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金村 尚真(日ハム)投手のルーキー回顧へ







金村 尚真(富士大4年)投手 176/78 右/右 (岡山学芸館出身) 





 「実戦力は大学NO.1」





 今年の大学生の中でも、こと現時点で実力NO.1は誰かと訊かれたら、この 金村 尚真 の名前をあげるであろう。今後の上積みなどを加味しないのであれば、今年の大学NO.1投手と言っても過言ではない。


(投球内容)

 この春のリーグ戦では、5試合に登板して 4勝0敗 防 1.36(4位) 。全日本大学選手権では、大商大相手に好投したものの、延長戦のすえ僅か1失点で敗れている。

ストレート 140~147キロ ☆☆☆★ 3.5

 球速的には、140~後半ぐらいと、驚くほどのものはない。しかし、小さめなテイクバックからタイミングがとり難く、ズシッとした球質でベース版の前まで強さが衰えない。多少球筋は高低で暴れるものの、両サイドにはしっかりコントロールできていた。特に、打者の内角を厳しく突くこともできている。

変化球 スライダー・カットボール・カーブ・フォーク ☆☆☆★ 3.5

 スライダー・カットボール系の球をしっかりコントロールして、カウントを整えてくる。余裕が出てくると、緩いカーブや少しチェンジアップ気味にドロンと落ちるフォークを織り交ぜてくる。そういった球を駆使して、一試合をトータルで組み立てるだけのバリエーションも持ち合わせている。

その他

 牽制は鋭く、クィックも 1.05秒前後と昨年よりも素早く投げることができていた。右打者外角一杯にズバッとキメられる一方で、左打者の内角をカットボール系で厳しく突くことができている。マウンドさばきも洗練され、勝負どころで能力を発揮できる気持ちの強さも感じられる。

(投球のまとめ)

 失投も少なく、ピンチでも踏ん張れるなどメリハリも効かせられていた。昨年よりも、打者の手元までのボールの威力に強さが出てきており、プロレベルの打者相手にも、ある程度押せるだけの力強さがある。今年の大学生では数少ない、一年目から戦力として計算できそうな投手である。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。セットポジションから、足を上げる勢いは悪くないが、あまり足を高くまでは引き上げて来ない。軸足の膝にはさほど力みは感じられないものの、やや直立気味な立ち方であり、あとの動作で体がツッコミやすい立ち方ではある。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちで、体をひねり出すスペースは充分とは言えない。カーブやフォーク系の球が投げられないことはないが、どうしても変化は鈍くなりがち。昨年は、もう少しお尻を一塁側に落とせていたのだが・・・。

 「着地」までの地面の捉えも平凡で、体をひねり出す時間も並ぐらい。そういった意味では、大きな変化を武器にするというよりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプではないかと考えられる。また「着地」までの粘りも昨年の方が作れており、あえてステップを狭めにて球威を増すことを重視したのかもしれない。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。

 足の甲での地面の捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それを上から叩くような腕の降りと「球持ち」の良さで抑え込むという、少し強引なフォームになっている。昨年よりも「球持ち」が良くなり、ボールを押し込めるようになったことで真っすぐの暴れも抑えられるようになってきた。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークの頻度が今ぐらいならば問題はないのではないのだろうか。今後もう少しフォークへの依存度が増して来ると、肘への負担なども考えて行かないと行けない。

結構上から角度を付けて投げているのの、腕の送り出しの際の無理は少なめ。それでも、それなりに体への負担は感じられるフォームなので、体のケアには注意して欲しい。それほど力投派ではないので、疲労を溜めやすいというほどではないのかもしれないが。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが平凡な上に、ボールの出どころもやや見やすく見える。そういった合わされやすさを、テイクバックを小さめにとることで補おうとしている。

 腕は適度に振れているので、打者としては吊られやすいかも。「球持ち」が良いことで、ある程度体重を乗せてからリリースできている。したがって、打者の手元まで強い球が投げられるようになってきた。ただしステップは狭めなので、やや体がツッコミやすいフォームになっているので注意したい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に良さがあるものの、「着地」や「開き」といった部分では物足りなさが残る。制球を司る動作はまずまずも、試合によっては高めに抜けて苦労することもありそう。また故障のリスクや投球の幅を広げてゆくことも平凡で、投球が実戦的な割にフォーム自体はさほど実戦的ではないことがうかがえる。このへんが、上のレベルで伸び悩む原因になっているかもしれない。特に昨年までは、「着地」までに粘りがありフォーム全体に好循環を生んでいたのが悪化してきているので、そのへんはどうなのだろうという疑問は抱くようになった。


(最後に)

