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荘司 康誠(楽天)投手のルーキー回顧へ







荘司 康誠(立教大4年)投手 188/88 右/右 (新潟明訓出身) 
 




「まだ収まりが悪い」 





 真っすぐの勢いや球速に、素材としての魅力もある 荘司 康誠 。ただし、まだプロで勝てる投手なのか?と言われると、疑問が残る。その最大の理由は、欲しいところでしっかり思ったところに決まらないコントロールの粗さにあるのではないのだろうか。


(投球内容)

 リーグ戦のはじめに一度みたが、優勝のかかった明大との大一番での投球も確認した。しかしその印象は、あまり変わらなかった。

ストレート 常時140キロ台後半~MAX153キロ ☆☆☆★ 3.5

 適度な勢いと球速を兼ね備えた速球で、両サイドに大まかに散らせて来る。特に、左打者インハイを厳しく突くところに良さがある一方で、全体的に球筋が高い。また確かに球速には目を見張るものがある一方で、真っ直ぐで押し込むほどの球威や空振りがバシバシ奪えるのかと言われると、その点では物足りない

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 カットボールのような、打者の近く小さくズレるスライダーでカウントを整えて来る。結構多く、緩いカーブを織り交ぜ緩急を効かせつつ、縦の変化で引っ掛けさせる。この沈む球もフォークとのことだが、スプリット的で打者の空振りを誘うような落差はない。カーブを除けば、球速のある小さな変化が中心になる。

その他

 牽制は適度に鋭いものを混ぜ、クィックも1.1秒台前半と悪くない。フィールディングなども、打球への反応などは悪くなかった。ただし、投げるタイミングを変えるとか、ボールを長く持つとか、微妙なコースの出し入れをするとか、そういった細かい投球術は感じられない。

(投球のまとめ)

 投球内容は、昨秋見たときとそれほど変わっていないように思えます。若干真っ直ぐや体の強さみたいな部分が引き上げられているようにも見え、そのへんが今シーズンの成績にも反映されたのかもしれません。明大との激闘で意地を見せたものの、こういった試合で勝ちきれないところに、彼の未完成さを感じなくもありませんでした。


(成績から考える)

オフシーズンでフォーム分析をしているので、今回は残した成績から考えてみましょう。

 8試合 2勝1敗 52回1/3 34安 23四死 43三 防 1.72(3位)

1,被安打は投球回数の80%以内 ◎

 被安打率は、65.0% 。基準である80%以下どころか、70%以下なのは評価できる内容。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 その一方で、四死球率は 44.0 とかなりアバウト。三振が多く取れるのであれば、40%以下ぐらいまでは許容範囲とは言いたいが、プロのより狭いストライクゾーンを考えると、コントロールの部分ではかなり苦労するのではないかという不安は残る。

3,奪三振は1イニングで0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振は、0.82個 と、基準はクリアできている。ただし、それほど三振をバシバシ奪えているというよりも、プロレベルの打者を想定すると、空振りを取れるほどの球があまりないのかなと思えてしまう。

4,防御率は1点台以内 ◯

 防御率は 1.72 と、基準を満たすことができている。ただし、上位指名を意識するのであれば、0点台の絶対的なシーズンが欲しい。そういった意味では、3年秋が 2.22 であり、これまでのキャリアハイのシーズンだった。現状は、素材の良さは感じられるものの、プロで一年目からガンガン働けるのかと言われると不安が残る。

(成績からわかること)

 やはり不安を覚えるのは、制球力のアバウトさ。極端に悪い数字ではないものの、この辺がまだ投球に絶対的な成績を残せない原因になっているのではないのだろうか。防御率や奪三振も、ファクターを満たす数字ではないが絶対的ではない。むしろ誇るべきは、被安打の少なさではないのだろうか。あとは、普段の投球よりも、ここぞの時の投球が一つ課題となりそうだ。


(最後に)

 素材の良さは、誰もが認めるところだろう。それでも現状は、プロで本格化するのには2,3年かかるのではないかと考えられる。その辺のあと一歩を、育成できる球団であれば ハズレ1位~2位 ぐらいにランクしても不思議ではない。やはり彼の現状は、未完成のままプロ入りした 入江 大生 (明大-DeNA) の状況と良く似ている。秋までに、この物足りなさを解消できるだろうか?


