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大橋 武尊(DeNA)外野手ルーキー回顧へ







大橋 武尊(20歳・BC茨城)外野 178/74 左/左 (IMGアカデミー出身) 





 「アスリート系」





 あのテニスの錦織圭も在籍していた IMGアカデミー。世界中からアスリートが、短期・長期留学する環境が整っているという。そこからの逆輸入で、BC独立リーグに加入した異色の経歴を持つ 大橋 武尊 。高い身体能力と打球の強さを持った、ポテンシャルが魅力の外野手だった。


(守備・走塁面)

 それほど多くの場面を確認できていないのですが、BCリーグ屈指の足のスペシャリストです。55試合・193打数で28盗塁。盗塁成功率は、.778厘。もちろん、NPBと独立リーグでは、投手の牽制やクィックに捕手の送球能力も格段に違うので、イコールこの数字が当てはまるわけではない。しかし今年の独立リーグでは、屈指の足のスペシャリストの一人であることは間違いないだろう。

 またこの選手のもう一つの売りが、肩の強さ。キャッチボールでも凄いボールを投げている動画も観たが、足だけが突出しているだけでなく肩も同じぐらいのアピールポイント。IMG時代には、守備部門で表彰されるほどの守備力があったのだという。実際NPBに混ぜた時に走守がどのレベルにあるのかは定かではないが、守備でも走塁でもプロで売りにできる資格は充分ありそうだ。





(打撃内容)

 その一方で、これだけの逸材が育成の3位指名まで残っていたのは、やはり打撃の弱さにある。ちなみにBCリーグでの今季の成績は、55試合 157打数 0本 13点 打率.217厘 と、プロレベルからはまだ程遠いところにあるようだ。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合はそれなりで、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスはまずまず良い。全体的に、力みがなくリラックスして構えられているところが良いところ。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この始動のタイミングは、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けです。

<足の運び> ☆☆★ 2.5

 足を上げて回し込み、ベース側に踏み出すインステップを採用。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でのスピードの変化には対応しやすい。引き上げた足はベース側に踏み出して来るので、外角への意識が強いのだろう。

 気になるのは、ステップの幅が狭いせいなのか? インパクトの際に足元が動いてブレてしまっている点。そのため逃げてゆく球や低めの球に対し、充分対応しきれるのかどうかといった部分。

 また足を売りにする選手がインステップしてしまうと、どうしても最初の一歩目が遅れてしまう。そういった意味では、ベース側に踏み込むよりも真っ直ぐからアウトステップ気味に踏み込む方が、走力を活かすことができるのではないのだろうか。今だと踏み込む割に、足元がブレることで外角に強いとは言えず。その割に、内角寄りの球にも窮屈になってしまい、打てるコースや低めへの対応が非常に狭くなってしまう可能性がある。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めているところは良いところ。バットの振り出しも、インサイドアウトのような内から出てくる感じではないものの、外の球を強く叩く形やスイング軌道に大きなロスは感じられない

 インパクトの際にも、バットの先端であるヘッドは下がっていないので、しっかりタイミングが合えばフェアゾーンにボールが飛びやすいのでは? 最後までしっかり振り切れており、ひ弱な印象は感じない。肉体的な弱さからスイングや打球が弱いのではなく、技術的に粗く精度に影響しているタイプなのだろう。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは平均的で、目線の上下動は許容範囲。足元が動いてしまうので、どうしても開きが我慢できているとは言い難い。それでも軸足は強く安定しているので、この辺の受け止める下半身とのバランスやステップの幅や方向を修正できれば、充分に打撃の改善は可能ではないのだろうか?

(打撃のまとめ)

 スイング軌道が遠回りに出るとか悪い癖があるわけではないので、下半身の使い方を工夫すれば打撃の精度を高めることは充分可能ではないのだろうか。けして打撃の弱さが、肉体のひ弱さが来ているタイプではなく、技術の粗さに原因がありそうなタイプ。そこに早く気が付き改善できれば、肉体のポテンシャルは高いだけに打撃でも異彩を放つことができるかもしれない。


(最後に)

 肩・足・強い肉体とポテンシャルは確かで、年齢もまだ20歳。若くしてアメリカで自分の技量を伸ばそうという意欲も買えるし、面白い素材ではないのだろうか。打撃の欠点はあるものの、この辺は本人の努力と嗅覚・指導者の導き次第では改善が可能なレベルだとみる。育成3位の選手ではあるが、今後が楽しみな選手ではないのだろうか。 


(2021年 BCリーグシーズン)