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山口 アタル(日ハム)外野手のルーキー回顧へ






山口 アタル(23歳・テキサス大タイラー校)外野 179/89 右/右 





「テキサス大タイラー校?」 





 思わず会場に鳴り響いたアナウンスに、誰? という思いを抱いた 山口 アタル 。日本人の父とカナダ人の母とのハーフで、高校卒業後・コルビー短大を経て、テキサス大のタイラー校でプレーしていた選手なのだという。元々は投手だったが、右肘の故障で外野手としてプレーしているという。


(守備・走塁面)

 ピッチング練習の動画では、94マイル(151キロ)を記録していたところをみると、かなり故障からは回復しつつあるのかなと。ちょっと、以前DeNAでプレーしていた スペンサー・パットン のようなフォームで投げ込んでくる。そういった意味では、NPB入り後に投手をやるかは別にして、肩は相当強いのは間違い無さそうだ。

 スカウトのコメントからも、走攻守の能力が高いということなので、打球勘やキャッチング含めてわからないが、純粋に走らせたらそれなりには速いのだろうというのは想像できる。ただし、プロの世界で盗塁をバシバシできるのかは定かではない。





(打撃内容)

 いかんせん実戦での映像は、小学生の時のものなので参考にならない。そこで今回は、マシン相手に打撃練習をしている映像があったので、それをもとにフォーム分析をしてみたい。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 少しベース側にクローズ気味に構え、前の足のカカトを浮かして構えている。グリップを高めに添えて、あらかじめ捕手側に添えている。腰の据わりも深く・両眼で前を見据える姿勢も、全体のバランスもそれなりといった感じがする。

<仕掛け> 不明

 マシンでの打撃練習なので、どのタイミングで動き出しているのかはよくわからず。ただし、動作からみて、恐らくリリース前後で動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。それでもハーフ選手であり、肉体の資質が日本人離れしており、その点では、このぐらい引き付けてから動いても、充分に対応できてしまうだけのヘッドスピードと体の強さを持っている。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 小さくステップして、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞りその球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。

 踏み込んだ前の足に体重を預け、軸足は浮いてしまうような前さばきのスイングではあります。それでも、踏み込んだ足はしっかり止まって壁を作れているので、その点で低めの球や逃げてゆくような球でもある程度対応できるのではないのでしょうか。ボールを手元まで引き付けてというよりも、変化際を前でさばく感じのスイングです。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ捕手側にグリップを添えているので、打撃の準備である「トップ」の形はいち早く作れている。そういった意味では、速い球に立ち遅れる心配は無さそう。スイング軌道を観ていても、上から脇を閉じて、コンパクトにミートポイントまで到達している。そのためロスがなく、にコンタクト能力も悪くはないのではないかと感じました。

 ボールを捉えてからも、スイングの弧が大きいとか、フォロースルーを使って打球に角度をというよりも、強靭なヘッドスピードと体の強さを生かして、ライナー性の当たりを連発していました。どちらかというと腕力が強く、オーバー・フェンスを連発するというよりは、強烈な打球で野手の間を抜けてゆくタイプの強打者なのではないかと。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢できているが、軸足の安定感という意味では不安定な部分もあり、強い上半身が勝ったタイプなのかなといった印象を受けた。

(打撃のまとめ)

 とにかく、映像で見ただけではあるが、そのスイングの迫力・打球の速さは尋常ではなく、それだけでも獲得する価値はあるのかなといった印象は受けた。その一方で、当たれば凄まじいのだろうが、タイミングの図り方、確実性という意味ではどうなのかな?という風にも感じられたので、実戦で何処までNPBレベルの投手に対応できるのかは、正直混ぜてみないとよくわからない。


(最後に)

 実戦での映像がないので、正直どのレベルなのか掴むことができない。ただし、スイングの速さと打球の速さが尋常ではないこと。身体能力は、かなり高そうだというのは僅かな映像からでも伝わってくる。あとは、試合に入ってどうなのか? 日本の野球にアジャストするのにも時間がかかるかもしれないが、資質は間違いなさそうなので、上手く導けると物凄い掘り出しものになるかもしれない。どのぐらいやれるのか? ぜひ、見届けてみたいと思わせてくれる選手だった。