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川原 嗣貴(21歳・HONDA鈴鹿)投手 188/89 右/左 (大阪桐蔭出身) 





 「まだ結果は残せていない」





 大阪桐蔭時代から大器として注目されてきた 川原 嗣貴 。しかし、社会人での公式戦の登板成績を見ると、多くの試合で失点が目立つ。そういった意味では、現時点で社会人野球の中でも際立った存在にはなれていないのが実情ではないだろうか


投球内容

 180センチ台後半の体格は目を引くものがあり、どこか 菅野 智之(元巨人)を彷彿とさせるような投手だ。今回のレポートでは、2025年度の東京スポニチ大会で先発した試合を中心に、現状の川原投手を考察してみたい。

ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ 
☆☆☆ 3.0

 立ち上がりは130キロ台のボールが多く、明らかにボールの走りや勢いに物足りなさがあった。非常に寒い日だったことも影響しているかもしれないが、時折
指にかかった時には「おっ」と思わせる球も見られた。それでも、甘くない球でも簡単に打ち返されていたのは正直気になった。ボールは両サイドに散っており、四死球で自滅するような不安定さはないものの、ゾーン内で甘く入る傾向や、合わされないやすいフォームに課題があるのかもしれない。いずれにしても、空振りを誘うというよりは、球威で詰まらせるタイプと考えられる。

変化球 スライダー・カット・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 
曲がりの大きなスライダーのキレは悪くない。また、カットを織り交ぜたり、チェンジアップやフォークといった縦の変化球も使ってくる。しかし、現状では狙って空振りを奪えるほどの絶対的な球種はない。そのため、ストレートとのコンビネーションで相手の目先を狂わせるようなピッチングスタイルと言える。

その他

 クイックは1.0~1.1秒程度とまずまず。牽制は平均的で、投げるタイミングを大きく変えるといった投球術はあまり見られなかった。特に投げ急ぐ様子はなく、ランナーを背負っても慌てる感じはなかった。ただし、ボールを長く持つような嫌らしさもなく、淡々と投げ込むイメージだ。

投球のまとめ

 特に何が悪いというよりも、全体的に冴えない印象の投球だった。もちろん、この日の内容だけで評価を下すつもりはないし、参考になるような試合ではなかったと思う。しかし、公式戦の成績を見ると、昨年は登板するたびにかなり打たれていた印象がある。それだけに今シーズン、チームでどのような役割を担い、そのような中でどのような成績を残していくのかが、ドラフト指名の有無を左右しそうだ。





投球フォーム

 セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びがちで、やや力みが感じられる。それでも全体のバランスとしては、そこまで直立せずに立できていた。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすため、お尻を一塁側に落とす動作が甘くなる。したがって、体を捻り出すスペースが十分に確保できず、カーブやフォークといった変化球のキレが鈍くなりやすい。

 「着地」までの粘りも淡白で、体を捻り出す時間が十分とは言えない。そのため、曲がりの大きな変化球を習得するのは難しいかもしれない。それでもスライダーの曲がりは良いので、あとは縦の変化をどれだけ磨けるかがポイントではないだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがって軸がブレにくく、両サイドへのコントロールはつけやすい。一方で、足の甲で地面を捉えが浅く、浮き上がろうとする力を十分に抑えきれていない。そのため力を込めて投げると、ボールが上吊りやすい傾向があるのかもしれない。「球持ち」は平均的だが、細かい制球力を売りにするタイプではなさそうだった。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さが残る一方で、縦の変化球を多用している。そういった意味では、窮屈なフォームになり肘への負担が少なくない可能性がある。また、腕の送り出しを見ると、ボール側の肩がやや上がり、グラブ側の肩が下がっている。そのため、肩への負担もそれなりにあるだろう。それでも力投派というほどではなく、疲労が極端に溜まりやすい印象はなかった。むしろ
大型の体格をまだ十分に活かしきれていないイメージの方が強い。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが淡白で、打者にとって苦にならないフォームだろう。ボールの出どころはある程度隠せているものの、甘くない球でも簡単に打ち返されていた。

 腕はある程度振れているが、ボールにしっかり体重を乗せてリリースできているわけではない。まだ
後ろに体重が残りがちで、前にグッと乗っていく感覚が薄い。この点が改善されれば、ボールの質も変わってくるのではないか。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」のうち、特に
「着地」と「体重移動」の改善が課題だ。制球を司る動作は平均的だが、故障リスクはやや高めかもしれない。今後、明確な武器となる球を身につけられるかどうかが一つの鍵になりそうだ。

最後に

 フォームは、高校時代とほとんど変わっていない。エネルギー効率の良いフォームではないため、体つきが大きくなっても、ボールの勢いや球速に大きな変化は見られない。実戦的なタイプとは言い難く、現状では中途半端な印象を受ける。高校からプロ入りを目指すには、社会人相手でも力で圧倒できるほどの迫力を身につけるか、総合力を高めて実戦的な投手になるかのどちらかが必要だろう。1年間追跡して、今年プロ入りできるのか見極めて行きたい。


蔵の評価:
追跡級!


