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松川 虎生(ロッテ)捕手のルーキー回顧へ







松川 虎生(市立和歌山3年)捕手 178/98 右/右 





 「打てる捕手」





 全国の高校生捕手の中でも、その打撃能力はNO.1ではないかと思われる 松川 虎生 。その一方で、プロで信頼される捕手としてやってゆくのには、いろいろ気になる部分が多かった選抜大会。あれから4ヶ月あまり、夏の大会では何処まで変わってきていたのか検証してみた。


(ディフェンス面)

 気がついたことがあると、ゼスチャーやマウンドに駆け寄り伝えることができる捕手です。そういった部分は、長年バッテリーを組み、小園健太(DeNA)を知り尽くした選手といった気がしましたし、何かいつもと違うことを感じ取る姿勢も感じられます。

 大きな身体でデ~ンと構えるので、投手としては安心感を覚えるのでは? ミットをしっかり示し下げないので、投手としては的をつけやすいのではないかと。ワンバウンドするような球に対し、上から捕りにゆくのが目立った選抜に比べると、素早く下からミットが出せるようになっており、このへんは選抜後相当練習して身についてきたのでは? 雑に見えたキャッチングや投手への返球が乱れる点も、この夏はあまり気にならなくなってきました

 それでもまだ、ランナーがいる時でも座ったまま返球するなど雑な面はあります。焦って送球を乱すことはあったのは、落ち着いて送球はできるようになってきたのかと。ただし、送球する際に腕が横振りなので、捕る方としては曲がって捕りにくい可能性があります。大方1.85~1.90秒ぐらいで二塁まで送球でき、地肩時点もプロに混ぜても見劣るほどは弱くはありません。特にこの体格で鈍く観られがちですが、打球への反応やとっさの判断力などは素早く、リードのセンスも悪くないようには思えます。根本的に大雑把な性格なのかもしれないので、今後プロの指導や環境でいかに捕手らしさを身につけられるかではないのでしょうか? 春に比べると、捕手としての成長は感じられた夏ではありました。


(打撃内容)

 本塁打は引っ張って巻き込んだ時が多く、追い込まれるとセンターから右方向への打撃に切り替えてきます。けしてスラッガーではないのですが、適度なパンチ力と高い対応力が魅力の強打者です。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰を深く沈めつつ、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては平均的。春は、幾分クロス気味にグリップを捕手方向に引いて構えていました。これを、よりオーソドックス形に変えてきたように思えます。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始めたら動き出す、「早めの仕掛け」を採用。パワフルなスイングが目を惹く選手ですが、根本的に対応力を重視したスタイルであることが伺われます。また追い込まれると、ステップを小さくして動作を小さくして対応してきます。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 足を引き上げて回し込み、ベース側に踏み出して来るインステップ。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。インステップして踏み込んで来るように、外角への意識が強いスイングです。春は真っ直ぐ踏み出していたのを、しっかりベース側に踏み出すように変えていました。これは、いろいろ打とおうとするよりも、自分の得意なゾーンを逃さず叩くことに意識が変わってきたのかもしれません。

 その一方で気になるのは、踏み込んだ前の足が動いてしまうことが多くなったこと。より引っ張りたいという意識が強いのか? 強い上半身の振りに対し下半身が負けてしまっていました。こうなると、逃げてゆく球や低めの球について行くことができなくなります。追い込まれて右方向を意識する時も、足が早く地面を放していたので、高めの球を払うようなスイングになっていました。このへんは、選抜の頃にはしっかりできていたので修正の必要がありそうです。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。ただし追い込まれてからは、バットを引くのが遅れることがあるので、その点は注意したいところ。バットの振り出し自体も、インパクトまで大きなロスは感じられません。春は許容範囲ではあるものの、少し遠回りでヘッドも下がり気味でした。そういった部分は、少し改善されてスイング軌道は良くなっていました。

 またボールを捉えたあとも、大きな弧を描いて強く振ることができています。フォロースルーもある程度使えるので、上手く巻き込めればスタンドインさせることができます。しかし現状は、センターから右方向への長打は望み難く、本塁打は甘い球を思いっきり引っ張った時に観られます。

<軸> ☆☆★ 2.5

 足の上げ下げはありますので、目線の上下動は平均的。この夏は「開き」が充分我慢できていなかったのと、インステップするぶん足元が窮屈に感じました。そのため内角のさばきも、少し今の打ち方だと余裕は無さそうな感じ。元々この辺は選抜の時からもそうで、右方向に打ち返す時には軸足を後ろにズラしてさばいていました。それだけ適正な位置に足がないので、動かさないとボールがさばけないことを意味しています。

(打撃のまとめ)

 細かい部分では、いろいろ打撃を変えてきたことが伺えます。そのため、上半身の動きは良くなってきたものの、そのぶん下半身の動きにが悪くなっていました。ただし、元々できていた動作なので、上半身と下半身のバランスが整えば理想的なスイングの完成も近づいて来るのではないかと。課題も少なくはないのですが、根本的な打力はある選手なので改善は充分可能でしょう。


(最後に)

 打撃に関しては、変化はしていたものの結果という意味では大きくは変わっていませんでした。むしろ評価すべき点は、ディフェンス面が春より成長が感じられたこと。春の内容では、これでは投手への信頼を得られないのではないか? あるいは将来、他のポジションへコンバートされてしまうかもと思う部分がありました。そのへんが、だいぶプロの捕手として許容範囲のレベルに近づいてきている気がします。元々捕手としての勘どころは悪く無さそうですし、見た目よりも俊敏に動ける選手ではあるので。

