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才木 海翔(オリックス)投手のルーキー回顧へ








才木 海翔(大経大4年)投手 181/86 右/右 (北海道栄出身) 





 「落ち着いて投げられていた」





 この秋の 才木 海翔 は、一辺倒だった春に比べると、だいぶ周りが見えた投球ができていた気がする。そういった意味では、圧倒的ではないものの、安心して観ていられる落ち着きを取り戻していたのではないのだろうか。


(投球内容)

 ランナーがいても、ジタバタすることなく自分のペースを保って投球できていた。また、ランナーがいない時は、ワインドアップから堂々と振りかぶって投げ込んでくる。この秋は、ロングリリーフとなった、神戸学院大との模様をみた。

ストレート 145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 ある程度長いところを投げる状況だったので、キャパ全開ではなかったが、無理なく145キロ(確認した中では最速は148キロ)を記録。昨年も指摘したが、時々高めに甘く浮く球はあったものの、両サイドにボールを投げ分け、制球にも不安がない。元々あまりボールに角度が感じられず、平面的な球筋といった感じで、140キロ台後半を記録して来ないと、ボールに見栄がはして来ないタイプ。それでも、右打者の内角への厳しいところに、意識的に突くことはできていた。

変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 スライダーでカウントを整えてくるといったことはなく、多くは速球でカウントを整えてくる。そして追い込むとナックルカーブのような独特の沈み方をする球があるのですが、あれがフォークなのでしょうか? 変化球が悪いというわけではないのですが、投球の多くは速球を投げる配球です。

その他

 クィックは、1.0~1.05秒ぐらいとまずまずで、牽制も適度に鋭いものは持っています。ベースカバーなども素早く、投げる以外の部分に欠点があるようには感じられません。ただし、コース一杯で微妙な出し入れをするとか、投げるタイミングを変えるとかそういった投球術は観られず。ランナーを背負ってからも、落ち着いて丁寧に投げようという姿勢は感じられます。

(投球のまとめ)

 180センチぐらい上背はあるのですが、球筋が平面的で140キロ台後半ぐらいじゃないと、ボールに凄みとか威圧感を感じるタイプではありません。そういった球を連発することも可能なのですが、プロの長いシーズンを想定すると、そういった姿がみられる場面は限定的になってしまうのかなという恐れは感じます。それでもそういった球を連発しても、精神的に落ち着きを失うとか、制球が乱れるといったことがないのは評価できる材料。ゲームメイクできるセンスも技術もあるのですが、プロではリリーフの方が持ち味は出るような気がします。


(成績から考える)

 オフの「本当に凄いやつ」ではフォーム分析をしたので、今回は残した成績から考えてみます。この秋は、

24回2/3 20安 9四死 22三 防 1.82(5位)

1,被安打は投球回数の80%以下 △

 被安打率は、81.1% と、僅かに条件を満たせず。それだけアベレージでの投球では、打者を圧倒しているとは言い切れない傾向があります。このへんは、彼の持つ底の浅さを感じさせる部分で、この傾向はプロではより顕在化するのではないかとみています。そのため、150キロ前後を連発して投げられる、リリーフでの方が良いのではと感じる部分です。

2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球率は、36.5% で、これも微妙に条件を満たせませんでした。観ているとそれほど制球力が悪いようには見えないのですが、やはり時々高めに甘く入ったり、狙ったところに投げきれないことが要所ではあるのかもしれません。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 △

 秋のリーグ戦では、前半戦ではリリーフ。後半戦では、先発をしていました。奪三振率は、1イニングあたり 0.89個 。先発での基準である0.8個以上は満たしていますが、リリーフである0.9個以上は満たしてはいない微妙なところ。投球の多くは、真っ直ぐで構成。独特の沈む球もあるのですが、この球に依存するということがないのも、三振がさほど多くはない要因かもしれません。

4,防御率は1点台以内 ◯

 本格的にリーグ戦に登場してきた3年春以降の4シーズンでは、いずれもこのファクターは満たしています。また、3年秋には 0.74 という、絶対的な数字も残しており、リーグでの安定感には見るべきものがあります。特に、シーズンによって成績にムラが少ないのも好感です。

(成績からわかること)

 成績からみると、リーグでの内容でも絶対的な数字が並んでいるわけではありません。むしろ、どのシーズンでも安定して、自分のパフォーマンスを発揮するところを評価したい部分はあります。先発やロングリリーフではなく、あくまでも短期的にエネルギーを爆発させた時には、150キロ前後を連発する能力があるので、そういった投球に徹すると、全然別な姿が出てくる可能性はありますが。


(最後に)

 育成枠での指名になりましたが、短いイニングで限定的に使えば、プロでも一年目から支配下・一軍でもある程度の活躍が見込めるように思います。現状は、まだ細部で物足りなさが残るので、圧倒的な数字をというのは厳しいかもしれません。しかし、オリックスの指導力・育成力を考えると、短期的に課題を払拭できる可能性があります。特に、そういったセンスを可能にするだけの土台は持っているので。その辺に期待して、育成枠の選手ですが、  を記してみたいところです。昨年の  北山 亘基(京都産業大-日ハム8位)の再来とまでは言わないまでも、早期の一軍への昇格も期待させます。


