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斉藤 優汰(広島)投手のルーキー回顧へ







斉藤 優汰(苫小牧中央3年)投手 189/88 右/左 
 




 「1位は荷が重い?」





 木村大成(北海-ソフトバンク)と投げあって破れた昨年の試合から、来年は楽しみな選手ではないかと言ってきた 斉藤 優汰 。今年になって評価が急騰してしまったのは嬉しいのだが、さすがに好素材とはいえ1位指名とかなってしまうのは、正直荷が重いように思える。


(投球内容)

 この夏は、チームを準決勝まで導きました。ワインドアップから振りかぶって投げる本格派なのですが、少しもっさりした印象を受けます。

ストレート 140~140キロ台後半 ☆☆☆★ 3.5

 適度な勢いと球威に角度を感じさせる球を投げ込んできますが、その球を大まかに両サイドに散らすことはできています。繊細なコントロールはないものの、四死球で自滅するとか、そういった危うさはありません。また、時々指にかかったときには、素晴らしい球が決まることがあります。そういった球を安定して出せるようになると、かなり将来は明るいと見えます。逆に現時点では、まだ強豪校相手、真っ直ぐで押し切るほどの絶対的な力はないように感じました。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーでいつでもカウントが整えられるので、四死球も少ないように感じます。立ち上がりなどは、緩いカーブを使ってくるパターンが夏は目立ちました。またフォーク系の球に絶対的なものはまだないのですが、追い込むと腕を思いっきり振ってボールゾーンにスライダーが切れ込む(それもかなり縦変化で)ので、この球を見極められないで振ってしまう打者が目立ちました。相当に打者には、大きく鋭く曲がっていたように感じられたのではないのでしょうか。このスライダーのキレは、ちょっと松坂大輔や奥川恭伸(ヤクルト)を彷彿とさせるものがあります。ただし、カウントを取りにゆくスライダーが甘く入って痛打される場面も多いです。

その他

 牽制は、非常に鋭く走者を刺せます。クィックは以前は1.0秒前後の高速だったのですが、今年は1.15~1.20秒ぐらいとスピード落とし、制球が乱れるのを防いでいたように感じられました。昨年までは、ただ速い球を投げ込むだけといった感じだったのですが、今年は落ち着いて冷静に打者に対峙できるまでに成長してきました。

(投球のまとめ)

 まだまだ成長途上といった感じは否めませんが、ピンチでも冷静に打者と対峙できるようになるなど、落ち着いて投球できるようになってきたところは成長の跡がみられます。また、素材型でありながら、制球に大きな破綻がない、変化球のキレも悪くないという意味では、将来プロでも先発ができるようになるかもという期待は膨らみます。一個一個段階を踏んで行ければ、楽しみな投手であるのは間違いないのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 ワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはそれなりに。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸び切ることなくバランス良く立てています。昨年よりもバランス良く立てるようになっており、足を引き上げる高さも以前より上がってきました。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 少し前に倒れ込むような感じで沈んでゆくのですが、最終的には適度に一塁側にはお尻が落ちています。そのため、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種が投げられないことはありません。昨年よりも体を捻り出すスペースが確保できるようになってきたことで、こういった球種の曲がりも良くなってきたように感じます。

 「着地」までの地面の捉えも、適度に粘れています。そのため体を捻り出す時間もある程度確保できるようになり、変化球の曲がり・キレも増してきたのではないかと。昨年は、前に倒れ込むような感じで地面を捉えるのが早かったのですが、だいぶそれが改善されていました。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにはあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難くなり、両サイドのコントロールは悪くありません。

 足の甲の地面の捉えが浮きがちだったのが、地面をしっかり捉えられるまでになってきました。したがって浮き上がろうとする力も抑えられるようになり、ボールがあまり上吊らなくなってきています。「球持ち」自体はまだ平均的ぐらいですが、だいぶ低めにゆく球も増えてきました。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としにまだ甘さは残すものの、今ぐらいのカーブやフォークの頻度であれば悲観するほどではないでしょう。腕の送り出しにも適度に角度がついていますが、肩に負担がかかるほどではないように思えます。けして力投派ではないので、疲労もそれほど溜め込むような感じは致しません。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの地面の捉えも適度に粘れており、ボールの出どころもある程度隠せています。そういった意味では、特に合わされやすいということは無さそうです。

 腕は投げ終わったあと体に絡んできており、ボールになる変化球も手を出してくれます。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできているので、投げ終わったあとの地面の蹴り上げも悪くありません。この辺も腕が振れなかった昨夏に比べると大きく改善されており、何より下半身を上手く使えるようになってきたことは大きいです。この一年で、フィニッシュの形は格段に良くなってきました。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全体的に改善されており大きな欠点は見当たりません。特にフォーム全体を、相当細部に渡って改良してきたことに驚かされます。制球を司る動作も悪くありませんし、故障のリスクもそこま悲観するほどではない。将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、現時点ですでにスライダーの曲がり幅はかなりのものがあるように感じました。一年で、ここまで根本的にフォームを良化させて来られる選手は、なかなかいないのではないのでしょうか。


(最後に)

 実際の投球においても、技術的な部分においても、細部までこだわって欠点の改善に取り組んできたことが伺えます。まだまだ成長途上の選手ではあるのですが、ここまでやってきたのかということには驚かされました。現在のパフォーマンスは、ハズレ1位~2位の間には指名されるかなといった感じで、プロ入り後この取り組みを観ていると、こちらの想像以上の進化を遂げてゆくかもしれません。いろいろな意味で1位は荷が重いのかなと思っていたのですが、自分というものをしっかり持っているようなので、それも杞憂なのかもしれませんね。


