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鴨打 瑛二(巨人)投手のルーキー回顧へ







鴨打 瑛二(創成館3年)投手 195/88 左/左 





 「あんまり変わっていない」





 1年の頃から大型左腕として将来を嘱望されてきた 鴨打 瑛二 。しかし、最終学年の投球を観ても、あまり変わっていなかったのではないかと思えてくる。


(投球内容)

 195センチの規格外の体格から、大きく振りかぶって投げ込んできます。最後の夏は2試合に登板して 9回 6安 4四死 7三・3失 という内容でした。3回戦の大崎戦に先発しましたが、ここで破れ高校生活を終えました。

ストレート 常時130~135キロ前後 ☆☆★ 2.5

 巨体から投げ込んで来る圧はあるのかもしれませんが、それほどボール自体に訴えかけて来るような、球威・キレ・嫌らしさ などは感じません。角度も思ったほどは感じられず、両サイドに大まかに散らせて来るといった感じで、細かい制球力があるわけでもなさそうです。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0 

 結構緩いカーブを多め混ぜてカウントを整えてきたりして、むしろスライダーよりも使う頻度は多めです。その他には、ツーシーム気味に小さく逃げるチェンジアップ、あるいはもっと沈むフォークなど球種は一通りあります。ただし、まだ絶対的な変化球はなく、的が絞り難い・カウントがある程度取れるといった以外に特別なものは現時点ではありません。

(投球のまとめ)

 一年生の頃から、球速は130キロ前後は出ていたと記憶するので、目に見えて速くなっていませんでした。もう少し下級生の頃はもっさりした感じだった記憶があるのですが、多少そういった部分が薄まりスッキリはしてきたのかなとは思えます。しかし、変化球のキレも含めて、3年間の伸び方は極めてゆっくりだったのではないかと考えられます。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。ワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはまずまず。軸足一本で立ったときには、膝から上がピンと伸び切っているのは気になるものの、比較的バランス良くは立てています。

<広がる可能性> ☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面の方に向けているので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。こうなると身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークを投げるのには無理を感じます。

 また「着地」までの地面の捉えが早く、身体を捻り出す時間も確保できていません。したがってキレや曲がりの大きな変化球の習得は厳しく、球速のある小さな変化で投球の幅を広げてゆくタイプになってゆくのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはしやすいのではないかと。実際、投球を観ていてもそんな感じはします。

 足の甲の地面の捉えはできているのですが、その時間が短過ぎてどこまで浮き上がろうとする力を抑え込めているのかはわかりません。「球持ち」も前で放せているので、もう少し股関節の可動域を広げたり、下半身の筋力強化ができれば、ボールも低めに集まるのではないかと見ています。根本的には、それほど大きく制球を崩すフォームではないように見えます。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせない割にカーブやフォークを結構使うので、そういった意味では窮屈になりやすく肘への負担も大きいのではと危惧します。

 しかし、腕の送り出しを見ている限り、肩への負担は少なそう。まだ全身を活かしきれているという感じではなく、けして力投派といった投げ方にはなっていません。そのため、疲労はあまり溜め難いタイプなのかもしれません。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りの無さから合わされやすさは生じやすいのですが、ボールの出どころを隠せていたり、長身を生かした独特の球筋や威圧感はあるので、その点で補えている可能性があります。

 腕はしっかり振れているので、打者としては吊られやすいのでは? ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできているようにみえるものの、「着地」までのステップが狭いために投げ終わったあと三塁側に重心が流れます。それだけ力を、ダイレクトにボールに伝えキレておらずロスが生じています。このへんが改善されるようだと、もっと打者の手元までグッと来る感じが出てくると思うのですが。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」という、エネルギー捻出の部分に課題を残していることがわかります。この辺を改善できないと、球速や真っ直ぐの質という意味で物足りないものが残るかもしれません。

 お尻を落とせないことで肘への負担や足の甲での地面の捉えが短いことで高低の制球力など、まだまだ改善しないと行けないポイントも多数あります。特に、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは疑問で、コースを丹念に突きながらボールを動かすような、そんな打ち難さを追求するスタイルになってゆくかもしれません。


(最後に)

現状は、まだまだ発展途上過ぎて将来の青写真が見えてきません。非常にゆっくりしたスピードで成長を続けているのかもしれませんが、育成枠ということを考えると、どこまで球団が面倒見てくれるかは微妙です。そういった意味でも、目の色を変えて取り組まないと、あっという間に現役を終えてしまう、そんなことにならないことを祈ります。充分にピッチングが見られたわけではないので評価付けはできませんが、下級生の頃と大きくは変わった感じはしなかったので、恐らくもう少し投球を見ていても  を付けるまでの評価には至らなかったのではないかと考えています。


(2021年夏 長崎大会)