21sp-11





小孫 竜ニ(楽天)投手のルーキー回顧へ







小孫 竜ニ(25歳・鷺宮製作所)投手 179/85 右/右 (遊学館-創価大出身) 





 「吉村(東芝)と遜色ない」





 都市対抗本戦では、体調不良のためベンチに入ることができなかった 小孫 竜ニ 。しかし、ベーブ・ルース杯や都市対抗予選でのパフォーマンスなどは、今年の即戦力NO.の呼び声高い 吉村 貢司郎(東芝) と遜色のない内容を魅せている。同じ大卒3年目の吉村が高く評価されるのならば、この 小孫 も同等に評価されても不思議ではないだろう。


(投球内容)

 都市対抗予選では3試合に登板し、18回2/3イニングを投げて 14安 4四死 21三 防 1.48 と、エースとしてチームを都市対抗に導く活躍でした。 

ストレート 常時145キロ前後~最速153キロ ☆☆☆☆ 4.0

 昨年も立ち上がりから150キロ台を連発するなど馬力は際立っていたのですが、抜け球が多かったり高めに集まりやすい球筋で、年齢の割に収まりの悪い投球でした。しかし、昨年12月に行われた都市対抗で、NTT東日本に補強された時のアドバイスにより投球に安定感が出てきたと言われています。

 実際今年の場合、そういった力みは薄れ、ストライクをポンポンと先行させる投球が目立ちました。普段は145キロ前後と力をセーブしつつ、要所で150キロを超えるような球を投げ込む投球スタイルに変わりつつあります。そのため、馬力を維持しつつも安定感は格段に真価した感じがします。またボール自体に力があり、力で押せるのも彼の魅力。吉村(東芝)がキレ型で空振りを誘う一方で、甘く入ると長打を浴びやすい傾向にあるのと違い、そういった不安は感じられません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 体の近くでキュッと曲がる、実戦的なスライダーとのコンビネーション。余裕が出てくると、緩いカーブやフォーク系の球も織り交ぜてきます。また昨年などは、ツーシーム気味の球を右打者内角に食い込ませてきていたのですが、今年の試合ではあまりそういった球は見られませんでした。相変わらずフォークなどの精度・落差がもう一つの印象があり、カウント・コンビネーションという意味では悪くない変化球も、こと空振りを誘うという決め手の部分では、縦の変化を武器にする吉村に比べると物足りなさは残ります。

その他

 牽制は非常に鋭いターンで差しに来る選手で、クィックも1.0秒前後と高速。ベースカバーなども早く、投げる以外の動作にも優れます。細かい出し入れとか、間を意識してという投球スタイルではないように思えますが。

(投球のまとめ)

 制球に安定感が出てきて、制球の不安定さを感じなくなりました。全体的な球速は落ちましたが、要所では150キロ台中盤を出せる馬力は健在で、今年の候補では数少ない、NPBの一軍打者を想定しても力で押せるだけのボールを投げ込んでいました。三振が取れるほどの変化球となると微妙ですが、追い込むまでの変化球は一通りあり、ある程度先発投手としても的を絞らせない配球もできていたのではないのでしょうか。今の内容ならば、一年目から一軍で戦力という部分でもイケるように感じます。


(成績から考える)

今年度の公式戦の成績は、

57回 48安 57三 14失 防 2.21

1,被安打は投球回数の80%以下 △

 被安打率は、84.2% と、数字的には圧倒的ではないことがわかります。このへんは、速球とスライダー中心の配球となり、それなりに的は絞りやすかった恐れがあります。また今回はフォーム分析を致しませんでしたが、昨年の都市対抗予選で作成したレポートでは、「開き」が早く合わされやすいという傾向を、まだ改善できていない恐れがあります。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 残念ながら四死球のデータを持ち合わせていなかったので、都市対抗予選の少ないサンプルを。そのときは、18回2/3イニングで四死球は4個。四死球率は 21.4% であり、ストライク先行の投球に変わり制球の不安定さは解消されているのではないかと。

3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎

 57イニングで57奪三振と、投球回数と同数の奪三振は奪えています。社会人レベルで、右投手が投球回数と同等の奪三振を奪えるというのは、なかなかできることではありません。

4,防御率は1点台 △

 防御率が 2.21 と、けして社会人レベルでは悪い成績ではありません。しかし、他の有力候補との比較では

吉村貢司郎(東芝)  防 1.41
吉野 光樹(トヨタ) 防 1.37
益田 武尚(東ガス) 防 0.86
前田 敬太(日通)  防 1.42
関根 智輝(ENEOS) 防 1.41

やや安定感では劣るのかもしれません。

(成績からわかること)

 四死球率と奪三振率は基準を充分満たすが、被安打率がやや高く、防御率が他の候補に比べると少し劣る数字となっている。本当は小孫は、先発よりも馬力で押せるリリーフ向きなのかもしれないが。


(最後に)

 実際投げているボールは一級品も、やや単調なところがあったり、ストライクゾーンの枠の中では甘く入る傾向は今も残っているのかもしれません。それでも、ストライクをポンポンと先行できる投球になり、観ていての安心感は格段に違ってきているように思えます。ただ、昨年みられた右打者内角に食い込んで来る球が陰を潜めているので、もう少しこれを全面に出して、武器であるスライダーを活かす配球をしても良いのかなと思えます。さすがに1位級だと評価するのは厳しいかもしれませんが、2位~3位のゾーンであれば、かなりお得感のある指名になりうるのではないのでしょうか。今年は、昨年よりもワンランク総合力を引き上げられたと評価したいところです。