 球威を磨く意味でフォームをいじったことが良い方向には出ているように見えるが、プロを想定すると一概に良いことばかりとは言えない。というのもフォームに粘りがなくなることで、変化球の曲がりが鈍くなったり、フォーム自体が合わされやすくなっているからだ。この辺のさじ加減を、プロでは模索することになるのではないのだろうか。

 それでも現在のパフォーマンスを考えると、大学生では屈指の完成度。富士大では、多和田 真三郎(本西武)以来の素材であり、一年目から一軍で先発なりリリーフで戦力になるだけのものを持っている。中背の実戦派ということで、その実力より過小評価されそうなタイプではあるが、それでもハズレ1位~2位指名の間ぐらいでは指名されるのではないのだろうか。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2022年 大学選手権) 










金村 尚真(富士大3年)投手 176/78 右/右 (岡山学芸館出身) 





 「意外に速球は暴れる」





 22年度の大学生投手の中でも、最も実戦的なタイプかとみていた 金村 尚真 。しかし、その投球を観ていると、意外に真っ直ぐ暴れて、うまく制御できないことが多いことに気がついた。


(投球内容)

 中背の体格から、テイクバックを小さめにして投げ込んできます。3年春・秋のリーグ戦では、最優秀防御率に輝くなどリーグでは無双している。今回は、大学選手権での投球や成績を元に考えてみた。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆ 3.0

 常時145キロ前後のスピード能力はあるものの、それほどボールが手元まで来ているとかいった凄みや勢いは感じられなかった。また冒頭でも述べたように、真っすぐの球筋が暴れて決まって欲しいところに決まってくれていない印象。それでも時々、打者の内角に厳しい球を投げ込んでくる。6月の大学選手権でも、11回1/3イニングで四死球は1個。それだけに、フォアボールで余計なランナーを出すことはない。むしろテイクバックは小さめだが、11回1/3イニングで11本と、それほど打者が苦にている様子はなかった。

変化球 カットボール・スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 真っ直ぐが暴れても四死球が少ないのは、カットボールやスライダーなどでカウントを確実にカウントを整えられるからではと。右打者外角には、これらの球を集めることができる。また左打者には、フォーク系の球を投げ込んでくる。ただし、ストンと落ちるというよりも、チェンジアップ的な沈み方をしている。三振は、11回1/3イニングで14個と、全国大会でも投球回数を上回る奪三振は奪えているのだが。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的、フィールディングや牽制などは、よくわかりませんでした。右打者の外角一杯のところで出し入れできるコントロールと、打者の内角を厳しく突く投球術はあります。「間」を変えるとか、そういったことはしていないようでした。

(投球のまとめ)

 四死球を出さない制球力があり、カットボールとチェンジアップなどの変化球は悪く有りません。むしろ、球速は出るものの、真っすぐの威圧感やコマンドという意味では、思ったほどではないのではといった印象を受けます。このへんが最終学年良くなってくると、大学生でも1年目からの活躍、そういったことが望める実戦派として評価できるようになるかもしれません。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足の膝はピンと伸び切ることなく余裕があり、適度にバランス良くは立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は適度に一塁側に落とせており、甘さは残すものの体を捻り出すスペースはある程度確保できています。そのため、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理はありません。多少、その曲がりや落差が鈍る可能性はありますが。

 「着地」までの地面の捉えも粘れており、体を捻り出す時間もそれなり。キレや曲がりの大きな変化球を習得できる可能性を秘めています。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはつけやすいのでは? しかし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は比較的前では放せているものの、ボールが押し込めているかと言われると微妙です。そのため、サイドよりも高低の制球に課題があります。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻はそれなりに落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いのでは? したがって、肘への負担は少なめだと考えている。腕の送り出しにも無理は感じられないので、肩への負担も少ないのでは? けして力投派というほどでもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりだし、小さめなテイクバックも相まって合わされやすいということは無さそう。ボールの出どころもある程度隠せており、投げミスをしなければ痛打を浴び難いのでは? 

 腕は適度に振れており、変化球のキレも良いので空振りは誘いやすい感じ。少し踏み込んだ前の足が突っ張って体重移動を阻害しがちで、そのへんが思ったほどボールが手元まで来る印象を受けない原因かもしれません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」がもっと良くなればなと思う部分はあるものの、大きな欠点は見当たりません。足の甲の抑えが浮いてしまっていてボールが上吊りやすいものの、故障のリスクは低く、ある程度良い変化球が投げられる下地があります。真っ直ぐが磨かれれば、プロでも即戦力を期待できるレベルまで来られるかもしれません。


(最後に)

 全ては、真っすぐの質の向上とコマンドなのかなといった感じが。変化球やその精度は悪くないので、真っ直ぐがよくなれば必然的に変化球はより引き出されると考えられます。全国大会・これから先のレベルの野球を想定して、課題に取り組み改善できるのか? 今年度は見守って行けたらと思っています。


(2021年 大学選手権)