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廣畑 敦也(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







廣畑 敦也(24歳・三菱自動車倉敷オーシャンズ)投手 177/75 右/右 (玉野光南-帝京大出身) 
 




「リリーフなら」 





 中背の体格なので、どうしても先発だとあまり見栄えがしない 廣畑 敦也 。やはりプロで活躍とすれば、先発よりリリーフなのではないかという思いを強くした。


(投球内容)

 今シーズンは、春先の阪神との交流戦、スポニチ大会、そして今回の日本選手権と3度目の観戦となる。日本選手権では、7回を投げ 7安打 5死球 8三振・3失点 。 グランドコンデションが悪い中、粘り強く試合は作れていた。

ストレート 常時140キロ前後~MAX153キロ ☆☆☆☆ 4.0

 回転の好い真っ直ぐ、ビシッとミットに突き刺さる感じの真っ直ぐです。先発だと常時140キロ前後~中盤ぐらいでしたが、スポニチ大会でみたリリーフでは常時150キロ前後で最速153キロを記録していました。ボールの質自体は良いのですが、上背がないせいか? それほど見栄えがしません。特に阪神とのプロアマ交流戦では、二軍の打者に気持ち良く振り抜かれていた点は正直気になりました。

 右打者への制球力には非常に優れる反面、左打者に対しては制球を乱す傾向があります。特に左打者からはボールが見やすいのか? 甘い球が多いなのか? わかりませんが、打たれたり四球を与えることが多いように感じます。左打者への投球が、今後の課題だと言えるでしょう。

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・スプリット? ☆☆☆ 3.0

 130キロ台後半の、小さくズレるカットボールでカウントを整えてきます。その他にも130キロ前後のスライダーも投げるのですが、その頻度は少ないように感じます。その他チェンジアップ的な小さく沈む球もありますが、他にもストンと沈むスプリット系の球も別にあるような感じはします。たまに、カーブのような緩い球も投げることがあります。

 球種は多彩にあるように感じますが、カウントを整えることはできるものの、絶対的な変化球はないように感じます。そのためストレートで押せるリリーフではないと、プロレベルだと平凡なピッチングになってしまう印象はあります。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒とまずまずで、走者もしっかり観て落ち着いて投げられています。また牽制も適度に鋭いですし、フィールディングも積極的に処理にゆくなど、ある程度自信を持っているのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 先発投手としても、ある程度ゲームメイクできる能力はありますし、そういったセンスがない選手ではありません。ただし、上記にも記したように、プロの先発投手としてはあまり見栄えがしないように感じるのは気になるところ。こういったタイプは、リリーフである程度出力を上げて投げないと厳しいように感じます。そのへんは、アマチュア時代の 山崎 康晃(DeNA)と見た時と似た感覚に陥ります。


(成績から考える)

 今シーズンの成績は、ここまでの公式戦で 

32回 28安 10四死 30三振 防 2.25

社会人野球の上位レベルは、プロの二軍と大差ないので、ファクターはファームの時に使うものを採用したいと思います。

1,被安打は投球回数の80%以下 △

 被安打率は87.5% と悪い数字ではないが、圧倒的とは言えない。このへんは、先発をすると中背でボールが見栄えしなくなるとか、左打者からは合わされやすいなどの印象どおりだった。より打力の上がるプロの一軍レベルだと、この傾向はもっと顕著になるのではないのだろうか。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ○

 四死球率は、31.3% と、基準を満たしている。ただし、ファクターギリギリであり、より狭いプロのストライクゾーンや打力の上がるプロの打者相手だと、この通りの四死球率とはゆかないように思える。右打者への制球には高いものがある一方で、左打者への制球を乱す傾向が強いのは、改善してゆかなければ行けないポイントだろう。

3,奪三振は1イニングあたり 0.8個以上 ○

 1イニングあたりの奪三振は、0.94個。これは、先発投手の基準どころかリリーフ投手の基準もクリアできている。ただし、この数字も圧倒的なものではない。ストレートの質が良く空振りを誘えたりはするが、変化球に絶対的なものがないのは気になるところ。今後、縦の変化球などに磨きがかからないと、プロの打者相手には力で押し切るような感じにしないと苦しくなるのではないのでしょうか。

4,防御率は2.50以内 ○

 大学野球や独立と違い、社会人の場合防御率は2点台、それも 2.25 前半であれば合格点でしょう。そういった安定感はあるのが、この選手の良いところではないのでしょうか。

(成績からわかること)

 ファクターは大方満たしているのですが、数字が絶対的ではありません。このへんは、先発した時に感じさせる物足りなさに繋がっているのではないのでしょうか。やはり先発だと5勝できればといった感じで、むしろリリーフでこそ即戦力として活躍できるのではないかという思いを強くした。


(最後に)

この投手に近いイメージを持っているのが、森 唯人(ソフトバンク)投手。そのため即戦力として活躍するのであれば、出力を高めた投球で押せるリリーフだとみている。体格から来る球筋の平面さと、投球の奥行きの無さは、リリーフで150キロ前後投げると違和感が薄まる。リリーフとしては、それほどコントロールも悪くないし、マウンド度胸にも優れている。もう少し縦の変化にも磨きがかかれば、1年目からセットアッパーなど勝利の方程式に加わって来られるような活躍も期待できるかもしれない。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2021年 日本選手権)










