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石伊 雄太(24歳・日本生命)捕手 179/83 右/右 (近大工学部出身) 





 「大人の捕手」





 大学時代から、ディフェンス力はプロ級だと評価されてきた 石伊 雄太 。課題だった打撃も成長が見られ、一気に指名圏内へと入ってきた。


(ディフェンス面)

 身体を低く構え、投手に低めへの意識させやすいように座ります。投手のみならず、周りにも細かく指示を飛ばすなど
司令塔らしい司令塔といった感じがします。グラブさばきも柔らかく、際どいところにはフレーミングを駆使したキャッチングは目を引きます。フットワークも悪くないですし、何よりプレーが落ち着いていて安心して投げられるタイプの捕手です。スローイングでも、無理をしなくても1.8秒前後の送球をコントロール良く投げることができ、送球に関しては今すぐでも球界でもトップクラスになるのではないかと思われます。ことディフェンス面に関しては、一年目から一軍に置いておける、そういったレベルにあると考えられます。





(打撃内容)

 24年度の公式戦では、
打率.333厘を残すなど、社会人レベルでもある程度打てるようになってきました。けして打撃が売りの選手ではないのですが、捕手に求められる最低限の打撃は、できるようになりつつあるのではないかと感じます。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 右打席から、ほぼ両足を添えたスクエア(若干クローズ気味)スタンスで、グリップは高めに少し捕手側に引いて添えられています。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢、全体のバランスと悪くはないのですが、
少し固く感じます。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈んだ底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた中距離打者や、勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。大学時代は「遅すぎる仕掛け」なので、始動を早めることで対応力を上げてきたものだと考えられます。

<足の運び> 
☆☆★ 2.5

 足を上げて回し込み、少しベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。インステップ気味なので、外角への意識が強そうです。

 踏み込んだ前の足が、
インパクトの際に動いてしまうところがあります。そのため逃げてゆく球や低めの球には、開きが我慢できない分うまくないのではないかと。インパクトの際にも、エネルギーロスを起こしやすく、打ち損じも多くなりそうには見えます。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、速い球には立ち遅れ難いかと。バットの振り出しは、上から振り下ろして来る
インサイドアウトの軌道です。そのため、インパクトまでのロスは感じませんが、バットのしなりを活かせないので、プロレベルの投手の外角球をしっかり打ち返せる頻度は低いように感じます。

 またボールの下にバットを潜らせがちなので、線よりも点の打撃になりやすい。そういった意味では、打ち損じも多く、確実性はあまり高くないのかなといった気はします。

<軸> 
☆☆★ 2.5

 足の上げ下げはあるので、目線の上下動は並ぐらい。開きが充分に我慢しきれていないのと、インステップする分、少し
内角が窮屈になり、軸足の形も崩れがちです。そのため、調子の波は適度にある選手ではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 大学時代は、箸にも棒にもかからなそうな打撃をしていたのに比べると、打撃への意識も高まり、そこそこ打てるようにはなっています。しかし、フォームを分析してみると、けして確実性の高いスイングではないので、対応力という意味ではどうなのかな? という疑問を残ります。NPBに入ってくる捕手の中でも、打撃ではやや見劣るのではないのでしょうか。


(最後に)

 
ディフェンス力はA級の総合力があり、即戦力レベルではあると思います。ただし、中途半端に一軍に控えで置くぐらいならば、二軍で実戦を積ませようという判断になるかもしれません。一方で打撃は弱いと思うので、何処まで一軍レベルの投手に対応できるかは疑問です。ここが改善されるかが、正捕手を奪えるかの別れ目になりそうです。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2024年 日本選手権予選)


 







石伊 雄太(近畿大学工学部3年)捕手 178/80 右/右 (近大高専出身) 





 「打撃が良くなれば」





 秋の神宮大会に出場し、全日本大学選考合宿にも招集されていた 石伊 雄太 。チームの4番を務め、秋のリーグ戦では.383厘の高打率を残したものの、神宮大会では3打数0に終わっている。一にもニにも、打撃向上こそがプロ入りの必須条件だと言えそうだ。

(ディフェンス面)

 周りに指示を飛ばしながら、ゲームメイクできるタイプの捕手です。座ったまますぐに返球し、テンポを重視したスタイル。身体を小さくかがめ、柔らかいグラブさばきが光ります。フットワークなどに重苦しさもありませんし、二塁までの到達タイムも1.9秒前後のタイムでしたが、捕ってからの動きも素早く地肩は強そうです。ことディフェンス面だけで言えば、プロを意識できる素材ではないのでしょうか。


(打撃内容)

 3年間のリーグ通算打率は、.337厘と高いアベレージを残しています。また、過去2度のベストナインにも輝いています。しかし、全国レベル、その上の世界の野球を意識すると打撃がネックのように思えます。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに捕手側に多少引いて添えられています。腰の据わりは深く、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしても悪く有りません。ただし、あまり揺らがないせいなのか? 全体的に固く柔軟性に欠ける印象は受けます。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎える直前に動き出す、「遅すぎる仕掛け」を採用。このタイミングでの始動は、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、木製バットでプロの球を打ち返すのには遅すぎる印象があります。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 小さくステップして、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことがも染められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足は止まってブレないので、逃げてゆく球や低めの球にも喰らい付けます。ただし神宮大会ではボールになる変化球を我慢できずに手を出してしまっていました。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 あらかじめ「トップ」に近いところにグリップを添えているので、そのため速い球には立ち遅れ難いかと。それでも神宮大会では、少し「トップ」を作るのが遅れがちに見えました。バットの振り出しも、けしてインサイドアウトという感じではなく少し遠回りに出てきています。

 それでもインパクトの際にヘッドは下がっていないので、広い面でボールが捉えられるスイングです。タイミングさえ合えば、フェアゾーンにボールは飛びやすいのではないのでしょうか。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢できていますが、ステップが狭いせいか? 足元が窮屈で打撃に幅がないように見えます。

(打撃のまとめ)

 頭の動きが小さかったり、身体の開きなどを我慢できている点は良いところ。しかし、タイミングのとり方が下手で、柔軟性に欠ける打撃は、上のレベルで通用するようになるかは微妙です。それでもリーグでの成績をみると素晴らしいので、相手レベルのスピードが劣るときっちり対応できる術は持っているのかもしれません。今年は、上のレベルを意識し通用する打撃を身につけられるかに懸かっています。


(最後に)

 ディフェンスに関しては、プロを意識できる素材だとは思います。その一方で、この打力の弱さをいかに改善できるのか? 具体的に言えば、柔軟性を意識しつつ、打撃の幅をいかに広げて行けるかではないかと感じます。そのためにも、もう少し始動を早めてスイングに余裕をもたせられるようになることと、ステップをもう少し広くとって打てる幅を広げてゆくことではないのでしょうか。それが可能なのかどうか? この一年気に留めて、見守ってゆきたいところです。


(2021年 神宮大会)