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渡辺 翔太(楽天)投手のルーキー回顧へ







渡辺 翔太(九州産業大4年)投手 182/86 右/右 (北九州出身) 





 「平塚は出来すぎだったのか?」





 毎年6月に行われる、大学日本代表を決める平塚合宿。その最初の紅白戦で先発したのが、渡辺 翔太 。この試合での投球が素晴らしく、一躍代表入りを決定づける快投となった。


(投球内容)

 非常にオーソドックスなタイプの好投手といった感じで、春は 5勝0敗 防 1.70(2位) の好成績でした。また秋は、3勝2敗 防 2.42 ということで、春ほどの内容ではなかったようです。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 コンパクトに腕を畳んで投げるので、ボールもピュッと来る感じで球速以上に勢いを感じられる球を投げ込んできます。やや球威・球速という意味では物足りないものを感じていたのですが、この平塚の時はコントロール・ボールの走りも素晴らしく、完璧な内容でした。秋の代表決定戦でも、要所では140キロ台中盤は出ていそうで、それなりには勢いは感じさせます。春との違いは、下級生時代に感じた、時々甘く入る詰めの甘さが顔を覗かせていたこと。実戦派の割に、結構甘い球がある点が気になります。特に球威があるタイプではないので、プロの一軍打者が、こういった甘い球を打ち損じてくれるのだろうか? という疑問は残ります。

変化球 スライダー・カットボール・スプリット など ☆☆☆ 3.0

 スライダーのようなカットボールでカウントを整えてくることが多いです。他にも小さく沈むスプリットに、独特の沈み方をするパームなどがあります。また、カットボールが高めに甘く入ることがあったのですが、平塚の時はその変化球が低めで振らせることができており、課題が克服できたのかと思いました。ただ、秋の代表決定戦を見ていると、甘く高めに浮く悪癖が顔を覗かせます。武器は、独特の落差を誇るパームボール。この球が、この投手の最大の武器ではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒 ぐらいとまずまず。フィールディングの動きもまずまずですが、牽制はよくわかりません。テンポ良く投げ込んでストライクを先行で追い込み、コーナー一杯に集め仕留められるときが、この選手の良い時なのでしょう。

(投球のまとめ)

 平塚の時は、短いイニングでの投球というのもあり、球威・球速の物足りなさが薄れていました。またテンポよく相手を追い込み、勝負どころでもズバッと良いところに決まるなど、爽快感抜群の内容。しかし、こういった投球がいつもできるわけではないようです。そのため、そういった投球が安定して出せるのであれば、開幕ローテーション入りして、5勝前後ぐらいは一年目からでも期待できるのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いと高さもあります。軸足一本で立ったときにも、膝がピンと伸び切ることなく立てており、力みが感じられないのは良いところ。フォームは、今年の秋の神宮大会代表決定戦の時のものを参考にさせて頂きました。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としはそれなりで、体を捻り出すスペースは適度に確保。カーブやフォークを投げるのには、特に無理はありません。「着地」までの地面の捉えもある程度粘れており、体を捻り出す時間もそれなりです。そういった意味では、武器にするほどの大きな変化球を習得できるかは微妙ですが、多彩な球種を操れる可能性があります。この部分は、昨年と殆ど変わっていません。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする力を内に抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいはず。足の甲の地面の捉えは、昨年のフォームだと膝小僧に土が付いてしまうぐらい沈み過ぎてでした。そのへんが緩和されて、足の甲の地面の捉えは良くなってきたのではないのでしょうか。「球持ち」もまずまずで、制球を司る動作は安定しています。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻の落としも適度にできていますし、カーブやフォークといった球種を多投するわけでもありません。そういった意味では、肘への負担は少ないと考えられます。腕の送り出しを見ていても、肩への負担も少なそう。力投派といったほどでもないので、故障のリスクも低いと考えられます。特に昨年は、腕を低いところから急に高いところに引き上げるような負担のかかる動作が見られました。しかし今年は、そういった違和感は感じられなくなっています。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れている上、ボールの出どころも隠せています。したがって、ボールが見え始めてから到達するまでも一瞬で、打者としてはタイミングが図り難いところがあります。

 腕は強く振れており、投げ終わったあとも体に絡んできます。それだけに、打者は吊られやすいと考えられます。ボールにも適度に体重が乗せられてからリリースできており、フィニッシュにおける地面の蹴り上げも見事です。それだけ、最後までしっかりエネルギーが伝えられた証です。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たりません。特に昨年よりも、体重が前に乗ってくるようになって、フォームにも躍動感が出てきました。制球を司る動作も良く、故障のリスクも少ないと考えます。また将来的には、多彩な変化球の習得も期待でき、投球の幅を広げて行けるのではないのでしょうか。フォームとしては、かなりハイレベルにまとめられており、技術的には高いものを持っています。


(最後に)

 平塚合宿で魅せたような投球を安定して出せるようになれば、一軍でもローテーションで回って行けるのではないのでしょうか。ただそれが、いつもできるわけではないというところに課題が残ります。それでも技術的には、昨年よりもかなり改善されており、良い感じに進化しています。

