22dy-21





辰見 鴻之介(楽天)内野手のルーキー回顧へ







辰見 鴻之介(西南学院大4年)二塁 177/69 右/右 (香住丘出身) 





「足のスペシャリスト」 





 22年度のドラフト戦線においては、足のスペシャリスト的な存在が少なかったように思えます。そんな中、明確に圧倒的な走力を評価されての指名だと考えられるのが、この 辰見 鴻之介 ではないのだろうか。


(守備・走塁面)

 試合前練習などをみると、あまり厳しい体勢からの送球がなかったので、どの程度上手いのかまではわかりませんでした。ただ一つ感じるのは、非常に丁寧に補球しようという姿勢が感じられるということ。実際守備に関しても、補球技術を評価するスカウトのコメントがありました。

 自慢の走力に関しては、右打席から4.05秒前後で一塁に到達するラップが計測できました。これを左打者に換算すると、3.8秒前後に相当し、プロでも最上位ランクの走力であるのは間違い無さそうです。盗塁に関しても、出塁するとすかさず次の塁を陥れようと仕掛けてきます。2年秋には、10盗塁で盗塁王にも輝いています。

 セカンドに限ってはそつなくこなせるだけの守備力はありそうで、純粋な走力という意味では、球界でも最上位クラスの脚力があるのは間違い無さそうです。あとは、プロレベルの投手相手に、どのぐらい盗塁できる技術があるのかではないのでしょうか。





(打撃内容)

 足のスペシャリスト的な印象が強いのですが、チームでは1番などを担って通算で.301厘といった成績を残しています。見ていると、右に左にセンターへと、鋭く弾き返す打撃をしてきます。振り出しの良さなどもあり、甘い球を逃さない、そういった鋭さが感じられます。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を少しだけ引いて、カカトを浮かせて構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わりはそれほどでもないのですが、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしてはそれなりでしょうか。

<仕掛け> 平均ぐらい?

 投手の重心が沈みきったあたりで始動しているのか? 特に意識していないのか? 動き出すタイミングは一定しませんでした。大方「平均的な仕掛け」あたりだとすると、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる仕掛けです。ただし打者としては、対応力を重視した方が合っていそうなプレースタイルではあります。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できます。アウトステップするように、内角への意識が強いタイプのように感じました。

 踏み込んだ足元も、なんとか動かないで我慢できています。そういった意味では、アウトステップでも甘めの外角球や高めの球ならば、充分対応できるのではないのでしょうか。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力み無くボールを呼び込めています。バットの振り出しも、内角の球に対しては脇を占めて、外角の球に対してもある程度ヘッドを残してコンパクトに振り抜けていました。むしろ、ミート重視のスイングなので、一軍レベルの球威や球速に対し、力負けしないのかの方が心配です。それでも甘い球を逃さず叩くといったことに関しては、かなりの集中力が感じられました。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて形はそれほど崩れません。そのため、軸を起点にキレイに回転してスイングできています。

(打撃のまとめ)

 守備や走力を評価しての指名だと思いきや、打撃も箸にも棒にもかからないといった選手ではありませんでした。それでもスイングの強さという意味では、一軍の投手に対応するのには時間はかかりそうです。それでも甘い球を逃さないという、振り出しの鋭さは感じられたので、それなりに対応して行けるようになるかもといった期待は抱きます。


(最後に)

 走力があるのは間違いないので、プロレベルの環境でいかに盗塁を成功させて行けるかに懸かっています。セカンドの守備もそれなりにこなせそうですし、打撃に関してもひ弱さはあるものの、思った以上のレベルにはありました。現時点では育成指名が妥当とは感じましたが、可能性を感じさせてくれる選手でした。


(2022年 秋季リーグ戦)