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菅井 信也(西武)投手のルーキー回顧へ







菅井 信也(山本学園3年)投手  182/75 左/左 
 




「ほとんどわからない」 





 今年の指名選手の中でも、最もよくわからなかったのが、この 菅井 信也 だった。ドラフト後も一切試合の模様は確認できず、ようやく見つけたのが、指名後に地元で流れたニュースでの映像。そこには、彼がピッチング練習をしている姿が映されていたので、フォーム分析のみはなんとかできそうだということで、ご了承願いたい。


(投球内容)

 最速は143キロという触れ込みなので、普段は135キロ~140キロそこそこの球速だと思われます。角度を生かした投球フォームから、スライダーが武器の投手だという。この夏は、2試合・15イニングを投げて30奪三振という驚異的なペースで三振が奪えていました。四死球は4個だったことからも、コントロールには難は無さそうだということ。被安打が14本だったことからも、それほどフォームに嫌らしさがないか? ボールに威力がないのか? ストライクゾーンの枠の中での制球力が甘いのかいずれかではないのでしょうか? 3回戦で、強豪・羽黒高校 に8回を投げて4失点で最後の夏を終えました。


(投球フォーム)

 普段は、引き上げた足をなかなか降ろさない自分の「間」を重視したフォームに見えました。そのため足を引き上げる勢いは並で、それほど高い位置まで引き上げてはきません。そういったところからも、勢いで投げ込むリリーフタイプというよりも、ゆったりとした先発タイプなのではないのでしょうか。気になるのは、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸び来てしまい、トの字 のように立ってしまい直立した形になってしまっているところです。こうなるとバランスをとりずらく、ツッコミやすかったり力みが生じやすくなるので気にはなります。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 マウンド上で突っ立った形のまま投げるので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としはできません。したがって身体をひねり出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないフォームだと考えられます。

 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、身体をひねり出す時間はある程度確保できます。そのへんが、スライダーのキレを生み出す要因になっているのかもしれません。球種としては、スライダー・チェンジアップ・球速のある小さな変化などでピッチングの幅を広げてゆくタイプではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられているようで、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。またフォーム自体もお尻を落とさない縦推進なだけに、軸はブレ難く両コーナーへのコントロールはつけやすいと考えられます。

 足の甲での地面への捉えも、適度に捉えているようには見えました。このへんは、ちょっと映像的にもわかりにくい部分はあったのですが、ボールはそれほど高めに抜けて制御できないということは無さそう。また「球持ち」自体も、さほど悪くは見えませんでした。身体ができてくれば、かなりコントロールは好い左腕になるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻は落とせていないのですが、どの程度カーブやフォークを織り交ぜてくるかはわかりません。それによって肘への負担は変わってきそうですが、持ち球にフォークがないこと。さらにスライダーを武器にしているとのことで、そこまで気にしなくても良いのではないかもと。

 気になるのは、角度を活かして投げる腕の振り。そのためボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がって投げ込んでいるように見えました。したがって腕の送り出しには負担がかかり、肩への負担は少ないないのでは? それでも角度が生命線の投球であるのならば、ここを緩和するのは難しいかもしれません。ただし、まだ筋力などが足りていないだけかもしれませんが、さほど力投派という感じではないので、疲労は比較的溜め難いのではないかと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までも早すぎることは無さそうですし、ボールの出どころも隠せているように見えます。したがってフォームとしては、さほど合わされやすいわけではないのではと。振り下ろした腕は身体に絡む粘っこさはあるので、腕の振りをさらに鋭く振れるようになるのが今後の課題ではと。ボールにも適度に体重は乗せられているようには見えたので、この辺もウェートが増して来ると手元までの球威や勢いが増してくるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」には大きな欠点はなく、さらに身体ができてくればより実戦的な粘りを身に付けられる可能性があります。制球を司る動作が良くコントロールの不安がないことは明るい材料であり、将来的にも良い変化球を武器にして行ける可能性もあります。気になるのは、多少肩への負担がどうなのかなど故障のリスクの点ですが、それほど力投派でもないことを考えると、それも杞憂で終わるかもしれません。


(最後に)

 実際試合の模様が一切見られなかったので、ハッキリしたことは言えません。ただし、フォームを見る限りは実戦的ですし、身体ができてくれば素直にそれがボールに反映されやすいエネルギー効率の良さも感じられます。そういった意味では、思わぬ掘り出しものになる可能性もあるのではないかという印象は受けました。ぜひ、ファームでの試合で、その勇姿を確認してみたいと思わせてくれる選手でした。


(投球練習の映像から)