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2022年 春季リーグ戦)










荘司 康誠(立教大3年)投手 188/88 右/右 (新潟明訓出身) 





 「入江もこんな感じだった」





 DeNAに1位指名された 入江 大生(明治大)投手も、下級生までは今の 荘司 康誠 と同じような感じだった。素材の良さは光っていたものの、まだリーグ戦で勝ち星も僅かだった。そんな、未完の大器 といった感じでは、二人は良く似ている。


(投球内容)

 セットポジションから、スラッとした体型から投げ込んできます。4年秋のリーグ戦では、6試合 0勝0敗 防御率 2.22(5位) といった成績だった。

ストレート 145~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 柔らかい腕から繰り出される真っすぐは、適度なキレと勢いがあります。全体的にボールが高いのですが、ボールに勢いがあるので空振りが誘えます。3年秋は、24回1/3イニングで24個と、ほぼ投球回数と同じ奪三振。真っ直ぐで押し込めるほどの球威はないものの、適度に高めで空振りは誘えます。四死球は12個と、ほぼ投球回数の半分ぐらいと、制球がアバウトなのが課題でしょうか。

変化球 カット・スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 球種は多彩で的は絞り難いのですが、狙って空振りを誘える変化球はありません。それでも被安打は17本と、被安打率は69.9%と少なめ。この多彩さが、この選手の持ち味なのかもしれません。

その他

 クィックは、1.1秒前後とそれなり。フィールディングや牽制に関してはよくわからなかったものの、あまり細かいコースの投げ分けや間をつかった投球術は見られません。

(投球のまとめ)

 まだ相手を力でねじ伏せられるほどの球威・球速がないのと、多彩な球種でも絶対的なボールがありません。このへんは、入江の3年時もそんな感じだったので、二人の同時期のレベルは近いように感じました。最終学年でのパフォーマンス次第では、上位指名を意識できる素材なのは確かなのでしょう。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる高さは低く、全体のバランスとしてはあまり良くない。それでも、膝に力みなく立てているところは良いところ。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さが残るものの、カーブやフォークといった球種を投げられないほどではないでしょう。ただし、そういった球の変化が鈍る可能性はあります。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりといった感じで、前には適度には足を逃せてはいます。武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、変化球のキレ自体が悪いわけではないかと。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいと言えます。むしろ気になるのは、足の甲の地面の捉えが浮いてしまい、浮き上がろうとする力を抑え込めていないこと。「球持ち」も平均的でボールが押し込めていないので、全体的にボールが高めに集まる傾向があります。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークを投げられないほど窮屈では無さそう。そういった球の頻度はそれなりにありますが、そこまで悲観することはないのではないのでしょうか。

ややボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がる傾向があるのと、やや腕が外旋して投げ込まれるので肩への負担はそれなりに感じます。それほど力投派だとは思いませんが、体のケアには注意して欲しいところではあります。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、ボールの出どころもある程度は隠せています。そのため、苦になるというほどではないにしろ、合わされやすいフォームではないのでしょう。

 腕も振れているので、打者としては高めの球なども吊られやすいはず。ボールにまだ充分体重を乗せてからリリースできているというほどではないので、リリースをもう少し体重を乗せられるまで我慢してから放ることができると、打者の手元まで来る勢いや球威が増すように感じられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、もう少し「球持ち」と「体重移動」に粘りが出てくると良いのではないかと。足の甲の地面の捉えが浮いてしまいボールが上吊りやすかったり、故障のリスクはそこそこも武器になる変化球が習得ができるかは微妙です。それ故に、真っ直ぐの出力をさらに引き上げて、いまある変化球を活かすスタイルが求められるのではないのでしょうか。


(最後に)

 現状は、素材は魅力的も、まだ決め手に欠けるところがあることは否めません。そこから最終学年で、いかに売りにできるものを作って行けるかではないのでしょうか。そうじゃないと、素材が買われて高い順位で指名されても、プロで伸び悩む可能性が高いです。現状は、まだまだどっちに転ぶかわからない、2022年を象徴するような選手の一人なのではないのでしょうか。


(2021年 秋季リーグ戦)