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橋本 達弥(慶應大4年)投手 182/86 右/右 (長田出身) | |
150キロ前後の真っ直ぐに、大きく落差のあるフォークを投げ込む 橋本 達弥 。 しかし、この選手を観てきて、あまりピンと来たことのない選手なのだ。その理由について、考えてみたい。 (投球内容) この秋は、リリーフとして 22回1/3 13安 8四死 22三 防 1.23 といった内容。また、4年春には六大学の最優秀防御率を獲得。大学のジャパンの代表として、ハーレム大会にも出場している。ちなみにここでの成績は、2試合 1回2/3 を投げて無失点だった。 ストレート 145~152キロ ☆☆☆★ 3.5 たまに指にかかった時のボールの勢いには見事なものがあるものの、球速の割にあまりインパクトを感じない。その最大の理由は、基本的にボールが暴れて思い通りのところにコントロールされることが少ないからではないのだろうか。そのため、これだけの真っ直ぐがありながら、投球の割合では変化球の方が多いぐらいなのが気になる。もっとストレートを魅せておいてからの変化球の方が、本当は縦の変化が活きるように思うのだが ・・・ 。ちなみに22回1/3イニングで8四死球ということで、四死球率は 35.8% と良くはない。しかし、そこまで四死球が多くないのは、変化球でカウントが奪えるからだと考えられる。指にかかった球が、ある程度思い通り投げられるようになったら、全然投球内容も変わってくると考えられる。 変化球 フォーク・スライダー ☆☆☆★ 3.5 落差の大きなフォークを、多く織り交ぜてくる。この球でカウントを整えることもあるし、決め球として空振りを誘うこともある。他にも、フォークと見分けのつき難い、縦の割れのスライダーがある。こちらは120キロ前後であり、フォークは130キロ前後ぐらいだろうか。春は、これだけ縦の変化を使う割に三振がとれないなと思ったが、この秋は投球回数と同数の三振が奪えるようになってきた。肝心のフォークも、ストンと落ちるというよりは、少しドロンとした落ち方をする。精度としてはかなりの確率で沈むものの、その割にあまり三振が奪えない印象はある。 その他 クィックは、1.1秒台と平均的。牽制は、走者を刺すような鋭さがある。ランナーを背負うと、適度にボールを長く持つなど、そういった投球センスは持ち合わせている。 (投球のまとめ) 速球を意識しておいての変化球ではなく、フォークを意識させておいての速球やスライダーを交えるといった感じの配球。この秋は、22回1/3イニングで13安打と、被安打率は 58.2% と的を絞らせないことができた。先発だと物足りなさも残る選手だったので、やはりリリーフで持ち味が出るタイプなのだろう。下級生の頃は、140キロちょっとぐらいの球も多かったので、その点でも地道に資質を伸ばしてきた印象はある。真っすぐの精度・制球が定まってくると、かなりパフォーマンスも変わってくると考えられるし、その可能性は秘めた素材だと評価したい。 (投球フォーム) セットポジションから、足を上げる勢いはあるものの、それほど高い位置まで引き上げては来ない。軸足の膝はピンと伸びがちで、トの字 になってバランス良く立てないのでフォームの余計なところに力が入ってしまいがちに。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を高い位置で伸ばすことなく重心が沈んで来るので、お尻の落としには甘さが残る。カーブやフォークが投げられないほどではないにしろ、どうしても変化は鈍くなりがち。この選手のフォークが、鋭く落ちるというよりもどろんとしているのは、その影響があるのかもしれない。 それでも「着地」までの粘りは、それなりには作れている。そのため、体を捻り出す時間は適度に稼げ、曲がり自体はある程度期待できるのかもしれない。フォークの落差や縦のスライダーの曲がり自体は、けして悪くないので。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブはしっかり抱えられているといった感じではないものの、結果的に最後まで体の近くにはある。そのため、外に逃げようとする遠心力は内に抑えられ、軸はあまりブレ難く両サイドにはボールが散る傾向が強いのでは? 足の甲の地面の捉えは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのかもしれない。しかし、「球持ち」自体は悪くないので、ある程度ボールを押し込むことには成功しているようには見える。アバウトではあるが、四死球を連発してというほど、荒れ荒れでもない。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としに甘さは残すものの、窮屈になるほどかと言われると微妙。ただし、縦の変化の割合が非常に多いので、肘への負担には充分配慮した方が良いのではないのだろうか。 腕も結構角度を付けて投げ下ろしてくるのだが、腕の送り出しをみるとそこまで無理は感じられない。力投派のフィニッシュではあるが、ものすごく無理をして投げているという感じでもないので、体のケアを充分していれば、そこまで気にしなくても良いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地までの粘りは悪くないのですが、フォームが直線的で球筋が読まれやすい恐れがあります。まして、ボールの出どころは少し早く見えている感じがするので、コースを突いた球でも打ち返されたり、縦の変化を振ってもらえない恐れはあります。 腕は、強く叩けています。この点では、縦の変化球を振ってもらえる要素があります。しかし、上記で記したように、「開き」が早いことで、その効果は限定的になってしまっているような。元来ならば、もっと三振が奪えてしかるべきかと。ただしこの投手、「体重移動」は適度にできているので、しっかりコントロールできれば、良い球がゆく可能性は秘めています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があることがわかります。足の甲の地面の捉えが浅いせいか? 力を入れて投げるとボールが高めに抜けてしまう恐れは感じます。またフォークを多投する投球スタイルの関係上、故障のリスクもつきまとうことも否めません。またヒップファーストが甘いところから、変化が鈍くドロンとしがちなのも、効果が不十分な要因になっているのではないのでしょうか。そのいった意味では、それなりに課題も抱えているフォームではないかと考えられます。 (最後に) 現状の投球内容だと、一年目からガンガン活躍するというのは厳しいようにみています。ただし、時々指にかかった時のボールには、おっ!と思わせてくれるものがあります。そういった真っ直ぐが投げられる割合が増え、それをある程度制御して投げられた場合には、真っ直ぐを魅せてからの縦の変化も期待できるようになるので、フォークに依存しすぎる投球スタイルにも変化が出てくるのではないのでしょうか。そういった意味では、この投手の真価が問われるのは、2年~3年目ぐらいにどのぐらいの投球ができるのかという部分に懸かっているように思えます。縦の変化を全面に出す選手は、今のDeNAでも稀少価値が高いので、そういった日が訪れることを今は待ちたいところです。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2022年 秋季リーグ戦) |