蔵の評価: (下位指名級)


(2022年 秋季リーグ戦) 









才木 海翔(大経大3年)投手 180/81 右/右 (北海道栄出身) 
 




 「関西屈指の好投手」





 22年度の関西の大学球界でも、実績内容的には最も安定しているのが、この 才木 海翔 ではないのだろうか。3年秋のリーグ戦では、防御率 0.74 で最優秀防御率に輝いている。


(投球内容)

 ワインドアップから、余裕を持って投げ込んできます。3年秋のシーズンでは、36回2/3 18安 10四死 33三 といった内容でした。

ストレート 145キロ前後~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 普段は、無理をせずにテンポよく140~145キロぐらいのボールを投げ込んでくる感じです。そして追い込むと、140キロ台後半と少し力を入れて投げ込んできます。36回2/3イニングで四死球が10個と四死球率は27.3%と高くないのですが、ストライクゾーンの枠の中では結構アバウトな感じがします。そのため、プロレベルの打者ならば見逃さないだろうなという球も時々みられます。また三振は33個と、投球回数を上回るほど絶対的なものはありません。それでも被安打率は 49.1% と50%を切っているので、合わされやすいといったことは無さそうです。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 それほどスライダーやカーブでカウントを整えることは少なく、投球の多くは速球で組み立てられています。時々フォークなのかチェンジアップなのかといった球もありますが、縦の変化球で三振を奪いまくっているわけでもありません。カウントを整える球・決め手という意味では、それほど傑出している感じはしませんでした。

その他

 クックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。牽制もそれなりといった感じでしたが、ベースカバーは素早く入れていました。微妙なコースの出し入れや「間」を使った投球術ではないのですが、走者を背負って力むことなく対峙できていました。というよりも、むしろ得点圏にランナーを背負うと、力よりも投げミスに気をつけて投げている感じがしました。

(投球のまとめ)

 球速の割には、力で圧倒できているのかと言われると微妙です。相手レベルの関係から、甘い球を打ち損じしてくれるケースが多く見られましたが、これはプロレベルの打者は見逃してくれないかと。そういった細部の部分はまだ甘いので、最終学年でどの程度改善されるのか注目したいところです。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみます。ワインドアップから、ゆったりとそれなりの高さまで足を引き上げています。軸足一本で立った時に、それほど膝に余裕はないものの、適度にバランスよくは立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残しているものの、カーブやフォークが投げられないほど窮屈では無さそう。「着地」までの地面の捉えもそれなりで、体を捻り出す時間も並ぐらい。武器になる変化球を習得するというよりも、球速のある小さな変化を交えながら、多彩な球種で的を絞らせないような投球を目指すことになりそうな。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられているわけではないが、最後まで体の近くには留まっている。そのため、外に逃げようとする遠心力も、ある程度抑え込めているのではないのだろうか。ただし、投球を見ていると、結構中に甘く入ってくる球も少なくない。

 足の甲での地面の捉えはできているので、浮き上がろうとする力は抑え込めている。低めに集まってくるというほどではないにしろ、高めに集まりやすいとか抜け球が多いといったことはないだろう。「球持ち」も比較的前で放せており、微妙なコントロールがあるわけではないが、大きく制球を乱すといったことは無さそうだ。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としには甘さはあるものの、それほどカーブやフォークへの依存度はおおくない。そのため窮屈になる機会も少ないし、そもそも極端に窮屈な感じもしない。そういった意味では、肘への負担はそこまでなーバスにならなくても良さそうだ。

 腕の送り出しを見ていても、肩に負担がかかるようには見えない。普段は力を抜いて投げている感じで、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的、体の「開き」も並ぐらい。特に打者が苦になるほどではないが、極端に合わされやすいといったほどではない。

 腕は適度に振れており、打者は吊られる勢いはありそう。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、エネルギー効率が悪いようには見えなかった。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」を見ていても、極端に悪い部分は見当たらない。その変わり、とても優れているといったほどでもないようには見える。故障のリスクは低そうで、制球も大崩れするような投げ方では無さそう。将来的に武器にするほどの変化球を身につけられるかは疑問だが、多彩な球種で的を絞らせない投球は可能ではないのだろうか。


(最後に)

 けしてスケールやポテンシャルで圧倒するタイプではないが、適度なまとまりと総合力で勝負する実戦派といった感じがする。まだまだ細部に甘さは残すので、その辺を最終学年いかに詰めて行けるかではないのだろうか。イメージ的には、染田 賢作(同大-ベイスターズ自由枠)を彷彿とさせる選手だが、自由枠でプロ入りした染田ほどの評価を得られるだろうか? 


(2021年 秋季リーグ戦)