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田中 千晴(巨人)投手のルーキー回顧へ







田中 千晴(国学院大4年)投手 189/85 右/右 (浪速出身) 
 




 「場馴れしてきたか?





 春季リーグ戦の開幕戦で、彗星のように現れた 田中 千晴 。しかし、ここでの快投以後低迷し、5試合に登板して 防御率 5.73 と失速した。この秋は、第二戦のマウンドを任されることが増えてきた。


(投球内容)

 セットポジションから、アーム式なフォームで投げ込んできます。この秋は、2試合に登板して 9回 5安 4四死 8三 0失点 といった成績です。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 角度のある真っ直ぐが特徴で、常時145キロ前後を記録します。特に春の開幕週では、常時150キロ前後を連発しビックリさせました。制球はアバウトながら、両サイドに散らして来る感じ。膝下にズバッと決まる時もありますが、高めに抜けることもあります。また、意識的に打者の内角を厳しく突いて来る時もあります。まだ絶対的ではないにしろ、平均して水準以上のボールを投げ込んできている印象があります。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 小さくズレルカットボールような球に、もう少し大きく変化するスライダーでカウントを整えてきます。さらに、縦割れのカーブのような球や、スプリット気味に沈む球もあります。特に春と持ち球が変わった感じはしないのですが、変化球でカウントを整えたり縦の変化で空振りを誘う時もあります。

その他

 牽制は適度に鋭く、クィックは1.15秒前後~1.20秒ぐらいと平均的。特に微妙な出し入れや、「間」を意識してといった感じではなかったが、内角を意図的に厳しく突いてきたりはできる。

(投球のまとめ)

 春の開幕戦の投球が素晴らしく、そこまでのインパクトは今回受けなかった。それでも丁寧に投げて、試合を作ることはできるという部分では、精神的に余裕が出てきたのではないのだろうか。春の150キロ前後を連発できる能力も加味すれば、この選手の将来は明るいのかもしれない。


(成績から考える)

 春の寸評でフォーム分析はしているので、今回はこの秋の成績から。まだ2試合のサンプルと充分とは言えないが、指名されたら、内容を差し替えて掲載したい。ラストシーズンのここまでの内容は

 2試合 9回 5安 4四死 8三 防 0.00

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、55.6% とここまでは少なめ。まだ青学戦と中大戦に登板したのみではあるが、春は81.8% だったことを考えると、かなり改善できているのかもしれない。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下に ✕

 四死球率は、44.4% と高め。春は 54.5% だったが、これはサンプルも少ないので誤差のようなものかもしれない。いずれにしても、制球はまだまだアバウトなところは変わっていないようだ。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ○

 1イニングあたりの奪三振は、0.89個と、先発投手の基準である0.8個を上回っている。春も0.98個だったので、このへんの違いも誤差の範疇かもしれない。

4,防御率1点台 ○

 春は防御率 5.73 だったが、秋はまだ無失点。とはいえ、まだ2試合のみなので、何処まで信頼できるのかは微妙だろう。

(成績からわかること)

 四死球率や奪三振率に大きな変化は見られないが、被安打率が大幅に改善されたことで、失点を防げているのかもしれない。しかし、その投球をみても、目にみえて何か変わったようには見えないのだが ・・・ 。気になったのは、雨で第二戦の試合が流れた翌日の試合では、第一戦で先発した 武内(3年)が再び先発していたこと。それだけまだ内部での評価は、そこまで高くはないことを意味しているのではないのだろうか?


(最後に)

 まだ発展途上の選手なので、今後まだ良くなる余地は残されているように思える。ただし、春にフォーム分析したときには、ここから実戦的なフォームにするのは大変な投手だとわかった。そう考えると、あまり入れ込まずに、中位~下位指名ぐらいにとどめておく方が無難ではないかと思えてくる。果たして彼を、上位指名してくる球団はあるのだろうか?