蔵の評価:☆☆☆(上位指名級)


(2022年 ベーブ・ルース杯) 









小孫 竜ニ(24歳・鷺宮製作所)投手 179/85 右/右 (遊学館-創価大出身) 
 




 「明らかにパワーアップ」





 創価大時代は140キロ前後ぐらいで、球速面で物足りないものが残った 小孫 竜ニ 。しかし今や、常時145~150キロ台前半を連発する真っ直ぐは、実に力強く変わっている。物足りなかった球威・球速面は、今や完全に払拭されているとみて良いだろう。


(投球内容)

体格もガッチリとしており、堂々としたマウンドさばきになっていました。

ストレート 145キロ前後~MAX151キロ 
☆☆☆★ 3.5

 この夏の都市対抗予選では、立ち上がりから150キロ台を連発。しかし、力みからか? ボール全体が高かった。しかし2イニング目ぐらいからは、力が抜けて球筋も徐々に改善。基本的に真っ直ぐの制球力は、やや抜け球もあってアバウトな印象。空振りを誘うというよりは、勢いのある真っ直ぐを魅せつつ、詰まらせるタイプの球質だといった感じです。

変化球 スライダー・フォーク・ツーシームなど 
☆☆☆★ 3.5

 曲がりながら沈むスライダーのブレーキが良く、この球を中心に変化球は投げ込んできます。他にもチェンジアップような球や、右打者の内角には微妙にシュート、左打者の内角にはカット気味な球を意図的に投げているように見えます。またフォークのような球もあるのですが、見極められてしまい手を出してもらえないことも多いようです。そのため現状は、真っ直ぐとスライダーとのコンビネーションに、微妙に動かす球で打たせて取るピッチングスタイルなのではと。

その他

 非常に鋭いターンの牽制を、執拗に入れてきます。またクィックも、0.95~1.0秒と高速。容易には、なかなか次の塁を狙えません。ベースカバーなどの入りも良く、投球以外の部分はしっかりできています。それほど細かい駆け引きや、微妙な出し入れなどをしてくる感じはないのですが。

(投球のまとめ)

 ボールの力・球速という意味では、今や社会人でも上位の先発投手かと。細かい部分での粗さは残しますが、今ならば指名を意識できるところまで来ている気がします。元々はセンスが勝ったタイプだったのですが、社会人の2年間で課題と向き合い克服して来た姿勢は評価できます。次は、フォームの観点から考えてみたいと思います。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を勢い良く高くまで引き上げて来るリリーフタイプの入り方。軸足の膝から上がピンと伸び切って力みは感じられるのですが、高く足を引き上げることでバランスは適度に保った立ち方になっています。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 お尻の一塁側への落としは甘く、身体への捻り出すスペースとしては充分ではありません。カーブやフォークが投げられないほどではないと思いますが、どうしてもブレーキや落差は鈍りがちかと。

 それ以上に気になるのは、「着地」までの地面の捉えがあっさりとして粘りを感じないこと。したがって身体を捻り出す時間が充分ではなく、キレや曲がりの大きな変化球の修得には適しません。スライダーのキレは悪いとは思いませんが、基本は高速で小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプかと。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドへの投げ訳は安定しやすいかと。しかし足の甲での地面の捉えが少し浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが抜けたり高めに集まりやすい欠点があります。そのため少し力を抜いた140キロ台中盤ぐらいの方が、球筋は低めに集まって制球は安定します。「球持ち」は良く前で放せているので、ある程度ボールは手元で制御できているようには見えます。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークなど捻り出して投げると窮屈になりがち。しかしその頻度は少ないので、そこまで肘への負担が大きいといったことはないと考えます。

 腕の送り出しを見る限り、肩への負担は少ないのでは? しかし、結構な力投派ではあるので、疲労はそれなり溜まるのではないかと。今後登板過多になったり、フォークなどの頻度などが増えてきた時には、注意が必要ではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りが足りず、打者としては比較的タイミングは合わしやすいのでは? さらにボールの出どころもやや見やすそうなので、コースを突いた球が打ち返されたり、縦の変化などを振ってもらえない恐れはあります。それを逆手にとって、微妙に動く球を振らせるというピッチングになっています。

 腕は振れているようで、投げ終わったあと身体に絡んできません。そういった意味では、勢いで打者は吊られ難いのでは? しかしボールにはしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで力のあるボールが投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」は良いものの、「着地」と「開き」に課題があることがわかりました。制球を司る動作では、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい点。故障のリスクは平均的で、将来的に空振りを誘うような変化球の修得よりも、ボールを微妙に動かしたり球威のある球で詰まらせるのが持ち味になると考えます。フォームとしては、良い部分と悪い部分が同居しており、どっちの面がプロで出てくるかでも変わってくるのではないのでしょうか。


(最後に)

 大学・社会人の右投手が不足している今年のドラフトでは、貴重な実力者にランクインされてくるのではないのでしょうか。多少の危うさは感じなくもないのですが、このレベルの選手をスルーするほど人材は豊富ではありません。今の投球ならば、中位ぐらいは充分狙える位置にいるとみて良さそうです。都市対抗予選や本戦でn活躍が、今最も注目される存在ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 都市対抗予選)









小孫 竜ニ(遊学館)投手のレポートへ(無料)