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森 翔平(広島)投手のルーキー回顧へ







森 翔平(23歳・三菱重工神戸)投手 177/80 左/左 (鳥取商-関西大出身) 





 「日本選手権後に変わった」





 明治神宮大会で神ピッチングを魅せて、一躍時の人となった 森 翔平 。しかし、社会人入社後は、ボールは良くても結果が伴わない試合が続いていた。その印象は、今年の日本選手権を見ても変わらなかった。しかし、日本選手権後の 都市対抗予選・伊勢大会と、8試合に登板して無失点。さらに都市対抗の本戦でも、8回を投げて 3安打 8三振 5四死 1失点 と安定した投球を魅せている。明らかに、その投球内容には変化が見られた。


(投球内容)

 ほっともっと神戸で行われた日本選手権では、最速は143キロ。しかし、この球場のガンは5キロ前後厳しそうな印象で、ボールの勢い・球威には問題ないのではないかと触れました。

ストレート 常時145キロ前後~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 非常に、球威がある力強いボールを投げ込んできます。キレや伸びといった球質ではなく、回転数も2,100~2200台ぐらいで、比較的回転の少ない球威のある球で詰まらせます。その球を、大まかに外角に中心に集めるのが持ち味。日本選手権の時もそうでしたが、立ち上がりがやや不安定なところがありますが、イニングが進むにつれて安定してきます。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 日本選手権の頃は、速球中心の配球でした。それでも一通りの変化球は投げられるものの、これはといった球がなかったので、致し方なかった部分はあります。しかし、都市対抗では、左打者にはスライダー・右打者にはチェンジアップとのコンビネーションで、合間に緩いカーブでアクセントを効かせたり、フォークを投げて目線を両サイドだけでなく、高低も意識させないと行けない的の絞り難いものへと変わってきます。その合間に、カーブで緩急も効かせて来るので厄介です。非常に変化球を多く使えるようになり、単調だったピッチングに奥行きが出てきています。

その他

 クィックは、以前は1.0秒前後の高速なものも見られました。しかしこの試合では、1.15~1.25秒ぐらいと平均的。投げ急いで、制球が乱れるのを恐れたのかもしれません。牽制も強弱つけてきますし、下手な選手ではありません。フィールディングの動きも悪く有りませんし、投球以外の能力が低いということは無さそうです。

(投球のまとめ)

 変化球の頻度が増え、特にフォークを交えるようになり投球の幅が広がりました。また、ランナーが出てもボールをじっくり持てるようになり、少しマウンドでも落ち着いて投球できるようになってきたのではないのでしょうか。以前は、プロで活躍するとしたら、ボールの力で押すリリーフのイメージが強かったのですが、今の内容ならば先発の一角として機能しても不思議ではありません。


(成績から考える)

では、都市対抗予選・伊勢大会・都市対抗本戦の成績から、その傾向を考えてみましょう。

7試 30回 17安 12四死 30三 1失 防 0.30

1,被安打は80%以下 ◎

 被安打率は、56.7% と極めて優秀で、力のある球で詰まらせるだけでなく、多彩になったコンビネーションで相手に的を絞らせなかったことがわかります。

2,四死球率は、投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球率は、40% とかなりアバウト。コントロールが悪いというよりも、結構コースを狙ったりとか細かいことをやろうとして、出塁を許している印象です。ストライクが取れなくて四苦八苦しているというのとは、少し違う気はしています。

3,奪三振は1イニングあったり 0.9個以上 ○

 奪三振は、投球回数と同数なので 1.0個。真っ直ぐで空振りを誘うというタイプではないので、真っ直ぐを魅せておいての変化球が非常に効果的だったことを裏付ける数字です。ちなみに今年・日本選手権までは、4試合(22回2/3)に投げて、奪三振は15個。1イニングあたりの奪三振は、0.67個 と平凡だったことを考えると、いかに日本選手権後にピッチングスタイルが変わっていることがおわかりだろうか?

4,防御率は1点台以内 ◎

 日本選手権後の防御率は、都市対抗できした1点のみの0.30 。社会人で、この安定感は素晴らしいです。投球を見ていても、精神的に落ち着いて投げられるようになってきているのではないのでしょうか。こういった気持ちでプロでも投げられたら、かなり期待が持てそうな気がします。

(成績からわかること)

 日本選手権までと日本選手権後では、明らかに投球内容が変わってきており、それが成績の上からもハッキリ出ていたと言えるのではないのだろうか。


(最後に)

 実際の投球を見ていても、変化球が多彩になり投球の引き出しが明らかに変わってきました。そのことが、マウンドでも余裕を持って投げられるようになった要因ではないかと。そしてそれは、成績の上でも明らかになりました。