蔵の評価: (下位指名級)


(2022年 秋季リーグ戦)










田中 千晴(国学院大4年)投手 189/85 右/右 (浪速出身) 
 




「東都に現れた新星」 





 大分で行われた東都開幕週に、MAX153キロの速球を投げ込み突如として現れた 田中 千晴 。 国学院大に進んでからの3年間では、僅か2試合しかリーグ戦の登板がなかった。この日の快投で、一躍その名を知らしめた。


(投球内容)

 セットポジションから、少々腕が突っ張って投げ込むアーム気味な腕の振り。この開幕週での活躍で飛躍が期待されたが、その後は調子を落とし 5試合 0勝1敗 防 5.73 と結果は残せないで終わっている。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 角度のある真っ直ぐを、打者の膝下に集めて来る。開幕週の投球では、それがストライクゾーンに決まり好投に結びついた。しかし、その後の試合では結果を残せなかったように、いつもそういった投球ができるわけではないようなのだ。こういった投球が安定してできるようになれば、プロも現実味を帯びてくるだろう。

変化球  カットボール・スライダー・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 変化球は、スプリットのような小さく沈むフォークと、カットボールのような小さく横にズレるボールを投げてくる。たまに、もう少し曲がりが大きなスライダーも交えてくる。この日は、変化球も低めやコーナーに散っており精度・キレともまずまずだった。

その他

 クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。牽制も適度に鋭く、マウンドも丁寧に落ち着いて投げていた。しかし、そういった投球が安定してできないところが今後の課題なのだろう。

(投球のまとめ)

 ボールは一つ一つにはプロを意識できるものを持っているので、いかに開幕戦の時のような投球を安定して出せるかではないのでしょうか? 今後の進路は存じませんが、こういった投球が続けられるようになれば、プロも見えてくる素材です。


(投球フォーム)

 安定した投球を望むためにも、何処に課題があるのか考えてみたい。セットポジションから、足を静かにあまり高くまで引き上げてはきません。軸足の膝には力みが無くて良いのですが、全体のバランスとしてはもう一つ。理想の立ち方は、Vの字になる形で、できるだけ体が突っ込まないためにも トの字 のような形にはならないことが望ましいです。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほどではありません。ただし、そういった球種を投げても、変化が鈍くなる恐れはあります。

 「着地」までの地面の捉えは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。空振りを誘う大きな変化というよりも、球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げてゆくのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは投げ終わったあと後ろで解けているので、どうしても軸はブレやすく両サイドへの制球はアバウトになりやすいのでは? 足の甲での地面の捉えも浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが高めに抜けて制御できなくなる恐れがあります。「球持ち」自体は、けして悪いとは思わないのですが。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さは残しますが、全く落とせていないわけではありません。しかし、かなりフォークのような縦の変化球を多めに投げる配球なので、肘への負担はそれなりにあるのではないかと。

 また角度を活かそうとするため、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が多少下がる傾向にあります。そのため、送り出しにも、肩の負担を感じなくはありません。けして力投派ではないのですが、パフォーマンスの低下が何処か痛み出したからということではないことを祈っております。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も並ぐらい。そういった意味では、それほど打者が苦になるフォームではないのかもしれません。しかし、腕は強く振れており、打者としては吊られやすいのでは? 「体重移動」も発展途上ではあるように感じられたが、ある程度体重を乗せてから投げられており、地面の蹴り上げは悪くありません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪いところはないものの、もっと動作に粘っこさが出てくると、投球にも嫌らしさが出てきそう。制球を司る動作に課題があり、故障のリスクも少し高め。また、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかと言われると微妙であり、素材は面白いが実戦的になるのには苦労する可能性は否定できない。


(最後に)

良いものは持っているので、それを安定して出せるようになるのかが指名の鍵を握りそう。そういった意味では、秋に再度確認して最終的な判断をしてみたい。その素材を買って、育成あたりでという興味を持つ球団もあるかもしれないが、現状は社会人や独立などに進んで、数年後にといった判断になる可能性は高いのかもしれない。それでも、最後まで追いかけてみたいと思わせてくれる選手だった。


蔵の評価:追跡級!


(2022年 春季リーグ戦)