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柳川 大晟(九州国際大付3年)投手 191/85 右/右 | |
昨夏見た時は、スラッとした細身の体型だった 柳川 大晟 。しかしこの春直に見た時は、明らかに骨太の体格になり、見違えるほどに体つきが変わっていた。その時は登板せずに悔しい思いをしたが、ようやく夏の大会でその成長ぶりを確認できた。 (投球内容) 長身ですが、少しテイクバックを小さめにとってスリークォーター気味に投げ込んできます。 ストレート 常時135~140キロ前半 ☆☆☆ 3.0 球速的には物足りないのですが、非常に重い球を投げ込んできます。そのため打者の空振りを誘うというよりも、詰まらせて打ち取るタイプです。それほど細かい制球力があるわけではないのですが、右打者には両サイドに散らすことができており、四死球で自滅するといったほどではありません。秋に152キロを記録したと訊いて、2年夏の内容からは想像できなかったのですが、最後までそういった投球は確認できませんでした。ただし、明らかにビルドアップした今の体つきをみると、セーブしないで投げたらそのぐらいのボールを投げ込んでも不思議ではない体つきはしています。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 球種がわかり難い投手なのですが、右打者にはスライダー系とのコンビネーション。左打者には、チェンジアップとのコンビネーションというオーソドックスな配球に見えます。たまにフォークのような沈む球も投げるのですが、ちゃんと落ちきらないのか? チェンジアップとの区別はつき難いです。適度にカウントを稼げたり、目先を変えることはできており、ストレートでガンガン押すというよりも、変化球の割合がかなり多い配球でした。 その他 クィックは1.3秒前後と遅いことが多いのですが、早く投げようとしたら1.15秒前後と基準レベルでは投げられます。おそらく早く投げる以上に、制球を乱すことに注意を払っているのではないのでしょうか。牽制は平均的で、フィールディングは落ち着いてはいますが、大柄故に少し鈍くは見えてしまいます。 (投球のまとめ) 球速的には、昨夏見たときと殆ど変わっていません。変わったとすれば、ボールの質。体つきが変わって、球威がかなり付いてきたこと。現状の投球からは、150キロを超えるボールを投げる姿が想像できません。しかし実は、本当にそういったスペックをすでに持っているとすれば、それはそれで見方は変わってきます。その一方で、実戦でそういった投球を出せないところに大きな課題があるということでもあると思うのですが ・・・。 (投球フォーム) 今度はメカニズム的に、昨夏と変わったところがあるのか考えてみたい。足を引き上げる勢いはさほどではないのですが、高い位置まで引き上げてきます。軸足一本で立った時に、適度にバランス良く立てています。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、少し前に倒れ込むように投げます。したがって身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さない投げ方です。さらに腕の振りもテイクバック小さめでかつスリークォーターで、余計にこういった球種を投げるのには適しません。 「着地」までの地面の捉えは、少し前に逃がす意識はあるようで平均的。身体を捻り出す時間は並ぐらいであり、大きな曲がりな変化球で勝負というよりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。そのため将来的に、空振りを誘えるような変化球を修得できるのかは疑問です。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため、両サイドへの投げ訳は比較的できている。ただし、左打者に対しては的がつけ難いのか? 球筋が不安定になる傾向が見られる。 足の甲手の地面の捉えはまだ少し浅いので、ボールはまだ上吊りやすい。それでもあと一歩股関節の柔軟性を養いつつ下半身を強化できれば、改善できそうな形にはなってきている。球持ちも平均的で、それほど指先の感覚に優れているといったほどでは無さそうだ。ただし全体的に、身体ができてきてリリースが安定してくれば、コントロールに苦しむタイプではないのかもしれない。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークを投げると窮屈になり肘への負担が心配になります。しかし現状見る限りは、そういった球種を投げる機会は少なそうで、そこまで悲観するほどでは無さそうです。 また腕の送り出しを見ても肩への負担は少なそうですし、力投派というよりは身体を持て余し気味なので消耗が激しいということはないのではないのでしょうか。比較的故障へのリスクは、比較的低いフォームであるように見えます。 <実戦的な術> ☆☆ 2.0 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも少し早く見えます。そのため打者としては、苦になく合わすことができるのではないのでしょうか。まだ腕の振りにも鋭さがなく、ボールにも上手く体重が乗せ切れていないなど、持っている肉体のスペックを活かしきれているとは言えません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」「体重移動」を中心に、全ての部分で改善の余地は残されているように感じます。故障のリスクが少なそうなのと、比較的将来的には制球の不安が少ないフォーム。あとは、いかに武器になる球を見出して行けるかではないのでしょうか。フォーム的には、若干昨年よりは「着地」までの粘りや足の甲での地面の捉えが良くなってきており、緩やかな進化は感じられます。ただし、まだまだ発展途上の投手とは言えるのではないのでしょうか。 (最後に) チームメイトの 山本 大揮 が、ゲームメイクできる実戦派ならば、こちらはまだ才能が開花しきれていない素材型です。現状内容的には山本には劣るのですが、高校からプロにゆくという意味では柳川の方が向いていると思います。実戦派ではないだけに、下手に大学などに進んでも、中々公式戦での経験が積めずに伸び悩む危険性が。それならば、プロの世界である程度実戦経験を重ねて、才能が開花するのを待った方が得策だと思いますし、伸びしろも多く残されていると考えられるからです。 しかし指名となると、かなりスペックを高く見積もっても 下位~育成あたりが妥当ではないかと感じます。個人的には好意的に観て ☆ は付けますが、正直プロで大成できるかはかなり微妙ではないかと観ています。あとは、本人がどのぐらいプロで飯を食ってゆくのだと言う覚悟を、現時点で持っているかの決断になるのではないでしょうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2021年夏 福岡大会) |
