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宮森 智志(楽天)投手のルーキー回顧へ







宮森 智志(23歳・高知FD)投手 193/93 右/右  (呉商業-流通経済大出身) 
 




「ボールに勢いがある」 





 長身から投げ下ろして来るボールの勢いには確かなものがある 宮森 智志 。流通経済大時代は、通算で6試合ほど登板しているが、実績らしい実績のない無名の存在だった。そんな選手が、僅か一年でドラフト指名を漕ぎ着けるまでの成長を魅せた。

(投球内容)

 四国アイランドリーグでの成績は、67回 65安 25四死 48三 22失 防 2.96 という内容だった。この防御率は、全体の10位と、リーグの中で突出した成績ではなかったことがわかる。

ストレート 145キロ前後~MAX151キロ ☆☆☆★ 3.5

 先発をしても、コンスタントに145キロ前後を刻みボールにも適度な勢いが感じられます。気になるのは、全体的にボールが高い印象があり、そのへんがソフトバンクの三軍レベル相手だと打ち返されていました。67イニングで65安打の数字が示す通り、被安打はけして少ない選手ではありません。

変化球 スライダー・フォーク・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 スライダーとのコンビネーションが基本で、たまに浮き上がって沈むカーブや軽く沈むチェンジアップ・フォークなどを交えてきます。ただし、67回で48三振と1イニングあたり0.72個の奪三振であり、三振をバシバシ奪って来るというほどではありません。そういった意味では、NPBレベル相手だと、まだまだ決め手に欠けるきらいはあります。

その他

 クィックは、1.1秒前後とまずまずで、牽制にも鋭いものがあります。ランナーを背負っても、冷静で自分の投球はできていました。そういった投球以外の部分にも、大きな欠点は見られませんでした。

(投球のまとめ)

 ボールに適度な勢いがあり、変化球もけして悪い投手ではありません。ただし総合力で言えば発展途上であり、プロで細部を追求し総合力を引き上げられるかに懸かっているように感じました。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはさほどありません。軸足一本で立った時にも、膝には力みは感じられませんが、全体のバランスとしては並です。大きな身体の割には、あまり威圧感や迫力は感じないのはもったいない気はしました。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻は適度に一塁側に落とせていると思うので、その点では身体を捻り出すスペースは確保できています。そういった意味では、カーブやフォークを投げるのに無理はないように感じます。

残念なのは、「着地」までの粘りが淡白で身体を捻り出す時間が足りません。こうなるとキレや曲がりの大きな変化球の習得は難しくなり、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになります。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはつけやすいのでは? むしろ気になるのは、足の甲での地面の捉えが浅い点。そのため浮き上がろうとする力が抑えきれず、ボールが上吊りやすくなります。またリリースでもボールを押し込めていないので、どうしても高めに抜けたり集まりやすくなりがちです。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを使ってきても負担はかかり難いのでは? これらの球種の頻度もさほど多くありませんし、現状は肘への負担は大きくはないと考えられます。

 また、腕の送り出しを見ていても肩に負担がかかる感じはしません。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられます。全体的に、故障のリスクは低いフォームに見えます。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 けしてボールの出どころが見やすいわけではないのですが、着地までの粘りが淡白なために打者としては合わせやすいフォームです。そのへんが、ボールの威力の割に被安打が多い原因ではないかと。

 腕の振りが悪いようには見えないものの、球離れが早いせいなのか? 投げ終わったあと身体に腕が絡んできません。またボールもリリースまで充分我慢できているかと言われると微妙なので、この辺がもっと体重が乗ってくると、グッと手元までボールが来るようになるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外の動作には課題を残します。故障のリスクが低いのは良いのですが、高めに集まりやすい球筋の改善と、いかに武器になる球を作って行けるかではないのでしょうか。


(最後に)

 ボールの勢い・球速はNPB級だと言える素材なので、あとは実戦に即した技術や制球力・変化球などの総合力をいかに引き上げて行けるかだと思います。そういった部分を全般的に引き上げられれば、一軍も見えてくるはずです。課題も多いのですが、素材的には魅力のある選手ではないのでしょうか。楽天の育成力と、本人の細部までの追求が求められることになりそうです。


(2021年 リーグ戦)