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森山 暁生(中日)投手のルーキー回顧へ







森山 暁生(阿南光3年年)投手 183/84 左/左 





 「もっと速く見えた」





 球速表示では135キロ前後だったが、実際にはもっと速く見えた 森山 暁生 。 球場によってガン表示も厳しいところも少なくないだけに、素直にどう見えたかを重視したい。


(投球内容)

 この夏の 森山 暁生 は、2回戦の鳴門渦潮戦に登板。しかし、この試合で敗戦となり、短い夏を終えてしまった。ちなみにこの試合の内容は、 9回 6安 1四死 3三 1失 と、けして打ち込まれて敗れたわけではなかったのである。

ストレート 常時135キロ前後~MAX141キロ ☆☆☆ 3.0

 下級生の時はスケール型のイメージが強かったが、今は淡々と両サイドに散らせて来る実戦派のイメージが強くなった。球速表示は135キロ前後だったが、実際は2~3キロは常時速く見え、130キロ台後半~最速で143キロぐらいは出ていたのではないかと印象だった。実際に6月に行われた天理との招待試合では、最終回に145キロを記録していたというから、そのぐらいの球速が出ていても不思議ではないのだろう。

 オーソドックスなフォームながら、比較的ゆったりと入ってくるフォームのせいか? 打者は振り遅れるケースが多い。むしろ、ボールが高めに集まったり抜け気味にゆくなど、高低の制球の方に若干の不安が感じられた。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーのキレ・精度は平凡だったが、90キロ台の大きなカーブや、右打者に沈むチェンジアップの精度・曲がりは良かった。そういった変化球の精度・キレは、けして悪い投手ではない。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均的。ランナーを背負うと、パッとマウンドを外すということは観られたものの、牽制はやフィールディングはよくわからなかった。ただし、その際にボークをとられていたりもしていた。

(投球のまとめ)

 球速が出ていなかったことは、ボールの勢いや球場ガンとの兼ね合いもあるので、あまり気にしなくても良いのではないかと。確かに、昨年から大きくストレートに磨きをかけてきたかと言われると疑問だが、そのぶん制球重視で実戦的にはなっていたように思える。また、変化球一つ一つも悪くなかったので、けして打ち込まれて敗れたわけでもなく、悲観的な見方をする必要はない。ただし、基本的に三振をバシバシ奪うというよりも、両サイドに散らせて打たせてとるピッチングスタイルだった。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。割合静かに、セットポジションから高めに足を引き上げてきます。ただし、軸足一本で立った時に、膝がピンと伸び切ってしまっていて 卜の字 になりがちで、バランス良く立とうとして余計なところに力が入ったり、突っ込みやすいフォームを誘発します。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足をピンとあまり伸びせておらず、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としは甘さが残ります。そういった意味では、カーブやフォークは投げられないことはないと思いますが、体を捻り出すスペースが確保できず、窮屈になりがち。

 「着地」までの地面の捉えもあっさりしていて、体を捻り出す時間が充分ではありません。ただし、この点に関しては、想像以上に変化球一つ一つは変化していたので、その点ではあまり悲観しなくても良いのかもしれません。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げわけは安定しやすい。しかしながら、足の甲での地面への捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい欠点があります。「球持ち」も平均的で、イメージほど細かい制球力はないのかもしれません。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としが甘い割に、結構大きなカーブを使ってくるので、肘への負担はそれなりにあるように感じます。腕の送り出しも、多少ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がりがち。そういった意味では、肩への負担も少なくないように思えます。しかしながら、それほど力投派ではないので、疲労は溜め難いのが救いでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えが淡泊なので、打者としてはタイミングが合わせやすい可能性があります。それでもボールの出どころは隠せてはいます。そのため、見えないところからピュッと来るので、打者は差し込まれすいのだと考えられます。

 腕の振りも強く振るというよりは、投げ終わったあと体に絡んでくるといったほどではありません。ボールにもまだ、充分に体重が乗せきれているといったほどではないので、この辺もまだ発展途上といった印象です。もう少し体重を乗せてから投げると、打者の手元まで、もっとグッと来るような球威が生まれるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「体重移動」の粘りが物足りなく感じます。高めに浮きやすいせいか? あえて少し力セーブせざるえない投球のなのかもしれません。また故障のリスクそれなりにありますが、武器になる変化球に関しては現時点でそれなりに変化しているので、その点はあまり気にする必要はないのかもしれません。投球は昨夏よりも実戦的になっていますが、フォーム的には昨年みた時とほとんど変わっていないまま一年を過ごしたのではないのでしょうか。実戦的な投球の割に、フォーム技術はけして高いとはいえません


(最後に)

 肉体的には成長していたのでしょうが、力でねじ伏せにゆこうとするとボールが上吊りセーブせざるえなかったというのが本当のところではないのでしょうか。そのため、昨年よりも制球重視の印象は受けましたが、出力を上げて投げたくても投げられないジレンマがあったように思います。同じような傾向があったのは、寺島 成輝(元ヤクルト)がいます。果たして森山投手は、このフォームとどう向き合い、自分の持ち味を発揮してゆくのか気になります。