 この内容を素直にプロでも出せたならば、1年目からローテーションの5番手・6番手ぐらいで、5勝~7勝ぐらいは期待できるかもしれません。リリーフでならなんとかといったタイプから、かなり短期間で変わってきています。この変化を見落とさず、2位という高い評価に踏み切ったカープの判断を尊重します。この選手は、基礎体力・基礎筋力みたいなものも充実しているので、一年目からプロで戦って行ける土台があるとみますし、春よりワンランク評価を引き上げようと思わせてくれました。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2021年 都市対抗)


 









森 翔平(23歳・三菱重工神戸)投手 177/80 左/左 (鳥取商-関西大出身) 
 




「スペックは高いが・・・」 





 4年秋の神宮大会での神ピッチングの印象が強い 森 翔平 だが、社会人に入ってからはピリッとしない投球が続いている。今年の日本選手権でも、立ち上がりこそリズムに乗れなかったが、2回以降持ち味を徐々に発揮し始めていた。


(投球内容)

 この日本選手権では、6イニングを投げて 5安打 1四死球 1三振 自責点2 ということで、立ち上がりの2点以降は無失点で抑えました。

ストレート 130キロ台後半~MAX143キロ ☆☆☆★ 3.5

 球速の厳しい ほっともっと神戸 のガンだっただけに、他の球場ならば5キロ前後速かったとみて良いでしょう。そのため、145キロ前後~後半ぐらいは出ていたのではないのか? というのが今年の他の試合での球速からも言えると思います。適度に球威のあるボールを投げ込む一方で、三振1個が示す通り空振りを誘うというよりも球威で詰まらせて打ち取るタイプです。

 右打者への方が両サイドに散るイメージがあり、左打者には外角中心にボールを集めてきます。立ち上がりが制球が定まらないところがあるのですが、落ち着いて来るとそれほど四死球で自滅する危うさは無くなります。いかに早く自分のペースを取り戻せるかが鍵 になるのではないのでしょうか。

変化球 カーブ・カットボール・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 以前は小さく曲がるカットボールと速球のコンビネーションだったのですが、この試合では緩いカーブを結構使ってきてました。この球のブレーキや曲がりは悪くないので、良いアクセントにはなっていまたしカウントも稼げていました。カットボールの頻度は減りましたが、スライダーやチェンジアップ系の球はあまり観られません。変化球で、武器になる球がないのが、投球を苦しくしている要因ではないかと考えられます。

その他

 クィックは、1.0秒前後と高速で、時々1.15秒ぐらいと標準的なタイムになります。このへんは以前も指摘しましたが、投げるタイミングを変えて単調になるのを防ごうとしているのかもしれません。牽制も強弱つけてきますし、元来下手な選手ではありません。フィールディングの動きも悪く有りませんし、投球以外の能力が低いということは無さそうです。

(投球のまとめ)

 決定的に欠けるのは、リズム感というか、テンポの良さがないこと。そのことが、全体にピリッとしない投球を演出してしまっている気がします。あとは、立ち上がりを中心に制球が乱れ、ランナーを背負いリズムに乗れない部分があります。そこを乗り越え落ち着きを取り戻すと、そんなに悪いわけではないのですが ・・・ 。


(最後に)

 オフの寸評でフォーム分析をしているので今回はしませんが、あまり昨年と変わった感じは致しません。緩いカーブを結構多めに使うなど、細かい変化を付けて現状を打破しようとしているのは伝わってきますが、全体としてはあまり変わっていない感じです。特に、テンポの部分と武器になる変化球が修得できず、粘られて余計にピリッとしない投球を作ってしまう点においては。

 それでも140キロ台中盤の力強いボールを安定して投げられるサウスポーというポテンシャルの高さは、今年の社会人左腕でも屈指のものがあるのではないのでしょうか。非常に正統派のサウスポーでもあり、プロ側としては見栄えがして評価されやすい選手ではないかと考えられます。明らかに何か変わったというものを示せれば最上位に入ってきても不思議ではないのですが、社会人入社後は同じような投球を続けているので、3位前後ぐらいなのでは?といった印象は持っています。その辺をウチなら変えられると自信を持っている球団ならば、上位で指名して来るかもしれません。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 日本選手権)






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森 翔平(22歳・三菱重工神戸)投手 177/77 左/左 (鳥取商-関西大出身) 
 




 「社会人で一番人気になりそう」





 今年の社会人球界の投手の中では、スカウト受けが最も良さそうなのが 森 翔平 。正統派の左腕投手で、140キロ台後半を連発できる能力を持っている。


(投球内容)

