21sy-15





野村 勇(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ







野村 勇(25歳・NTT西日本)遊撃 175/81 右/右 (藤井学園寒川-拓殖大出身) 





 「強打の遊撃手」





 名門・NTT西日本で、ショートながら4番を任されていた 野村 勇 。フルスイングできるバッティングに加え、俊足・強肩の三拍子揃った右打ちの内野手だ。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 一塁までの駆け抜けタイムは、右打席から4.2~4.45秒 ぐらい。これを左打者に換算すると、3.95~4.2秒 ぐらいとまずまずの脚力の持ち主だと言える。拓殖大時代の4年春のシーズンでは、9盗塁を記録するなど盗塁技術も悪くない。社会人に入っても適度に走っており、プロでも 中の上~上の下 ぐらいの走力はあると観て良いのではないのだろうか。

守備面:☆☆☆ 3.0

 拓殖大時代は、三塁手。社会人では二塁を守っていたが、今年は遊撃手で都市対抗に出場していた。打球への反応・グラブさばきなどは、プロに混ぜると平均的なショートかなといった印象で、プロでは二塁や三塁なども含めて幅広く起用されるかもしれない。ただし肩は非常に強い選手なので、深いところからでもアウトにできる送球の強さがある。あとは、送球が乱れないように注意したいところ。長い目でみて、プロでショートを任される存在かどうかには懐疑的な見方はしている。


(打撃内容)

 右方向にも打球は飛ぶが、基本的に引っ張って巻き込む打球が多い。打てるゾーンに来たら、初球からでも積極的にフルスイングして来る。どちらかというと、確実性よりも破壊力を売りにしたタイプ ではないかと。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 幾分クロス気味に構える選手であり、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスなど、平均的な構えではないのだろうか。

<仕掛け> 早めか遅すぎる仕掛け

 普段は、投手の重心が下がり始める時に動き出す「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、確実性を重視するアベレージヒッターに多く観られる始動のタイミングです。追い込めると、ベース側に一度チョンと小さくしてからステップする打撃に切り替え、リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用しています。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れていますが、上手くタイミングを合わせるというよりも、強く踏み出すためのアクションになっています。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいといったタイプなのかもしれません。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にしっかり止まっています。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができています。一つ気になるのは、ボールを呼び込む時に引き上げた足の膝が捕手側に向けてから開くので、この動作によりタイミングが狂いが生じやすいのは気になります。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めているのは良いところ。スイングはレベルスイングではあるのですが、インパクトまでは少し遠回りに出てきます。それでもインパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がらないので、広い面ではボールを捉えられているのですが。

 思いっきり打てるゾーンの球を引っ叩くスタイルなのですが、ボールに角度がつくのは上手く巻き込めた時なのではないのでしょうか? それほど確実性は高く見えませんが、スイングは速くプロの球に力負けすることは無さそうです。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 頭の上げ下げはそれなりにあり、目線の上下動は並ぐらい。身体の開きは我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて、軸回転スイングできています。また軸足の内モモの筋肉も強く、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 確実性という意味では、まだまだいろいろ修正・改善するべきポイントはあるように感じます。そういった意味では、打撃に関しては即戦力になりうるかは少し心配です。それでも、甘い球は逃さず引っ張ったくという部分では、さすがに名門・社会人チームで4番を張るだけに、その能力の片鱗は魅せてくれます。


(最後に)

 身体能力が高く、強打の右の遊撃手という稀少価値の高い選手です。その一方で、プロでショートを任されてゆくというよりも、二塁・三塁・外野などの融通性の高いプレーヤーといった感じなのと、かなり粗っぽい打撃をする選手。それだけに、プロでレギュラーを担えるほどの選手にまでなれるかは微妙だとみます。

 しかし、気持ちの強さが感じられるのも確かであり、そういった意味では、しぶとく生き残って行くような強い生命力も感じられます。高卒で熟成されて育った選手の多い今のソフトバンクの中では、異質の血を入れたいという思惑もあるのかもしれません。そのへんが、良い方に出れば面白い選手ではないのでしょうか。大卒3年目の選手だけに、一年目から一軍に絡んで来て欲しい選手です。高い評価はできませんが、面白い素材ではあると思うので、 を付けてみたいと思わせてくれる選手でした。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年 都市対抗)