21ky-15
前川 右京(智弁学園3年)左翼 177/90 左/左 | |
どうしても結果を残そうと、打席で力んでしまっていた 前川 右京 。選抜では10打数2安打と結果を残せなかったが、以後の大会では一番打者を務めるなどして、チームバッティングを心がけ、本来の打撃を取り戻すことに成功した。 走塁面:☆☆★ 2.5 一塁までの到達タイムは、左打席から4.15秒前後。これはけして遅いタイムではないが、それほど足を売りにするタイプではない。夏の奈良大会では、5試合で3盗塁を決めている。しかし、甲子園では通算で11試合に出場しているが、盗塁は0個。それだけ、プレッシャーのかかる場面では走れないということだろう。そのため、プロに混ぜた場合の走力は、中 ~ 中の下 ぐらいに捉えておくべきではないのだろうか。 守備面:☆☆★ 2.5 最後の夏は、左翼手として出場。打球勘や落下点までの追い方をみていると、危なっかしく見えて上手くない。ただし、ライトも守っていたように、肩自体はけして弱くない。こちらは、中 ~ 中の上 ぐらいはあるとみて好いだろう。プロの左翼手は、相当下手の選手も多いので、前川ぐらいの走力や肩があれば、無難に守れるようになれれば上手い部類のレフトになっても不思議ではないだろう。ただし現時点では、純粋にドラフト指名された外野手と見た場合は、現状 平均以下 の守備力ではないのだろうか。 (打撃内容) 3年夏の奈良大会では、打率.643厘と一番打者として活躍。甲子園では3番に戻り、打率.455厘 2本 7点 と活躍し、チームの決勝進出に貢献した。やはりこの選手は、打撃が持ち味の選手だと言えよう。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前の足をしっかり引いた左オープンスタンスで、前の足のカカトを浮かせて構えている。グリップを下げてリラックスしようと心がけ、腰の据わり具合や両眼で前を見据える姿勢は好い感じ。全体のバランスとしては並ぐらいだが、打席では独特の大物感を醸し出している。 打席では今でも力みが感じられないわけではないが、ファールを打つことで徐々にタイミングを合わせ行ける術を身につけてきた。春との一番の違いは、構えの形ではなく、そういった打席の中での気持ちの持ちようが変わってきて、ヒットでも良いのだという割り切りができるようになったことではないのだろうか。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下る時に、足を大きく引き上げて来る「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視したスタイルではあるが、ステップを小さくして対応するようなこともあり、結構いろいろなタイミングのとり方を使い分けて来る引き出しを持っている。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を大きく引き上げて回し込み、ベースから若干離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動から着地までの「間」は取れていて、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすい。ただし、タイミングを上手く合わせるという側面よりも、大きなアクションでもスイングが成立するように、早めに動き出している意味合いが強い。 アウトステップ気味に踏み込むように、やや内角寄りに意識がありそうだ。それでも踏み込んだ足元は、インパクトの際にしっかり止まっており、アウトステップでも甘めの外角球や高めの球には充分対応できるのではないのだろうか。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を早めに作れており、速い球には立ち遅れないようにしている。バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではないものの、インパクトまでに大きなロスは感じられない。 インパクトの際にもヘッドは下がっておらず、広い面でボールを捉えられている。それだけ広い面でボールを捉えられ、フェアゾーンにボールが飛びやすい。それでも大きな弧をを描きつつ、強烈なヘッドスピードで打球を飛ばしてくる。ただし、ボールに角度をつけて飛ばすタイプではないので、長打は上手く引っ張って巻き込めた時なのではないのだろうか。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げはあるものの、目線は大きく動いていない。体の開きも我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定している。何より内モモの筋肉が発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっている。 (打撃のまとめ) 春の課題であった、「トップ」を作るのが遅れるという欠点は改善されていました。軸足の不安定感も解消されていましたが、大きくスイングをいじったというよりも、ヒットでも好いのだという割り切りができるようになった精神的な部分が大きいのでは? 始動のタイミングを、相手や状況に応じて使い分けるなど引き出しの多い選手です。また、ファールをする中でタイミングを修正して、ヒットに繋げられる修正力にも目を惹くものがあります。特にこの選手は、点ではなく線でボールを追えるタイプ。そのため、生粋のスラッガーというよりも 中距離打者や中長距離打者 といった範疇の選手かもしれません。 (最後に) 守備・走塁に光るものはありませんが、打撃には好いものを持っています。また、苦しんだぶんいろいろ考え、自分の打撃と向き合ってきた経験は、今後に生きそうです。それだけ悪い時に、そこから抜け出せる引き出しが増えました。春から評価付けは変えませんが、着実に選抜の時に比べると良くなっているのではないのでしょうか。ぜひ将来は、阪神のレギュラーの一角を奪って欲しい1人です。あの打席での只者ではない雰囲気が、本物になる日を夢見て。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2021年夏 甲子園) |