 都市対抗では、2試合とも僅かなイニングで交代している。2試合で、2回2/3 9安打 0四死 2三 2失点 。想像以上に、合わされやすく対応されていたのが気になった。

ストレート 145~149キロ ☆☆☆★ 3.5

 どうも見ていると、140キロ台後半と140キロ台前半のカットボールのような球を使い分けているように見える。両サイドには適度にボールは散っているものの、苦になく速球も変化球もついて行かれている気がした。ボールの勢い自体悪いとは思わなかったが、変化球もついて来られているところをみていると、フォーム自体に見やすさがあるのではないかと。現状、社会人レベルの打者相手に、スピードや球威で押し切れるほどのものはまだない

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 140キロ台前半のカットボールと速球の割合は同じぐらいで、たまに130キロ弱のスライダーや130キロ台中盤のチェンジアップ、さらに緩いカーブなどを入れてくる。しかし、どの球種も打たれており、絶対的な球が見当たらない。カウントを整えるのに苦労することは無さそうだが、この球を投げれば仕留められるという明確なボールは速球含めてないようなのだ。

その他

 クィックも1.05秒以内と素早いものから、1.2秒ぐらいのさほど早くないものを使ってきたりと、投げるタイミングを変えている節はある。牽制は適度に鋭く、走者を刺す場面もみられた。特に投球が単調だから打たれるとか、そういった一辺倒な印象は感じられなかった。

(投球のまとめ)

 関西大時代に、神宮大会で素晴らしい投球を披露したのが記憶に残っている。もしプロ志望届けを提出していれば、上位指名も濃厚だったのではないかと当時言われたものだ。その頃に比べて、何が悪いのか?と言われると難しい感じで、相手レベルが上がったことで対応されてしまったのかな? といった気はする。特に彼が、当時から大きく劣化したわけではないように思える。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、この選手の今後について考えてみたい。足を引き上げる勢いは静かで、あまり足を引き上げて来ない。軸足一本で立ったときも、膝には余裕がなく  の字のような形になってしまっている。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため、身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークのような捻り出して投げる球種は適さないのではないかと。「着地」までの地面の捉えも平凡で、身体を捻り出す時間も並ぐらい。スライダーやチェンジアップ、速球に近い小さな変化で、ピッチングを広げてゆくことになりそうです。実際も、そういったピッチングになっています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがって軸はブレ難く、両サイドには適度に散らすことができている。気になるのは、足の甲での地面の捉えが浮きがちで、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのでは? 実際そこまで抜け球は多くないのだが、それは「球持ち」が良く、ある程度ボールを押し込むことができているからかもしれない。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻が落とせていないものの、カーブは滅多に投げていないしフォークのような球種も見当たりません。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘への負担はそこまで気にしなくても良いのかもしれません。

 腕の送り出しは、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がるなど肩への負担を感じます。またフォームは、力投派といったほどではないので、それほど疲れを溜めやすいというほどではないとは思うのですが。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に下ろすまでの粘りは、さほど感じられません。そういった意味では、打者としてはタイミングを図るのが難しくはないように思います。ただし、ボールの出どころがそこまで見やすいのか?と言われるとそんなことはなく、特にヒットをここまで打たれた要因がわかりません。考えるに、ボールが見えてから到達するまでのイメージが、そのまま来るからなののかもしれません。特に手元でピュッとキレるとか、グ~ンと伸びてくるような質ではないのでギャップが生じ難いのではないのでしょうか。

 腕は適度に振れていますが、ボールが見やすいのか?低めの変化球を振ってもらえません。また球種に関わらず、どの球も万遍なく捉えられていました。球質がイマイチな要因は、ステップが狭く前にしっかり体重が乗って行っていないからではないかと。そのため、打者の手元までに活きた球が行っていないように感じます。股関節の柔軟性を養いつつ可動域を広げ、下半身の筋力を強化し体重がもっと前に移るフォームを作ってゆくべきではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に工夫が欲しいところです。制球を司る動作は悪くないのですが、故障のリスクが少し高いのと将来的に武器になる変化球を習得して行けるのかは微妙な印象を受けました。球速があっても実戦的な投球ができるのかと言われたら、プロを想定すると厳しいように感じました。


(最後に)

 正統派のフォームから、140キロ台後半を記録する素材は魅力です。制球力や変化球もそこまで悪くないのですが、合わされやすかったり嫌らしさに欠けるとこを、どう補って行けるのか? それができないと、例え高い評価で指名されても、プロで活躍するのは厳しいのではないのでしょうか。今後一年、そういった投球に工夫が見られるのか? 見極めて行きたいポイントでした。


(2020年 都市対抗)