21ky-7





中田 達也(星稜2年)中堅 178/77 右/左 





 「ハードパンチャー」





 まるでゴルフの打ちっぱなしのように、下からしゃくりあげるようなスイングで目を惹くのが、この 中田 達也。それでもそのはずで、中学時代はゴルファーとして将来を嘱望されていた逸材だったそうだが、野球を選択したという変わり種。

(守備・走塁面)

 残念ながら正確な一塁までの到達タイムは計測できていないが、2年秋の公式戦では10試合で2盗塁とけして動けない選手ではない。現に守備では、下級生ながら中堅を任されており、キャッチング・打球判断などもまずまず。外野からの返球も強く、地肩はかなり強い。少なくても、走力・守備・地肩 などは、中 ~ 中の上 ぐらいはあるみて良いのではないのだろうか。





(打撃内容)

 強振してくる選手ではあるが、けして脆い選手ではない。2年秋の成績では、2本塁打 打率.442厘 を記録。甲子園の交流戦では、履正社相手にライトの犠牲フライなど、打席での内容は光っていた。火の出るような強烈な打球を放つ一方で、レフト方向にも強くはじき返す幅を持っている。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を少しだけ引いて、ベース側にあらかじめつま先立ちして構える珍しいスタイル。グリップは高めに添えつつ、腰の据わり・全体のバランスは並ぐらい。少し癖のある構えではあるが、両眼ではしっかり前を見据え、錯覚を起こし難い立ち方となっている。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がるときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けです。バリバリの強打者でありながら、脆さが感じられないのはこの辺に要因があるのではと。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足を上げて回し込み、ベース側にインステップしたりアウトステップしたりと、さばくコースによって踏み込む位置は自在にコントロールできている。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化にも幅広く対応できる。

 踏み込んだ前の足もしっかり止まっており、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができている。踏み込みが自在なので、右にも左にも強い打球を放つことができている。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めているところは良いところ。特に「トップ」が非常に深くして呼び込むので、弓矢の弓を強く引くが如く強烈な打球を生み出せます。気になるのは、バットを引くのが遅れがちなので、速い球に振り遅れやすいのではないかと。

 バッとの振り出しは、上から振り出すのでボールを捉えるまでのロスが少ないこと、。その後バットをボールの下に潜り込ませ、すくいあげるようなスイング。打ち損じも多いのでしょうが、打球に角度をつけて飛ばすことができます。高校生で、こういったスイングをする選手は少ないのですが、このへんはゴルフをやってきた名残りもあるのかもしれません。強烈なヘッドスピード誇り、打球のすさまじさは、今年の高校生でも一番ではないかと。インパクト後は、大きな弧を描きつつ、フォロースルーを生かして打球を遠くにかっ飛ばします。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあるのですが、目線の動きは小さく安定。身体の開きも我慢できており、前の足に大きく重心をかけるので、後ろの軸足で踏ん張るというスイングではありません。そのため軸足はスイング後、地面から浮きがちで遊びがちですが、前さばきの左打者なので、それもありなのかなと思います。

(打撃のまとめ)

 かなり個性的で癖のあるスイングではあるのですが、ボールを呼び込むときには独特の「間」がありますし、スイング自体は相当なハードパンチャー。それでいて、当て勘も悪くないという感じです。右と左の違いもありますしスイングメカニズムも全然違いますが、濱田 太貴(明豊-ヤクルト)を見たときの衝撃に近いものがあります。比較的似たタイプをプロで探すのであれば、梶谷 隆幸(DeNA-巨人)を、更に強烈な打球を放つ色彩を強めた感じでしょうか。


(最後に)

 守備力も走力もそれなりにありそうですし、スイングのインパクトという意味では、今年の候補でも屈指の存在。高校球界では、阪口(岐阜第一)・前川(智弁学園)・徳丸(智弁和歌山)などが現時点では先行する形ですが、個人的には、この選手が一番気になる存在となっています。ぜひ春季大会では、生で見てみたい一人です。


(2020年 甲子園交流戦)