藤野恵音（戸畑３年）遊撃　１８１／７７　右／右

「走力は超絶」

　夏の大会に向けて福岡では密かに話題になっていた　藤野恵音　。三拍子揃った好選手と評判だったが、特に目を惹いたのは走力だった。

走塁面：☆☆☆☆★　4.5

　ピッチャー返しでしっかり振り抜いた時の一塁到達タイムは、右打席から３．９秒前後。これを左打者換算にすると、３．７５秒前後に相当する。これは、毎年多くの候補を追いかけていても、一年に一人いるかいないかのタイムである。それも１８０センチ台の体格であることを加味すれば、極めて稀少性は高い。走塁技術はまだこれからという部分もあるのだろうが、次の塁を陥れる意識も高い。プロに混ぜても、間違いなく走力を売りにして行けるレベルではないのだろうか。

守備面：☆☆☆★　3.5

　180センチ台の大型内野手には思えない軽快さとスピード感があり、キャッチング・フットワークに関しては充分に指名級だと評価できる。ただしドラフト候補のショートとしては肩が平凡で、送球が乱れることが少なくない。そのへんが将来的にも心配で、スローイングの不安定さから二塁など任される守備位置が変わってしまう恐れも否定できない。

　走塁は文句なし、守備も送球の不安定さは気になるものの、動きの良さからも基準以上であると評価したい。

（打撃内容）

　気になるのは、チームの一番を担う打撃の方だろうか。この夏は、5試合　18打数4安打　打率.222厘　と、試合を見ていてもドラフト候補にしてはやや弱さを感じる。基本的にセンターからレフト方向への打球が多く、快速ではあるがゴロよりもライナーやフライが多い。

＜構え＞　☆☆☆★　3.5

　前の足をかなり引いて、グリップを高めに添えます。腰は深めに座り、両眼でしっかり前を見据えています。ただし、少し癖のある構えではあります。

＜仕掛け＞　早め

　投手の重心が沈み始めると、足を大きく引き上げ動き出す「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターによく見られる仕掛けです。

＜足の運び＞　☆☆☆　3.0

　足をしっかり引き上げて、ベース側に踏み込んできます。始動～着地までの「間」は充分あるのですが、タイミングを図って来るというよりも大きなアクションでも間にあうように早めに動き出している感じで、それほど対応力は高くないように感じます。

　ベース側にしっかり踏み込んで来るインステップのため、外角への意識が強い選手。それでいて踏み込んだ足元は早く地面を離れ、引っ張り中心の打撃だと言えます。すなわち逃げてゆく球や低めの球には強くなく、甘めの外角球や真ん中近辺の球を逃さず叩くといったタイプなのでしょう。踏み込む分、内角も窮屈になりやすいでしょうから。どうしても、さばける範囲は狭い気がします。

＜リストワーク＞　☆☆★　2.5

　ボールを呼び込む際に、多少グップがヒッチします。まぁそれ自体はそこまで気にするほどではないのかもしれませんが、ボールを呼び込む時にバットの先端が投手側に倒れて打ちにゆくので、どうしてもインパクトまで遠回りにバットが軌道してしまう。それが余計に、確実性を損ねている要因かと。

　それでも上からバットを振り下ろし、インパクトの際にはバットのヘッドは下がっていません。「トップ」を作る時のバットの傾きを修正すれば、比較的容易に改善はできるかもしれません。インパクトの際に広い面ではボールを捉えられているので、フェアゾーンにはボールは飛びやすいのではないのでしょうか。スイングの鋭さ・力強さに関しては、そこまでひ弱くは感じないのですが。

＜軸＞　☆☆　2.0

　インステップで踏み込むせいか？　自分からボールにぶつかりゆくようなスイングです。そのため、身体とボールとの距離感が掴めず、上手くさばけないことも少なくないのでは？　そうかといって身体の開きも我慢できていませんし、軸足もスイングの時に形が崩れてしまうなど、ボールを呼び込んで叩くということができていないように見えます。

（打撃のまとめ）

　下半身の使い方・上半身の使い方、いずれにも課題がある癖の強いスイングです。それだけに、プロでもこの点が大きななネックになって時間がかかるのではないかと考えられます。正直打撃に関しては、まだ指名レベルとは評価できませんでした。これを改善して行けるのかが、一つ大きなポイントになります。

（最後に）

　通常、守備や走力が良くても打撃が水準を満たしていないと評価しないのですが、ここまで走力が突出しているのであれば私はありだと思います。評価的には、やはり下位～育成あたりになるとは思いますが、打撃の欠点を改善できると考える球団ならば指名してきても不思議ではありません。タイム的には、今年の候補の中でも屈指の脚力の持ち主ではないのでしょうか。

蔵の評価：☆　（下位指名級）

（２０２１年夏　福岡大会）