21ky-26





小森 航太郎(ヤクルト)内野手のルーキー回顧へ







小森 航大郎(宇部工業3年)遊撃 172/83 右/右 





 「よくわからないが凄い」





 この夏の模様をかいつまむように確認していた 小森 航大郎 。何かとても惹きつけられるものを持った選手で、この夏は見るたびにヒットを打っていた気はする。実際この夏は3回戦で敗れたが、11打数10安打 1本塁打・3三塁打 打率.909厘 という驚異的な成績だった。


(守備・走塁面)

 瞬発力の塊といった感じで、実にスピードのある走塁をする。特に二塁打・三塁打での加速も素晴らしく、正確なタイムは計測できていなくても、明らかに速いことは間違いない。ただし、これだけ出塁して夏は1盗塁だったことを考えると、盗塁センスという意味ではどうなのかな?といった感じはした。打席では、セーフティバントをするふりをして、相手を揺さぶったりもするのだが。

 残念ながら一番わからなかったのは、守備の部分。間違いなくただ者ではない動きはしているのだが、安定感という意味ではどうなのだろうか? 軽快かつ強肩で守備の評価も悪くない。いずれにしても、プレーの安定感はともかく身体能力が極めて高いのは間違い無さそうだ。


(打撃内容)

 とにかく、思いっきりバットを振ってきます。打席での映像では、審判の陰になって見えづらいところもあり、わからなかった部分も多かったのですが。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは平均的な高さ。腰の据わり具合、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢も悪くないように見えます。バットをかなり動かし揺らいでいますが、打席での集中力などもかなり高いのではないのでしょうか。

<仕掛け> 遅め~遅すぎ

 投手の重心が下がって、前に移動する段階~リリース直前あたりに動き出しているように見えます。始動としては、「遅め」~「遅すぎ」ぐらいのタイミングだと思いますが、ちょっとその辺がどうなのかははっきりわかりませんでした。

<足の運び> ☆☆★ 2.5

 足を小さくステップさせ、真っ直ぐ踏み出しているように見えます。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞りその球を逃さず叩くことが求められます。ただし、甘い球を逃さない「鋭さ」はある選手なので、こういった打撃でも結果を残せるのではないのでしょうか。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも打ってやろうというスタイルのように見えます。

 踏み込んだ前の足が、早く地面から離れているように見えます。そのため逃げてゆく球や低めの球への対応はどうでしょうか? 見ていると、引っ張りたいタイプなのだと感じられました。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 始動は遅くても打撃の準備である「トップ」を作るのは遅くないので、速い球に立ち遅れる心配はあまりないかも。バットの振り出しは、けしてインサイドアウトに出てくる感じではなく、少し遠回りに出てきているように見えました。それでも腕を上手くたためているので、むしろ腕が伸びたところを強く叩けるのかの方が心配です。

 しかし、思いっきりバットを振ってくる選手ですし、スイングの弧かなり大きなスイング。振りはシャープですが、しっかり捉えた打球は長打に結びつきたいパンチの効いた打撃ができていました。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動はほとんどありません。インパクトの際に踏み込んだ足が早く地面から離れてしまうので、開きという意味では心配です。それでもスイングの際に軸足が地面から真っ直ぐ伸びて、軸回転でスイングできています。また軸足にも強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 始動の遅さ・足元の止まらないこと、また打球の方向もセンターから引っ張り中心に感じられ、スイング軌道にも少しロスを感じられます。そのため打てる球は限られているので、確実性という意味ではどうなのか?と思えるスイングです。それでも夏の大会では、11打数10安打と爆発力は驚異的。敗れた宇部鴻城は、甲子園出場を何度もしている強豪です。その試合でも3安打・2打点の活躍で、単にレベルが低い相手を打ってきたわけではありません。


(最後に)

 大会前から、山口では最もプロ注だということで注目していました。5球団が視察に訪れた試合があるように、担当スカウトの間では知られた存在だったのでしょう。評価するほど充分な観戦ができていないので評価はできませんが、下位~育成指名 あたりならば充分にありうるのではないのでしょうか。本人も、プロ志望届の提出に前向きのようなので。この夏見た選手の中でも、最もエネルギッシュで何か惹きつけてくれるものを持った印象的な選手でした。


(2021年夏 山口大会)