 あとは、ウェートを増すなど筋力・体重・体力などが付いて来ると、投球の土台・フォームの技術は高いので、成績もついてくるのではないかと考えます。ある程度一年目から一軍にも顔をだすとは思いますが、本当の意味で活躍するのは、プロの体ができてからの2~3年目以降ではないのでしょうか。その時に、どんなボールを投げているのか今から楽しみです。


蔵の評価: (下位指名級)


(2022年秋 神宮大会代表決定戦) 










渡辺 翔太(九州産業大3年)投手 181/79 右/右 (北九州高出身) 
 




 「詰めが甘い」





 リーグ戦では通算12勝0敗という、圧倒的な安定感を誇る 渡辺 翔太 。そのリーグ戦での登板でも、時々甘い球があるなと思ってみていた。やはり全国大会・あるいはその先のレベルの野球を考えると、甘い球は見逃してくれないだろうということ。


(投球内容)

 大学選手権の和歌山大、神宮大会では国学院大戦で先発するも、共に自責点1ながら敗戦投手となった。これは、彼のここ一番での詰めの甘さを露呈した結果なのではないのだろうか。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 6月の大学選手権で見た時は、常時140キロ前後ぐらいでボールの走りはイマイチでした。リーグ戦では、テイクバックも小さめでピュッと来る感じがして、打者も差し込まれる場面が目立ちましたが。普段は、打者の外角中心にボールを集めることができています。しかし要所では、結構真ん中高めの打ち頃のゾーンにシュート回転して入ってきたりと怖い球が見受けられます。

変化球 カットボール・パーム・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 スライダーに見えるボールはカットボールたしく、またチェンジアップ気味に沈む球はパームボールとのこと。さらに、緩いカーブも時々投げているように見えます。このパームボールには威力があり、左打者には有効な武器になっていました。その一方で、カットボールだかスライダーが甘く高めに入ることが多く、この球の精度をいかに上げて行けるかではないのでしょうか。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと高速。牽制も非常に鋭く、フィールディングの動きはいいです。そういった投げる以外の動作は、非常に上手い選手だと考えられます。マウンドさばきは悪くないと思いますが、微妙な出し入れとか、間を使った投球とか、そういったものは感じられませんでした。

(投球のまとめ)

 立ち上がりを中心に、意外に細かい制球力がないのかなといった印象を受けました。リーグ戦ではもっとボールが手元まで切れている感じでしたが、大学選手権ではボールの質という意味でもイマイチ。時々カットボールだかスライダーが、甘く入るのも気になりました。これから上のレベルで活躍するためには、最終学年でこういった部分が改善されないと厳しいように思えます。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなりといった感じ。軸足の膝がピンと伸び切って力みが感じられる立ち方なのは気になるものの、全体のバランスとしては平均的でした。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側にへの落としもそれなりですので、ある程度体を捻り出すスペースは確保できています。そのため、カーブやフォークといった球種もモノにできる可能性があります。

 「着地」までの地面の捉えも早すぎることはなく、適度に体を捻り出す時間を確保。切れや曲がりの大きな変化球の習得もある程度期待できそう。特に、パームボールの威力には観るべきものを持っています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはしやすいのでは。足の甲の地面の捉えも悪くないのですが、膝小僧に土が着いてしまうぐらい沈んでいるので、エッジが活かせず効果はもう一つなのかなと。リリースでも、少し押し込みがという部分もあり、高めに甘く入る球も出るのかなといった気がします。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としはある程度落とせていますし、カーブも滅多に投げなければ、フォークも現状投げていないようです。パームがどの程度肘への負担のある球種かはわからないのですが、それほど窮屈になることはなく肘への負担は少ないのではとみています。

 少々腕を急に低いところから高いところまで引き上げて来るので、肩への負担はそれなりにあるのかなと感じられる部分も。腕も強く振れている分、疲労もけして少ないフォームではないように見えました。極端にリスクが高いフォームには見えませんが、体のケアには注意してもらいたいものです。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りも悪くないですし、テイクバックも小さめでタイミングがとりやすいということは無さそう。ただし、ボールの出どころは並なので、甘くない球でも踏み込まれたり縦の変化を振ってもらえない恐れはあります。

 腕は強く振れて吊られそうなのですが、ボールの出どころの関係でそこまで効果的ではないかもしれません。膝小僧に土が着いてしまうほど重心が沈んでいるので、後ろに体重が残っていまいち前に乗ってきません。このへんの重心の沈み込みを少し緩和できると、もっと前にグッと乗って来るような球が投げられるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」以外にはもう少し粘りない工夫が必要そうです。故障のリスクは多少感じられるものの、制球を司る動作や良い変化球投げられる下地はあるように感じました。投球の詰めもそうですが、技術への探究心なり追求も高めて行って欲しいものです。


(最後に)

 リーグ戦では無双しているものの、全国大会・その先のレベルを想定するとまだ甘い部分が見られます。そのへんを、最終学年でいかに改善して行けるかではないのでしょうか。それができれば、即戦力での活躍も見えてくるような選手になって行けそうです。


(2021年 大学選手権)