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柴田 大地(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







柴田 大地(24歳・日通)投手 180/93 右/右 (日体荏原-日体大出身) 





 「とっちらかってる」





 かつての 沢村 拓一(現レッドソックス)のようなフォームから、爆発的な速球を投げ込む力投派。その一方で、ボールが抜けたり引っかかり過ぎてワンバンしたりと、どうにも収まりの悪い素材型なのが、この 柴田 大地 。


(投球内容)

 いま行われている都市対抗での登板を確認してからレポートを作成しようと思ったが、初戦ではベンチ入りもしていなかったとのこと。10月に行われた都市対抗予選では登板していただけに、何処か極端に状態が悪いということもないとは思うのだが ・・・ 。この投手、大きな大会での登板経験がなく、そのままプロ入りをしてしまうのだろうか?

ストレート 140キロ台後半~150キロ台中盤 ☆☆☆☆★ 4.5

 真っ直ぐの勢いや球速は、今年の候補の中でも屈指というほど図抜けています。ボールは確かに高めに抜けたり、指に引っかかり過ぎてワンバウンドしたりと荒れ荒れなのですが、意外に両サイドには散っています。しかし、ベンチの信頼が薄いのか? 大事な試合での登板は、これまで皆無。このへんが、プロで使える領域まで持って来られるのかは微妙です。

変化球 スプリット・カットなど ☆☆☆ 3.0

 落差の小さなスプリットを多く使ってきますが、この球がチェンジアップ的な効果で威力があります。多くはストライクゾーンに沈んでくるので、この球で確実にカウントが取れると楽になりそうです。他にもスライダーのような結構大きな曲がりをするカットボールがあるのですが、この球が上手く決まらないことが多いのは痛いです。一つカウントを整えられる球があれば、全然投球内容も変わってきそうなのですが。

(投球のまとめ)

 ボールの破壊力は破格なので、その点では非常に魅力溢れる素材です。その一方で、大卒社会人でありながら、その完成度は素材型高校生並といったところがどうでるか? ちなみに日体大時代は、トミー・ジョン手術なども行い肘の故障で4年間公式戦登板がなかったほどの選手だった。では、フォームの観点から今後の可能性や傾向について考えてみたい。





(投球フォーム)

 リリーフタイプらしく、セットポジションから足を引き上げる勢いや高さがあります。軸足一本で立った時にも、膝には余裕がありバランスも悪く有りません。ただし、クィックのように、軸足に体重を乗せきるまでに重心を沈ませてゆくのですが、これでもこれだけのパワーを引き出せるのは凄いです。逆にタメを作ることができたら、少しコントロールも変わってくるのかもしれません。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としは、甘さは残すもののある程度落とせている。そういった意味では、身体を捻り出すスペースはある程度は確保できており、カーブやフォークを投げるのもさほど問題はないのでは? 実際投げているのも、負担の少ないスプリットなので、そこまで気にしなくても好いのかもしれない。ただし、過去に肘を手術しており、その点は多少気になります。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、適度に身体を捻り出す時間を確保。そのため武器にできるほどの変化球の習得もある程度期待できるのだが、腕の振りが強すぎて小さな変化に留めておく方が制御はしやすいのかもしれない。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後後ろに流れ気味ではあるが、比較的最後まで身体の近くにはある。そういった意味では、外に逃げようとする遠心力はそこまで抑え込めていないわけでは無さそう。これだけ全身を使って投げているので、どうしても軸はブレて制球が不安定にはなってしまうのだろうが。

 足の甲の地面の捉えはできているように見えるのだが、その割にボールが高めに抜けたりする。これは、リリースが一定しないために、抜けたり引っかかり過ぎてワンバウンドしたりと安定しない。ここを一定にできないと、中々安定したコントロールは身につかないのかもしれない。今は、もう少し力の抜き加減を覚えても好い球がゆく感覚を身につけて欲しいとしか言えない。土台となるフォーム自体は、そこまで悪くないので。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻自体はある程度落とせているので、窮屈になることは少ないのでは?といった気はする。それでも結構縦の変化を使ってくるので、肘へのケアには注意して頂きたい。腕の送り出しを見ていると、肩への負担も少なそう。最大の懸念材料は、力投派だけに疲労を溜めやすく、そこからフォームが乱れて思わぬところに負担がかかるという恐れがあることだろうか? 

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの地面の捉えもそれなりな上に、ボールの出どころも隠せてはいる。それゆえ打者としては、ボールが見え始めてから一瞬でミットに収まっているという感覚を抱きやすく捉えずらいフォームなのではないかと。

 腕の振りも強いので、打者としては勢いでバットがまわりやすい。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、爆発的なエネルギーを生み出す原動力になっている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、思ったほど大きな欠点は見当たらない。やはり、リリースの安定感を身につけ、再現性をいかに引き上げられるか? 制球に不安があるのは、力みまくって全身で投げすぎている点も大きいのだろう。故障のリスクはさほど高く無さそうに見えないが、過去の手術や尋常じゃない力投派であることで消耗する可能性は否定できない。それでもフォームの土台からも、好い変化球を身につけられる下地はあるのではないのだろうか。


(最後に)

 ボールの威力は図抜けているが、それを制御できないでいる。そこをプロの指導や環境で、何か程よい力加減を身につけられるかではないのだろうか? 土台となるフォームは悪くないので、何かを掴めば大化けしても不思議ではない。現時点では、完全に素材型かつリリーフタイプだと言えそうだ。幾つかの動画を観てレポートを作っただけの選手なので、評価付けはできないことをご了承願いたい。


(2021年 都市対抗予選など)