前川 右京(智弁学園3年)左翼 177/88 左/左 | |
注目された選抜大会では、10打数2安打と結果を残せたとは言えない 前川 右京 。それでも結果を残したいと打ち気に逸りそうなところをグッと我慢できる忍耐力、臭いところ見逃せる「眼」の良さは、今大会の打者の中でも異彩を放っていた。 走塁面:☆☆★ 2.5 一塁までの駆け抜けタイムは、左打席から4.25秒前後のことが多い。これはドラフト指名されるような左打者のタイムとしては、 中の下 ぐらいであり、けして足を売りにする選手ではないことがわかる。それでも、最後まで勢いを緩めないで走り抜けようとする姿勢には好感が持てる。 守備面:☆☆★ 2.5 秋はライトを守っていたが、この選抜ではレフトを担っていました。打球への反応・追い方などを観ていると、やや危なっかしく、けして上手い外野手には見えません。ただし、地肩は結構強い選手です。このへんは、プロに混ぜても 中~中の上 ぐらいはありそう。あまりスローイングの形が良くないので、送球が乱れることは結構あるかもしれません。 守備・走塁ともに、ドラフト候補としては 中の下 ぐらいの能力だと思います。ただし、プロの左翼は打力重視でかなりレベルが低いので、彼が将来レフトを担うのであれば、基準クラスの左翼手になれる資質はあるのではないかと。また走力や守備への意識も、けして手を抜くとかそういったプレーヤーではありません。ただし、センターやライトとなると、物足りない選手ではあります。 (打撃内容) 責任感が強すぎるのか? 打席で力んで能力を出しきれていないように感じます。このへんの力の入れ加減と抜き加減を覚えられると、全然変わって来るのではないのでしょうか? そんなに力を入れなくても、充分にスタンドインできる力は持っているので。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前の足をしっかり引いた左オープンスタンスで、グリップはやや下げて構えます。腰はしっかり据わり、両眼でもしっかり前を見据えられています。全体のバランスとしては並なのと、力が打席でも入り過ぎていて力みが感じられるのは気になります。こうなると、打球も引っ掛けたり、上がり難くなってしまいます。 <仕掛け> 遅め 投手の重心が沈む時に、一度ベース側につま先立ちします。そこから再度動き出すのが、「遅めの仕掛け」の段階。そういった意味では、天性の長距離打者の可能性を秘めているのかもしれない。このように一度つま先立ちする打ち方でも、次の始動が遅すぎないところは評価ができます。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 小さくステップして、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」は短く、狙い球を絞りその球を逃さず仕留めることが求められます。アウトステップを採用するように、内角を意識したスタイルです。 踏み込んだ前の足は止まってブレず、アウトステップでも甘めの外角球や高めの外角球ならば対応できるのでは? 基本的には、引っ張って本塁打することが圧倒的に多いプルヒッター。監督曰く、飛距離だけで言えば 岡本 和真(巨人)以上のものを持っていると言います。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を作るのが、遅れがちになるのが気になります。バットの振り出しを観ていると、けして遠回りに出てロスがあるわけではないのですが、内からバットが出てくるようなインサイドアウトのスイング軌道でもありません。ゆえにバットのしなりを生かして飛ばせる代わり、内角の球をさばくにはある程度スペースが必要であり、そのためにもアウトステップをすることで内角の空間を作っていると考えられます。 インパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がらず。広い面でボールを捉えられ、打ち損じは少ないタイプかと。ただし、ボールに角度をつけて飛ばせるのは、引っ張った時の打球が多いのではないのでしょうか。けしてフォロースルーを使って打球を運ぶという感じではなく、流す時は特に大きな弧を描くスイングで強烈で打球はあまり上がらないのかもしれません。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動は小さい。身体の開きも我慢できているが、気になるのは軸足が前に傾いてスイングしているということ。それだけ身体が前に出されてしまい、ツッコミがちだということ。それでも軸足の内モモの筋肉は、極めて発達していることがわかる。これは、強烈な打球や飛距離を生み出す大きな原動力になっているはず。 (打撃のまとめ) 始動の遅さからくるタイミングのとり方、トップの形成の遅れ、身体のツッコミなどを観ていると、好調を維持するのは難しいスイングをしているなといった印象を受けた。自分なりにチェックポイントを決めて取り組んでゆかないと、なかなか安定した成績は望み難いのかと。 その一方で、「遅めの仕掛け」を採用していること。軸足の内モモの筋肉が尋常じゃなく発達していることなどを考えると、将来的に飛距離を売りにする打者になれる可能性を秘めています。あとは、流してでもボールに角度が付けられるようになるとか、フォロースルーなどを使ってボールを運ぶなどの技術が身につくと、プロでも中長距離打者や長距離打者という位置づけになれるかと。 (最後に) あくまでも打撃重視型の左の外野手であることを考えると、よっぽどのことがない限り上位は厳しいのではないかと。それでもうまく存在感を夏に向けてアピールできれば、中位(3位~5位)ぐらいでの指名は充分期待できるのではないのでしょうか。これだけ非凡な打力と精神面ではプロ向きとみているので、プロ志望届けを提出すれば本会議での中では指名される選手だと思います。夏までに、さらなる進化を遂げ凄みを増したところをみてみたいものです。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2021年 選抜大会) |