廣畑 敦也(23歳・三菱自動車倉敷オーシャンズ)投手 177/75 右/右 (玉野光南-帝京大出身) 
 




 「完成度は高い」





 帝京大時代から140キロ台中盤の勢いあるボールを投げ込んでいた 廣畑 敦也 。しかし、社会人に入りさらにパワーアップして、150キロ台を連発するまでになった。都市対抗では、前年度の優勝チーム・JFE東日本の強力打線相手に、9回を投げて7安打・1失点に抑え込んで一躍その名が知られる存在となった。


(投球内容)

 中背の体格から投げ込むスリークォーターで、けしてスケール感あふれる素材ではありません。むしろ、実戦的な投手としてプロでも即戦力を期待したくなるタイプかと思います。

ストレート 145~154キロ ☆☆☆☆ 4.0

 立ち上がりから捕手が内角の厳しいところを要求するように、内外角にボールを散らす確かな制球力があります。球速も140キロ台後半~力を入れると150キロを越えてきて、回転の良い球質で空振りも誘えます。低めに集まるというよりも、真ん中~高めに集まりやすい球筋なものの、そこで空振りを奪ったりコーナー一杯に決めて見逃しを奪うタイプでしょうか。

変化球 スライダ・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 140キロ弱の小さく変化するカットボールのようなスライダーで、カウントを整えてきます。時々110キロ台のカーブを混ぜて、相手の的を絞らせません。その他にも縦に割れるスライダーとフォークのような沈む球があります。これらは、空振りを誘うというよりも、低めを意識させるという意味合いが強いようです。変化球ではカウントを整えられますが、空振りを誘えるほどの球はないように感じます。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒ぐらいとまずまず。牽制は、適度に鋭いものを入れてきます。フィールディングに関してはよくわかりませんでしたが、投球のリズムを変えるとか間を意識してという投球術はないように思います。あくまでも両サイドを広く使った、コーナーワークを活かした投球が得意といった感じです。

(投球のまとめ)

 150キロ台の質の良い真っ直ぐは投げ込んできますが、凄みのある素材といった感じは致しません。それでも単調になりそうなところを、カーブを良いタイミングで入れたり縦の変化なども使って防ぐことができています。何より、制球力がかなり安定しているところが大きいかと。それも外角への出し入れだけでなく、内角をかなり厳しく突ける度胸があります。本人も緊張しないタイプだと言うように、ハートの強さも彼の魅力なのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 セットポジションから、勢い良く足を引き上げてきます。軸足一本で立ったときにも、バランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としには甘さを残します。そのためカーブやフォークといった球種を投げられないことはありませんが、曲がりが鈍くなりがちだったり、窮屈になって多少身体に負担が生じる可能性があります。

 「着地」までの粘りを観ていても平均的で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。そのため曲がりの大きな変化球の習得は厳しく、スライダー・チェンジアップなどの速球に近い腕の振りの変化球や手元で小さく動かす球速のある変化でピッチングの幅を広げてゆくことになりそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって軸がブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすい傾向にあります。一方で、足の甲の押しつけも深く地面を捉えています。ただし、膝小僧が地面に付くほど深く沈み過ぎているので、何処まで高めに浮こうとしているのを防げているのは懐疑的です。

 また球筋が真ん中~高めに多いのは、スリークォーターの腕の振りなのも影響しているかもしれません。それほど「球持ち」が良いという感じでもないので、押し込めていない可能性もあります。あと顔と腕の角度が開き過ぎているのですが、その割にコントロールは安定している珍しいタイプかと。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としが甘い割に、カーブやフォークなどを結構使ってはきます。悲観するほど窮屈さは感じませんが、多少なりとも肘への負担は意識しておいた方がいいかも。

 腕の送り出しも、スリークォーターの角度の割にはスムーズさに欠ける感じはします。それでも、さほど力投派ではないので、疲労は溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りやボールの出どころの見やすさは平均的で、特に打者としては苦になるフォームではないでしょう。そのぶん高い精度のコントロールや、多彩な球種で的を絞らせないという配球が功を奏している気がします。

 振り下ろす腕も、投げ終わったあとあまり身体に絡んできません。こうなると、打者の空振りが誘い難い感じがします。それでも回転の良いボールの質で、空振りを奪ってくる印象。ボールへの体重の乗せも、重心が深く沈み過ぎてしまって、前への体重移動はさほど良いようには思えません。ある意味このメカニズムで、これだけのボールを投げていることは凄いようにも思えます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端には悪くないものの特別良い部分もありません。ある意味、まだ伸び代を残しているとも捉えられます。制球を司る動作はまずまずで、故障のリスクもさほど高いと思いませんが、将来的に武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙です。そういった意味では、フォームに関してはさほど実戦的といった投手ではないのではないかと。


(最後に)

 彼の良いところは、これだけのストレートを投げ込む割に制球力が高いこと。そして、一見単調に陥りやすそうなタイプに見えるですが、上手く的を絞らせない配球ができていること。何より、大舞台でも試合を楽しめるハートの強さにあるのではないのでしょうか。

 今のところ順調にこの一年を過ごせた場合、2位前後ぐらいの評価になるのではないかとみています。さらに能力を引き上げられるようだと、上位12名の中に入ってこられる存在になるかもしれません。いずれにしても、今後の伸び代よりも即戦力を当てにしてという評価になるのではないのでしょうか。


(2020年 都市対抗)