 あとは、一塁まで全力で駆け抜けるなど、けしてプレーに手抜き感はありません。ただし、根本的に大雑把な性格のようで、プロできめ細やかさや雑な部分を改善にできるかに懸かっています。上手く育てば、2割7~8分で15本~20本級の、まさに「打てる捕手」の誕生も実現するかもしれません。そういった資格を持った、プレーヤーだと言えるでしょう。春からディフェンス面の成長を評価して、選抜よりワンランク高く  を付けてみたいと考えます。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2021年夏 和歌山大会)


 








松川 虎生(市立和歌山3年)捕手 178/98 右/右 
 




 「打撃はプロ級」





 高校NO.1と言われる 小園 健太 投手と中学時代からバッテリーを組み、選抜の舞台では7打数4安打と好機でヒットを連発する活躍で評価を高めた 松川 虎生 。果たして、キャッチャーとしてはどうなのか? 総合的に、どのランクに位置づけされそうな選手なのか考えてみた。


(ディフェンス面)

 試合中は、身振り手振りをして投手を叱咤激励する「俺について来い!」的なキャッチャーです。阿吽呼吸でやりとりができる小園とは違い、一学年下の 米田 天翼 をリードするときは、事細かく指示を出していました。そうかといって、ちょっとでも米田がおかしいと察すると、すかさずマウンドにゆくなど、意外にちょっとした変化にも気がつく洞察力があるのかなと思える部分も。

 ただし、小園とのバッテリーに慣れ過ぎてしまったのか? 返球やキャッチングが雑なのは気になります。キャッチング自体は下手だとは思いませんし、打球への一瞬の反応も見た目以上に機敏です。ただし、低めの球を捕りにゆくときは、上からかぶせにゆくことが多いこと。投手への返球も、しっかりミットめがけて返せないので、先輩投手から信頼を得られるのかには不安が残ります。

 昨秋見たときは、驚くような強肩ではないものの、1.9秒前後でも正確な送球でアウトにしていたので好感が持てました。しかし、選抜でのプレーを見ていると、捕ってから早く放ろうという意識が強く制球を乱しがちなのは気になりました。プロで信頼される捕手になれるかという意味では、個人的にはかなり微妙ではないかと感じました。そのため、何年かしたら他のポジションへコンバートされてしまうかもという不安が残ります。ただし、リードもそれなりに考える力はありそう。瞬時の判断力や反応も良いので、意外に動ける点に関しては好感が持てます。その能力が、捕手として生かされるかはわかりませんが・・・。


(打撃内容)

 昨夏ぐらいまでは、パワフルですが粗い打者という印象でした。秋ぐらいから、広角に打ち分ける幅が出てきて、対応力も兼ね備えた強打者になってきています。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的な高さで幾分捕手側に引いて構えています。腰の据わりは良いのですが、少しクロス気味に肩が入っており、全体のバランスや両眼で前を見据えるという意味では平均的な構えでしょうか。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下っている途中で動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視したアベレージヒッタに多く見られる仕掛けですが、彼の場合はタイミングをあわせるというよりも、大きく足を引き上げて強く踏み込むという動作を行うために早めに動き出している節があります。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足をしっかり引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れていて、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように内角でも外角でもさばきたいタイプかと。踏み出した前の足も、インパクトの際にブレずに止まっています。したがって、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。バットの振り出しは、けしてインサイドアウトとか無駄がないとは言いませんが、強打者であることも考えると許容範囲のロスだと捉えています。インパクトの際にも少しバットのヘッドは下がりがちですが、その分バットをボールの下に潜りこませて角度をつけて飛ばすことができているので気にすることはないでしょう。

 インパクト後のスイングも小さくないですし、フォロースルーを使えるのでボールを遠くに運ぶ後押しができています。特に甘い球を逃さないという、一瞬の「集中力」を持っている選手なので、打ち損じは少ない打者ではないのでしょうか。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは激しいフォームなので、目線の上下動はそれなりに動きます。身体の開きは我慢できていますが、ステップが狭めなのか? インパクトの際に軸足を後ろにズラしてスペースを確保しようとします。それだけまだ、軸が定まっていないとも言えるのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 技術的には細かい部分がいろいろあるのですが、欠点が致命傷にならない程度に許容範囲に留めているところが、この選手の良さではないのでしょうか。甘い球を一振りで仕留められる集中力もありますし、こと打つことに関しては、プロ級であることは間違いないように思います。


(最後に)

 相手がミスしたと思えば、一瞬の隙をついて次の塁を陥れるなど瞬時の判断力・行動力には見るべきものがあります。その能力を活かされるのは、むしろ捕手としてよりも三塁手あたりなのではないかと思う部分はあります。個人的には「打てる捕手」としての魅力は感じられるものの、将来的にコンバートされてしまうではと判断しており、キャッチャーとしては物足りません。それでもO.Kという球団ならば、指名もありではないのでしょうか。けして洞察力や考える力などがない選手ではないので、捕手として評価する球団も多く出てくるのではないのでしょうか。ドラフトでも、3位~5位 ぐらいの位置づけにランクされる存在だとみています。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 選抜大会)