22dy-29





林 琢真(DeNA)内野手のルーキー回顧へ







 林 琢真(駒澤大4年)二塁 172/74 右/左 (東邦出身)
 




 「打撃に一番センスを感じる」





 大学球界を代表する脚力を持ち、広い守備範囲を誇る 林 琢真 。しかし私は、柔らかいハンドリングを生かした打撃にこそ、この選手の魅力を感じるのだ。


走塁面:☆☆☆☆ 4.0

 一塁到達は、速い時で3.8秒前後と、プロでもトップクラスの脚力の持ち主。大学日本代表・平塚合宿での50メートル走でも、全体の2位になるなど、その脚力は相当速い。その一方で、リーグ戦では毎シーズン5個前後と圧倒的な数ではない。今後、盗塁技術を磨くことで、プロでも足を売りにして行ける可能性は秘めるものの、技術的にはプロでもトップクラスといったレベルには到達していない

守備面:☆☆☆☆ 4.0

 駒大ではセカンドを務めているが、地肩はかなり強く、難しい体勢からでもアウトにしてしまったり、ゲッツーを高い確率で成立させることができる。またそのため、広い守備範囲を誇る。セカンドであればある程度即一軍でもやって行けそうなレベルにはあるが、チームに求められるのは、牧秀悟のいるセカンド以上にショートのポジション。このポジションに慣れるのには、一年ぐらいは時間を要するのではないのだろうか。





(打撃内容)

 東都通算は、打率.227厘 とけして高くはない。しかし、日本代表として出場したハーレム大会では、チーム1の打率.368厘のハイアベレージを残す。それだけ海外のパワーピッチャーにも力負けしなかったり、初めて対戦する投手にも、すぐに順応する対応力を魅せた。この選手は、柔らかいリストワークを活かし、右へ左へとはじき返す好打者タイプだと言えよう。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足をしっかり引いた左のオープンスタンスで、グリップの高さは平均的。腰は沈めず背筋を伸ばし、バランスとしては並だが、両眼ではしっかり前を見据えられている。そのため、錯覚を起こすことなく球筋を追うことができている。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多くみられる始動のタイミングです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を上げて回し込み、真っ直ぐから少しベース側に踏み込んでくる。始動~着地までの「間」は取れていて、速球でも変化球でもスピードの変化に対応しやすい。内角でも外角でもさばきたいタイプだと思うが、やや外の方が意識が強いのかもしれない。

 踏み込んだ足元は、ステップは狭めもでなんとかブレずに我慢。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができ、レフト方向にも流すことができる。ただし、もう少し足元を盤石にしたりボールを長くみるという意味では、ステップの幅を少し広くとっても良いようには思える。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配は少ない。バットの振り出しも、上からコンパクトに振り下ろしてロスは少ない。バットの先端であるヘッドを上手く残して、低めの球を上手く拾うこともできている。

 逆にインサイドアウトのスイングでロスはないのだが、プロの強くて速い球に対応するのには、もう少しバットのしなりを生かしたスイングじゃないと、力負けする恐れは感じなくはない。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが静かなので、目線がほとんど動かないところは良いところ。上記にも記したようにステップが狭いので、足元もなんとか我慢できてむ強く踏み込むことができない。軸足も強く真っ直ぐ立って安定しているというよりも、上体が崩されてもついて行けるような粘り強さが光っている。

(打撃のまとめ)

 ボールを捉えるということには優れていて、まして人があまりさばけない領域まで捉えてヒットにしてしまう柔らかさを持っている。その一方で、甘い球を打ち損じないとか、強くはじき返すという意味では物足りず、この辺があまりリーグ戦で数字をあげて来られなかった要因ではないのだろうか。いかに強くて、打ち損じないスイングを身につけて行けるかが鍵になってきそうだ。 また、ボールを見極める眼の良さがあり、四死球などで粘って出塁するなど、そういったことも期待できるタイプ。この選手の優れた点には、柔らかい柔軟性に加え、この眼の良さをあげておきたい。


(最後に)

 セカンドの守備と走力に関しては、ある程度今すぐにでも一軍レベルに混ざってもやっては行けそう。その一方で、プロレベルの球威・球速のある球に力負けしないで叩く。また長いシーズンを戦い抜くといった意味では、まだ線も細くプロで通用する体にするのには一年ぐらいかかるのではないのだろうか。さらに、ショートを守る機会も増えることを考えると、即戦力というよりも2年目以降に飛躍することを期待したい。非常に柔軟性のある打撃ができる点では非凡であり、上手く才能が結果に結び付けられるようになれば、いずれは 3割・20盗塁 ぐらいを期待しても良い素材ではないかと判断する。打撃の形は、どことなく 石井琢朗 を彷彿とさせるものがあるので。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2022年 秋季リーグ戦)