蔵の評価:☆☆☆(上位指名級)


(2022年夏 南北海道大会)










斉藤 優汰(苫小牧中央2年)投手 188/84 右/左 
 




「こっちの斉藤も楽しみ」 





 昨夏の南北海道大会において、北海の 木村 大成 と共に、苫小牧中央の先発としてマウンドにあがっていたのが、この 斉藤 優汰 。初回から北海の猛攻で失点は重ねていたが、将来性を秘めた楽しみな素材だと私の脳裏に刻まれた。22年度のドラフト候補としては、斎藤 響介(盛岡中央)の方が名が知られているが、体格・スケールといった意味では、こちらの 斉藤も勝るとも劣らない素材ではないのだろうか。


(投球内容)

 夏の北海戦では、2回途中で降板した。しかし、秋の大会では、最速148キロしたということで、順調にスケールを増してきているようだ。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤ぐらい ☆☆☆ 3.0

 すでに昨夏の時点で、真っすぐの勢いならばドラフト候補に入れてもおかしくない勢いがありました。あとで試合の模様をじっくりと見ようと思っていたのだが、アーカイブで残されておらず三塁側からの映像でのみ今回は確認することに。それを観る限り、あまり細かいコントロールはなくアバウトな部分はあるものの、けしてストライクが入らず荒れ荒れといったほどではないように見える。また、ボールの勢いには確かなものがあることを、改めて実感した。

変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆★ 2.5

 角度がついているところからの映像なので、ハッキリ何を投げているかわかりません。ただし映像を見る限り、スライダーでカウントを整えつつ、左打者にチェンジアップを使っているように見えます。カウントをはる程度変化球で整えられますが、打者を仕留めるほどの球があるのかには疑問が残ります。

その他

 牽制は、かなり上手い部類かと。クィックは、1.0秒前後と高速です。制球が乱れるようならば、幾分勢いを落としてでも制球を重視した方がいいかもしれません。特に細かい駆け引きとか、投球術がある感じではありませんでしたが。

(投球のまとめ)

 夏の大会を見ている時も、細かいメモをとって見ていたわけではありません(相手の木村の方をチェックしておりました)。しかし、当日のTwitterのつぶやきは、「苫小牧中央の2年生投手、素晴らしい球投げるなぁ」とつぶやいており、下級生の真っ直ぐをここまで褒めることは、私自身まれです。当時の記憶を呼び起こしてみても、なかなか魅力的なボールを投げていた記憶があります。

 夏の北海戦で早々K.Oされたり、秋の大会でも勝ち上がって来られなかったように、まだまだ素材型の粋は脱していないのかもしれません。しかし順調に一冬超えれば、充分にドラフト候補として道内でも話題の存在になりうる選手ではないかとみています。





(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、この投手の将来像や特徴について考えて行きます。ノーワインドアップから、それほど足を高い位置まで引き上げるわけではありません。軸足一本で立った時に、特に力みは感じられないものの、少し前傾姿勢で立っているのはあとの動作を考えるとツッコミやすく気になります。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしがちですが、お尻はある程度一塁側には沈んでいます。そのため、カーブやフォークといった球種を投げることは可能ではないかと。

 むしろ「着地」までの地面の捉えが平凡で、体をひねり出す時間が並なのは気になります。こうなると変化の大きな球種の習得が難しく、武器になるほどの球が身につけられるか気になるところです。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは内にしっかり抱えられているわけではないが、体の近くには比較的最後まであります。そのため軸は大きくブレず、ある程度両サイドには散らすことができるのではないのでしょうか。

 足の甲での地面への捉えが浮いてしまっているので、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。そのため力を入れて投げると、>ボールが上吊りやすいのではないかと。「球持ち」自体は、比較的前で放せているようには見えるのですが。現状制球力は、アバウトなのではないかと考えられます。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としはそれなりに落とせており、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種でも負担は少ないのでは? また、そういった球種もあまり見られないので、肘への負担は少ないのではないかと考えます。

 ボールを持った肩は上がり、グラブを抱えた方の肩は若干下がり気味ではあるのですが、これもそれほどでもないのでナーバスになるほどではないのではと。また力投派ということもないので、疲労も溜めやすい感じは致しません。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平凡で、ボールのでどころも平均的。そういった意味では、打者としてはあまり苦になるフォームでは無さそうです。

 振り下ろした腕が体に絡んで来ないのとか、足の甲が地面から浮いてしまい、下半身のエネルギー伝達が遮断されてしまっているのも気になります。こうなると上半身の腕や上体を鋭く振ることで、キレを生み出してゆくしか無くなるからです。そのため、打者の手元まで球威のある球が、投げられない恐れがあります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外にまだ物足りなさを残します。足の甲が浮いてしまってボールが高めに集まりやすかったりしますし、故障のリスクはさほど高くは無さそうなものの、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかも微妙です。現状、真っすぐを投げる資質には優れていても、実戦的な投手に慣れるのかには不安が残ることは否めません。


(最後に)

 全国的に見ても指折りの素材だとは思うのですが、高校の間である程度形に慣れるのかには不安が残ります。そのため、一冬越えた時点で何処まで総合力を高められているかは微妙でしょう。それでも、春には道内の話題を独占するような資質を持っていますから、そのときが来るのを待ちたいところです。順調に来ているようならば、ぜひ春季大会に確認しに行きたいと1人です。


(2021年夏 南北海道大会)