柳川 大晟(九州国際大付2年)投手 188/75 右/右 | |
今年の九州の投手の中でも、最も気になるのが、柳川 大晟 。秋季大会では、最速152キロを記録したという。夏の大会の模様は見られたが、そのときは140キロ前後ぐらいだったので、短期間にえらく速くなっていることに驚く。 (投球内容) 細身の長身投手で、セットポジションから投げ込んできます。映像を確認できたのは、夏の大会の模様でした。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤ぐらい ☆☆☆ 3.0 夏の時点では、常時140キロ前後ぐらいといった感じで驚くほどのものはありませんでした。あくまでも、変化球を交えて討ち取るコンビネーションピッチャーといった感じ。そのため、適度な勢いは感じられたものの、ストレートだけで強豪校を押し切るほどの迫力や球威はまだなかったです。筋の良さは感じられても、150キロを記録するまでにこんな短期間で到達するとは思ってもみませんでした。 球筋は両サイドに散らせており、打者の内角への意識的に投げられます。全体的に高めに集まりやすく、抜け球も少なくありませんでした。四死球で自滅するような危うさは感じませんでしたが、左打者への投球はやや的が定まらない感じに見えました。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 右打者の外角に小さく曲がるスライダーで、カウントを整えられます。また低めのボールゾーンに切れ込む、縦スラもあるように見えます。さらに、フォークのように沈むチェンジアップがあります。そして緩いカーブも、たまに投げているのではないのでしょうか。変化球でカウントを整えられますし、縦の変化でもある程度空振りは誘えていました。まだ絶対的なものは感じられませんでしたが、変化球も一定水準のレベルにあるのは確かです。 その他 クィックは1.2秒前後とさほど素早くはありませんが、適度に牽制は入れてきます。ランナーが出ても、それほどバタバタすることなく投球はできていました。 (投球のまとめ) 全てにまだ成長途上といった感じだったので、それが一気に球速が引き上がったというのは驚きでした。速球が本当に150キロを超えるまでになっているとすると、ある程度コントロールできていた変化球も、より活きることになるのではないかと。投球もしっかりできていた投手だったので、余計に期待は広がります。観戦が可能な状況ならば、ぜひ春の段階で確認に行ってみたい一人です。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を高いところまで引き上げてきます。それほど軸足の膝には余裕は感じられないものの、適度に Yの字 の形をつくれてバランス良くは立てています。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。したがって捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークを投げるのには無理がある投げ方です。 また「着地」までの地面の捉えも淡白で、身体を捻り出す時間はまだ物足りません。こうなると、曲がりの大きな変化球の習得は厳しくなります。そのためスライダーやチェンジアップなどを中心に、速球に近い小さな変化でピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。またフォームが縦推進なのもあり、両サイドのコントロールはブレ難いと考えられます。実際、ボールは両サイドに散っていました。 気になるのは、足の甲の地面への捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいということ。またリリース時にボールを押し込めないことが多く、高めに抜けてしまうことも少なくありません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないものの、カーブは滅多に投げないし、縦の変化がフォークでないのであれば、それほど窮屈にはなり難いのかもしれない。そのため肘への負担は、そこまでナーバスになることはないのではないのだろうか。 腕の送り出しに関しては、現状さほど無理は感じられない。したがって肩への負担は、少ないのではないかと。まして力投派ではないので、疲労を溜めやすいとかそういったことは無さそう。ただし、この細身の身体から150キロを超えているとなると、かなりの力投派となっている可能性も否定できない。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 特に「開き」が早いというほどではないように思うが、「着地」までが淡白なのでタイミングは図りやすいように感じる。ボールの出どころは平均的なので、縦の変化などはある程度手を出してもらえるかもしれないが。 夏の時点ではまだ腕の振りが弱く、勢いに吊られて空振りをという感じではなかった。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできていない感じで、投げ終わったあとも多少三塁側に流れ気味。そのためエネルギーもダイレクトに力を伝えきれていない感じで、地面への蹴り上げも弱かった。そのへんが、短期間で解消されたということなのだろうか? (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に課題を感じました。制球を司る動作は、足の甲の地面の捉えが浅く高めに集まりやすいこと。また故障のリスクはさほど高くは無さそうなものの、将来的に武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙な感じはします。ただし短期間で球速を大幅に引き上げられたことを考えると、「体重移動」の部分がかなり改善されて、持っているエネルギーをうまくリリースまで伝えられるようになってきたのかなと感じる部分はある。そのへんは、ぜひ春季大会で確認してみたい。 (最後に) 昨年の 山下 舜平大(福岡大大濠-オリックス1位)も、下級生の頃はセンス型だったので、この柳川も山下ように見違えるような体つきに変わって大幅な球速をアップを実現しているのかもしれない。元々変化球でカウントを整えられ、投球センスも悪くない投手。この土台の上に確かな球威・球速を身につけてきたのであれば、当然ドラフト上位候補といった位置づけになると思う。そのへんのことは、春季大会で明らかになるのではないのだろうか。 (2020年夏 福岡大会) |