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吉村 貢司郎(24歳・東芝)投手の最新寸評へ







吉村 貢司郎(23歳・東芝)投手の本当に凄いやつへ







吉村 貢司郎(23歳・東芝)投手 183/84 右/右 (日大豊山-国学院大出身)
 




 「覚醒している」





 夏に行われた日本選手権以後、最も短期間で変わったと思われるのが、カープに2位指名された 森 翔平(三菱重工神戸)と、この 吉村 貢司郎 。森が、変化球を多く織り交ぜることで投球の幅を広げることに成功したのに対し、吉村の場合は真っ直ぐの威力が格段に変わっての変化だった。チーム事情や年間を通しての活躍ではなかったことで、指名自体は見送られたものの、恐らく大学・社会人含めても、最もいま総合力で優れた投手だと言えるのではないのだろうか。


(投球内容)

 都市対抗予選の頃から、明らかにボールの勢いが変わっていました。エネオスの補強選手として出場した都市対抗では、日本通運相手に、7回を 3安打 1四死球 7三振 1失点 という内容で、役割を果たします。

ストレート 常時140キロ台後半~MAX153キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 安定して150キロ前後の球速を、先発でも叩き出すことができます。回転数こそ2200回転前後と驚くほどのものはありませんが、キレのある真っ直ぐで多くの三振が奪えるのが特徴。ボール時々甘い球はあるものの、大方に両サイドに散らせてきます。球筋が真ん中~高めのゾーンには集まりがちも、ボール自体のキレが鈍らないので痛打を浴びる機会は少ないのではないのでしょうか。日本選手権の時は左打者への制球が荒かったのが気になったのですが、この都市対抗ではボールを両コーナーに上手く散らすこともできていました。

変化球 カット・スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 140キロ前後のカットボール・130キロぐらいのスライダー、110キロ台のカーブ・140キロ前後のスプリットのようなフォークボールがあるように感じます。全体的に各変化球の球速が、日本選手権の時よりも10キロ程度上がっているような。そのためより、小さな変化の球は真っすぐとの見極めが困難になっていた。またカットボールなどは時々ドキッとするほど甘く入る時があったり、フォークは手を出してもらえないことも少なくはありません。元来は、右打者の外角低めの微妙な出し入れを得意とするタイプです。

その他

 クィックは1.0秒前後と高速。牽制も鋭く上手いのですが、ややベースカバーに入るのが遅れていたのがたまたまだったのかはわかりません。ランナーが出ると、じっくりボールを持って走者や打者をジラす意識は持っています。

(投球のまとめ)

 元々MAXで出ていたような球速が、安定して出せるようになったのが大きいかと。その一方で、変化球を振ってもらえなかったり、球速の割には合わされやすいフォームなどの欠点は抱えているように思えます。それでも、この勢いを年間を通して維持できるのであれば、社会人3年目でも上位指名を狙える内容なのは間違いないのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 セットポジションから、反動をつけて高い位置まで勢いよく引き上げてきます。また、軸足の膝がピンと伸び切ることなく、力み無く立てているところは好いところ。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落とすには甘さがあり、充分に体を捻り出すスペースが確保できているとは言えません。したがってカーブやフォークなどが投げられないことはないと思いますが、しっかり変化するのかは微妙です。

 また「着地」までの地面の捉えも並なので、体を捻り出す時間も平均的。曲がりの大きな変化球を習得できるかは疑問で、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプなのかもしれません。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ分けは安定しやすい。その一方で、足の甲での地面の捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが高めに集まりやすい傾向にあります。「球持ち」が良いことで、ボールが抜けるようなことは防ぐことはできていますが。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほどではありません。縦系の球種の頻度はやや多いものの、極端に依存しているわけでもないので、現時点ではそこまで気にしなくても良いのかもしれません。

 腕の送り出しには無理は感じず、肩への負担は少なそう。それほど力投派ということもないとは思うが、出力が急激に上がった負荷は少なくないだけに、体へのケアは充分に気をつけて頂きたい。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが平凡な上に、ボールの出どころもやや早く見えてくる。そのため打者としては、比較的合わせやすいフォームではあると言えます。したがって少しでも勢いが鈍ったりとか、甘く入ると痛打を浴びやすいとも言えます。また縦の変化球を、見極められることが多いのも、このフォームの影響が大きいのかと。

 腕は強く振られていて勢いはあるものの、ボールが見やすいことで打者が吊られ難いのは残念。「球持ち」が良いことで、ある程度体重を乗せてからリリースできています。それにより、打者の手元までのボールの勢いは悪く有りません。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に課題を感じます。「着地」までがもう少し粘れるようになると、「開き」も必然的に遅れて来るでしょう。故障のリスク・制球を司る動作はそこまで悪く有りませんが、将来的に武器になるほどの変化球が習得できるのか?と言われると、今のフォームだと厳しい感じ。真っ直ぐを魅せておいての、球速のある小さな変化で芯を外してゆくスタイルになるかもしれません。


(最後に)

 短期間の間に、何かを掴んだのか? 安定して5キロ前後速くなっています。このパフォーマンスを、年間を通してできれば、今年は上位指名でプロに行けるだけの内容だと言えるでしょう。1位を確実にするためには、さらなる実戦力に磨きがかけられるのか、注視して1年間見守って行きたい存在です。


(2021年 都市対抗)