(2024年 東京スポニチ大会)








川原 嗣貴(大阪桐蔭3年)投手 188/89 右/左 
 




 「選抜一番のロマン」





 今年の選抜に出場した選手の中で、夏までの成長次第では上位指名も意識できるかもしれないと思わせてくれた 川原 嗣貴 。 まだまだ成長途上の投手ではあるが、その将来性は極めて高そうだった。


(投球内容)

 190センチ近い体格から、ゆったりと投げ下ろして来る姿は、どことなく高校の先輩である 藤浪 晋太郎(阪神)を彷彿とさせます。選抜では、3試合 18回 13安 3四死 19三 防御率 1.50 という内容でした。

ストレート 130キロ台後半~144キロ ☆☆☆ 3.0

 球速はまだ140キロ前後ぐらいなのですが、ボールの勢いや今後の可能性という意味では、高校からプロ入りを意識できる球を投げ込んでいました。やや高めに抜ける球はあったものの、両サイドに投げ分けるコントロールはあります。発展途上の素材ではありますが、それでも大きく制球を乱すことは少なくなく、安心して見ていられる安定感もありました。

変化球 カットボール・カーブ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 真っすぐは高めに抜けるなど多少暴れるところはあるのですが、しっかりカットボールでカウントをいつでも整えられるのは好いところ。ストンと大きく沈むわけではないのですが、角度を生かしたスプリットは打者としては厄介な縦の変化。またカーブを入れることで、緩急も使うことができていました。まだ絶対的な球種はないのですが、カウントを整える、低めを意識させるということは変化球で出来ていました。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒 ぐらいとまずまずで、走者がいるとボールをじっくり持って投げることもできます。大型でどうなのかな?という風に見ていたのですが、意外に冷静で考えてピッチングができる素養も持ち合わせているようです。

(投球のまとめ)

 あくまでもまだ成長段階の選手といったことで、真っ直ぐも変化球にも絶対的なものはありません。しかし、制球や投球術含めて大型でも許容範囲の中でまとめることができ、素直に肉付けができたときには大化けしても不思議ではありません。そのため、夏までの成長が望めるようならば、高校の時点で上位指名になる可能性は充分に秘められています。


(投球フォーム)

 ワインドアップから、足をゆったりと引き上げてきます。軸足の膝にはあまり余裕が感じられないものの、適度にバランスの取れた立ち方になっています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほど窮屈では無さそうです。「着地」までの地面の捉えも、少し前に逃がす意識も持てていてそれなりといった感じです。大きな曲がりは望めないかもしれませんが、それなりに切れのある変化球は期待できるかもしれません。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内にとどめています。そのため軸は、あまりブレないで投球でき、両サイドのコントロールは安定しやすいのでは。

 足の甲の地面の捉えがまだ浅いので、どうしても力を入れて投げると高めに上吊りやすい傾向にあります。それを「球持ち」の良さで、なんとか制御しているという感じでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としの甘さはあるものの、それほど極端ではありません。カーブやスプリットなどの頻度は多いのですが、日頃から体へのケアなどに気をつければ、そこまでナーバスになることはないのかもしれません。

 腕の送り出しを見る限りは、肩への負担も少なそう。現状はまだ力投派というよりも、大きな体を使い切れていないという部分の方が目立ちます。そのため、疲労もそこまで溜め込むことは無さそうです。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。そういった意味では、特別打者にとっては合わせ難いフォームでは無さそう。それでも角度を生かした球筋や投球のおかげで、その点を補っているように思えます。

 腕の振りはまだ強いとか鋭いというほどではなく、まだまだこれからかと。ボールのへの体重の乗せも微妙な感じで、今後股関節の柔軟性を養いつつ可動域を広げ、それを支える下半身筋力が強化されれば、もっと良くなってゆくと考えられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外は、どれも発展途上。特に大きな欠点はないので、今後の意識と努力次第ではもっと良くなることが期待できます。

 足の甲の地面の捉えから少しボールが上吊りやすいことなどはありますが、制球力は悪くありません。故障のリスクもそこまで高く無さそうですし、今後はいかに武器になるものを身につけて行けるかではないのでしょうか。


(最後に)

 全てにまだ発展途上といった感じですが、今後凄く良くなりそうな予感はします。大柄でも細かいことを意識できるマインドと肉体的器用さもあります。現時点では多大な評価はできませんが、将来凄い投手になるかもしれませんね。


蔵の評価:☆☆(中位指名級)


(2022年 選抜大会)