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金村 尚真(富士大4年)投手の最終寸評へ







金村 尚真(富士大3年)投手 176/78 右/右 (岡山学芸館出身) 





 「意外に速球は暴れる」





 22年度の大学生投手の中でも、最も実戦的なタイプかとみていた 金村 尚真 。しかし、その投球を観ていると、意外に真っ直ぐ暴れて、うまく制御できないことが多いことに気がついた。


(投球内容)

 中背の体格から、テイクバックを小さめにして投げ込んできます。3年春・秋のリーグ戦では、最優秀防御率に輝くなどリーグでは無双している。今回は、大学選手権での投球や成績を元に考えてみた。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆ 3.0

 常時145キロ前後のスピード能力はあるものの、それほどボールが手元まで来ているとかいった凄みや勢いは感じられなかった。また冒頭でも述べたように、真っすぐの球筋が暴れて決まって欲しいところに決まってくれていない印象。それでも時々、打者の内角に厳しい球を投げ込んでくる。6月の大学選手権でも、11回1/3イニングで四死球は1個。それだけに、フォアボールで余計なランナーを出すことはない。むしろテイクバックは小さめだが、11回1/3イニングで11本と、それほど打者が苦にている様子はなかった。

変化球 カットボール・スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 真っ直ぐが暴れても四死球が少ないのは、カットボールやスライダーなどでカウントを確実にカウントを整えられるからではと。右打者外角には、これらの球を集めることができる。また左打者には、フォーク系の球を投げ込んでくる。ただし、ストンと落ちるというよりも、チェンジアップ的な沈み方をしている。三振は、11回1/3イニングで14個と、全国大会でも投球回数を上回る奪三振は奪えているのだが。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的、フィールディングや牽制などは、よくわかりませんでした。右打者の外角一杯のところで出し入れできるコントロールと、打者の内角を厳しく突く投球術はあります。「間」を変えるとか、そういったことはしていないようでした。

(投球のまとめ)

 四死球を出さない制球力があり、カットボールとチェンジアップなどの変化球は悪く有りません。むしろ、球速は出るものの、真っすぐの威圧感やコマンドという意味では、思ったほどではないのではといった印象を受けます。このへんが最終学年良くなってくると、大学生でも1年目からの活躍、そういったことが望める実戦派として評価できるようになるかもしれません。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足の膝はピンと伸び切ることなく余裕があり、適度にバランス良くは立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は適度に一塁側に落とせており、甘さは残すものの体を捻り出すスペースはある程度確保できています。そのため、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理はありません。多少、その曲がりや落差が鈍る可能性はありますが。

 「着地」までの地面の捉えも粘れており、体を捻り出す時間もそれなり。キレや曲がりの大きな変化球を習得できる可能性を秘めています。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはつけやすいのでは? しかし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は比較的前では放せているものの、ボールが押し込めているかと言われると微妙です。そのため、サイドよりも高低の制球に課題があります。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻はそれなりに落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いのでは? したがって、肘への負担は少なめだと考えている。腕の送り出しにも無理は感じられないので、肩への負担も少ないのでは? けして力投派というほどでもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりだし、小さめなテイクバックも相まって合わされやすいということは無さそう。ボールの出どころもある程度隠せており、投げミスをしなければ痛打を浴び難いのでは? 

 腕は適度に振れており、変化球のキレも良いので空振りは誘いやすい感じ。少し踏み込んだ前の足が突っ張って体重移動を阻害しがちで、そのへんが思ったほどボールが手元まで来る印象を受けない原因かもしれません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」がもっと良くなればなと思う部分はあるものの、大きな欠点は見当たりません。足の甲の抑えが浮いてしまっていてボールが上吊りやすいものの、故障のリスクは低く、ある程度良い変化球が投げられる下地があります。真っ直ぐが磨かれれば、プロでも即戦力を期待できるレベルまで来られるかもしれません。


(最後に)

 全ては、真っすぐの質の向上とコマンドなのかなといった感じが。変化球やその精度は悪くないので、真っ直ぐがよくなれば必然的に変化球はより引き出されると考えられます。全国大会・これから先のレベルの野球を想定して、課題に取り組み改善できるのか? 今年度は見守って行けたらと思っています。


(2021年 大学選手権)