってしまっているのは少し気になります。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは、まだ甘さは残すもののカーブやフォークが投げられないといったほどではなく適度に落とせています。「着地」までの地面の捉えも適度に足を前に逃せており、体をひねり出す時間もそれなりに確保。武器になるほどの大きな変化を望めるかは微妙ですが、変化球全体のキレは生み出しやすいのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにはあるので、外に逃げようとする遠心力はある程度抑え込めています。そのため軸はそれほどブレず、両サイドの投げ訳はつけやすいのでは。

 ただし、足の甲での地面への押しつけが遅く、浮き上がろうとする力が充分に抑え込めていません。そのためボールも、結構高めに甘く入ることが少なくないように見えます。「球持ち」自体も並なので、まだボールを押し込めるほどではないのも低めに集まり難い要因かと。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォーク系を投げても窮屈にはそれほどならないのでは。またフォークではなく、負担の少ないスプリットのようなので、お尻の落としに関してはあまり気にしなくても良さそうです。

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担も少なそう。また力投派というよりも、まだ体を使い切れていないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。出力が上がって負担が増した時に、どういった投球ができるかだと考えます。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、ボールの出どころもそこそこ隠せているといった感じ。それでも打者が苦になるフォームでは無さそうですが、投げミスをしなければ痛手も多くは喰らわないのでは?

 気になるのは、腕が体に投げ終わったあと絡んで来なくボールを置きに行っているように見えます。そして、まだ充分に体重を乗せてからリリースできていないので、打者の手元までの生きた球が行っていないなと感じます。投げ終わったとも、地面を力強く蹴り上げるような躍動感がありません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」や「体重移動」を中心に、もう少しフォーム全体に粘りと躍動感が欲しい気がします。故障のリスクが少なそうなのは明るい材料ですが、高めに集まりやすい球筋の改善や武器になるほどの変化球を習得して行けるのかは今後の課題ではないかと。そのため、まだまだ実戦派といったほどのフォーム技術は身に付けていません。


(今後は)

 順調な成長曲線を夏までに描ければ、高校からのプロ入りの可能性はあるだろうといったドラフト候補の一人。まだまだ指名圏内とは言えないので、その辺が春までにどの程度変わってくるかではないのでしょうか。ボールの勢いは、木村 大成 の同時期とさほど差はありませんが、スライダーの精度・投球術等などは木村の方がワンランク同時期でも上を行っていたのではないかと感じます。果たして今度見る時には、どのような投手に育っているのか今は待ちたいところです。


(2021年秋 北海道大会)