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渡辺 翔太(九州産業大4年)投手の最終寸評へ







渡辺 翔太(九州産業大3年)投手 181/79 右/右 (北九州高出身) 
 




 「詰めが甘い」





 リーグ戦では通算12勝0敗という、圧倒的な安定感を誇る 渡辺 翔太 。そのリーグ戦での登板でも、時々甘い球があるなと思ってみていた。やはり全国大会・あるいはその先のレベルの野球を考えると、甘い球は見逃してくれないだろうということ。


(投球内容)

 大学選手権の和歌山大、神宮大会では国学院大戦で先発するも、共に自責点1ながら敗戦投手となった。これは、彼のここ一番での詰めの甘さを露呈した結果なのではないのだろうか。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 6月の大学選手権で見た時は、常時140キロ前後ぐらいでボールの走りはイマイチでした。リーグ戦では、テイクバックも小さめでピュッと来る感じがして、打者も差し込まれる場面が目立ちましたが。普段は、打者の外角中心にボールを集めることができています。しかし要所では、結構真ん中高めの打ち頃のゾーンにシュート回転して入ってきたりと怖い球が見受けられます。

変化球 カットボール・パーム・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 スライダーに見えるボールはカットボールたしく、またチェンジアップ気味に沈む球はパームボールとのこと。さらに、緩いカーブも時々投げているように見えます。このパームボールには威力があり、左打者には有効な武器になっていました。その一方で、カットボールだかスライダーが甘く高めに入ることが多く、この球の精度をいかに上げて行けるかではないのでしょうか。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと高速。牽制も非常に鋭く、フィールディングの動きはいいです。そういった投げる以外の動作は、非常に上手い選手だと考えられます。マウンドさばきは悪くないと思いますが、微妙な出し入れとか、間を使った投球とか、そういったものは感じられませんでした。

(投球のまとめ)

 立ち上がりを中心に、意外に細かい制球力がないのかなといった印象を受けました。リーグ戦ではもっとボールが手元まで切れている感じでしたが、大学選手権ではボールの質という意味でもイマイチ。時々カットボールだかスライダーが、甘く入るのも気になりました。これから上のレベルで活躍するためには、最終学年でこういった部分が改善されないと厳しいように思えます。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなりといった感じ。軸足の膝がピンと伸び切って力みが感じられる立ち方なのは気になるものの、全体のバランスとしては平均的でした。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側にへの落としもそれなりですので、ある程度体を捻り出すスペースは確保できています。そのため、カーブやフォークといった球種もモノにできる可能性があります。

 「着地」までの地面の捉えも早すぎることはなく、適度に体を捻り出す時間を確保。切れや曲がりの大きな変化球の習得もある程度期待できそう。特に、パームボールの威力には観るべきものを持っています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはしやすいのでは。足の甲の地面の捉えも悪くないのですが、膝小僧に土が着いてしまうぐらい沈んでいるので、エッジが活かせず効果はもう一つなのかなと。リリースでも、少し押し込みがという部分もあり、高めに甘く入る球も出るのかなといった気がします。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としはある程度落とせていますし、カーブも滅多に投げなければ、フォークも現状投げていないようです。パームがどの程度肘への負担のある球種かはわからないのですが、それほど窮屈になることはなく肘への負担は少ないのではとみています。

 少々腕を急に低いところから高いところまで引き上げて来るので、肩への負担はそれなりにあるのかなと感じられる部分も。腕も強く振れている分、疲労もけして少ないフォームではないように見えました。極端にリスクが高いフォームには見えませんが、体のケアには注意してもらいたいものです。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りも悪くないですし、テイクバックも小さめでタイミングがとりやすいということは無さそう。ただし、ボールの出どころは並なので、甘くない球でも踏み込まれたり縦の変化を振ってもらえない恐れはあります。

 腕は強く振れて吊られそうなのですが、ボールの出どころの関係でそこまで効果的ではないかもしれません。膝小僧に土が着いてしまうほど重心が沈んでいるので、後ろに体重が残っていまいち前に乗ってきません。このへんの重心の沈み込みを少し緩和できると、もっと前にグッと乗って来るような球が投げられるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」以外にはもう少し粘りない工夫が必要そうです。故障のリスクは多少感じられるものの、制球を司る動作や良い変化球投げられる下地はあるように感じました。投球の詰めもそうですが、技術への探究心なり追求も高めて行って欲しいものです。


(最後に)

 リーグ戦では無双しているものの、全国大会・その先のレベルを想定するとまだ甘い部分が見られます。そのへんを、最終学年でいかに改善して行けるかではないのでしょうか。それができれば、即戦力での活躍も見えてくるような選手になって行けそうです。


(2021年 大学選手権)