 昨夏見た時は、この投手が世代NO.1の左腕になってゆくのかなと思っていただけに、この一年での成長は思ったほどではなかったと言わざるえません。そういった消化不良の部分を、上手くプロで払拭して行ければ良いのですが ・・・ 。それでも、中位指名ぐらいの内容は、充分あったと評価したいと考えます。


蔵の印象:☆☆ (中位指名級)


(2022年夏 徳島大会) 










 森山 暁生(阿南光2年)投手 182/82 左/左





「左腕で一番大物感が」 





 2022年度の高校生左腕の中では、私が知る限り最も大物感を感じるのは 森山 暁生 ではないかと思っている。順調に伸びて来るかは微妙だとみているが、上手くスケールアップできたら上位指名を意識できる存在になりうるのではないのだろうか。


(投球内容)

 夏の甲子園では、沖縄尚学戦で8回まで投げて7失点といった内容だった。また秋季大会では、四国大会の準々決勝まで駒を進め明徳義塾相手に敗れ、選抜出場を逃しました。

ストレート 常時135~140キロ台前半 ☆☆☆ 3.0

 球速は常時140キロ前後ぐらいと、驚くほどのものはない。しかし、ズシッと球威のある球質で力があり、右打者の胸元を積極的に突いて来る。甲子園でも8イニングで6四死球と、あまりコントロールが良いとは言えないのだが ・・・ 。これが一冬越えて、力で押し切れるだけのものが出てくると大胆さも変わってきそう。

変化球 カーブ・スライダー・ツーシームなど ☆☆★ 2.5

 スライダーにそれほど特徴がないのもあり、結構カーブを投球に交え緩急を使ってくる。右打者にはツーシーム的な球もあるようだが、まだあまり有効な球とは言えない。そのため、中に中にという球筋や球種が多いのが、的を絞られやすくする要因になっているのかもしれない。

その他

 クィックは1.1秒前後で、牽制やフィールディングはよくわからず。特に微妙な出し入れや間を意識してという投球ではないが、右打者の内角を厳しく突くという投球はできていた。

(投球のまとめ)

 まだ真っすぐの威力・変化球のキレ・精度、制球力など、発展途上といった感じで強豪校相手だと厳しい感じ。それでも持っている素材的には魅力があり、最終学年にアバウトな部分が残っても、力で押しきるようなものが出てくると、高校からのプロ入りも現実味を帯びてくるのではないのだろうか。





(投球フォーム)

 今後の可能性という意味では、フォーム的どうなのか? 検証してみたいと思います。セットポジションから足を引き上げる勢いは静かで、その高さもさほどではない。軸足一本で立った時に、それほど力みは感じれず、全体のバランスとしては並ぐらいだろうか。フォーム導入部としては、先発タイプの色彩が強く、可も不可もなしといった入りだろうか。

<広がる可能性> ☆☆ 2.0

 引き上げた足をピンと伸ばす動作がないので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって体を捻り出すスペースは充分ではないので、カーブやフォークを投げるのには無理がある。

 また「着地」までの地面の捉えが平凡で、体を捻り出す時間が確保できていない。こうなると曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げることになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めている。したがって軸はブレ難く、両サイドの投げ分けはしやすいのではないのだろうか。 足の甲の地面の捉えが浮きがちで、浮き上がろうとする力を抑え込めていない。そのため力を入れて投げると、ボールは上吊りやすい。また「球持ち」は並ぐらいで、それほど指先で微妙なコントロールがつけられるタイプではないのだろう。

<故障のリスク> ☆☆ 2.0

 お尻が落とせないフォームの割には、カーブを結構使ってくる。したがって窮屈になりやすく、肘への負担という意味ではどうだろうか? またボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がりがちで、肩への負担も少なくは無さそう。腕も結構強く振ってくるなど、フォーム後半には力投派になっているので、疲労もそれなりに溜めやすいのではないのだろうか?

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがないので、打者としては イチ・ニ・サン で合わされやすい部分がある。それでも球の出どころは隠せているので、見えないところから来る感じはあると思うのだが ・・・ 。

 腕は強く振れており、打者としては吊られやすいのでは? ボールにはしっかり体重を乗せてからというほど、リリースは我慢できていない感じだが、ボール自体はかなり強く球威は感じられる。投げ終わったあと三塁側に体が流れてしまっているように、ステップが狭く前にしっかり力が伝えられていない。下半身の柔軟性を養いつつ筋力を強化できれば、この辺の問題も改善できるのではないのだろうか。

(投球フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「体重移動」などのエネルギー伝達の部分に課題を残している。故障のリスクが高く、制球を司る動作もやや心配。将来的に、いかにして投球の幅を広げて行けるかなど、課題が多いのも気になる材料だ。素材としては魅力はあるも、技術的な要因で伸び悩む可能性は否定できない。


(最後に)

 骨太の体格から強いボールを投げ込む左腕という意味では、非常にスケールのある楽しみな素材であるのは間違いない。ただし、技術的には課題も多く、伸び悩む危険性が高い素材ではないのだろうか。その辺を、本人や周りの努力や導きで補って行けるのか? 最終学年は見守って行きたい。それが上手くできたときには、上位指名でのプロ入りも期待できるほどの素材だとみる。


(2021年夏 甲子園)