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秋山 正運(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







秋山 正雲(二松学舎大付3年)投手 170/75 左/左 
 




「大江を越えてる」 





 秋山 正雲 が目標としてきた投手が、高校の先輩でもある 大江 竜聖 だという。今でこそ腕を下げて投げる変則になっている大江だが、高校時代はガンガン真っ直ぐで押す力投派。先輩である大江の方が真っ直ぐの勢いはあったと思うが、制球力や投球術など安心してみていられるのは秋山の方ではないかと思うのだ。


(投球内容)

 夏の甲子園では、2試合に登板して 19イニング 16安 6四死 17三 5失 防 2.37 という内容だった。 

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ ☆☆☆ 3.0

 左投手にとって球速が出難い甲子園のガンだということもあったが、だいたい常時140キロ前後ぐらいで、ランナーを背負うと140キロ台中盤を連発して来るタイプです。ボールは手元でグ~ンと伸びるとかピュッと切れるという感じでもなく、適度な勢いは感じられるものの、どちらかというと球威で詰まらせるタイプの球質かと。ただし、三振を奪うのは、高めの真っ直ぐで吊るときと、右打者の内角などにズバッと投げ込んでの見逃し三振が多いように思います。19イニングで17奪三振とイニングを下回るように、左腕の逸材としては特別奪三振が多いとか球速が図抜けているわけではありません。

 制球も大まかに両サイドに散らしてくる感じで、左打者相手だと多少バラツキます。この辺も19イニングで6四死球を示すように、四死球で自滅するほどではないにしろ、それほど繊細なコントロールの持ち主ではない。また真っすぐの高さも、全体的には真ん中~高めのゾーンに集まる傾向が強いように感じます。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆★ 2.5

 緒戦の西日本短大戦では、雨で手が滑るのか? スライダーが抜けて思いどおりカウントを整えられない苦しいマウンドでした。元々、この球の精度やキレは、さほど特別なものは感じられません。むしろ、少しツーシーム的に小さく逃げて沈むチェンジアップの方が優れた球種であるように思います。ただし、この球ばかりを投げてはいられないので、スライダー・カット系のカウントを整える球のキレ・精度を高めてゆくことが、この選手の今後の課題ではないかと考えます。

その他

 牽制は適度に入れ平均的で、クィックは、1.15秒前後とこれまた基準レベル。特にそういった投げる以外の動作に優れた感じはしないのですが、マウンド度胸や要所での力の入れ加減などのマウンドさばきにはセンスが感じられます。相当場数を踏んできた投手なのだなといった、洗練したものは感じます。

(投球のまとめ)

 意外に真っ直ぐが空振りを取れる球質ではないのと、左打者への制球力を中心にアバウトな部分があること。またカウントを整える変化球の精度・キレなどに物足りなさがあり、完成度が高さそうに見えて細かい課題は少なくなそうです。それでも高校生左腕で、これだけの投球をできる投手は全国でも指折りであり、今後の上積みはともかく現時点での実力は上位クラス。今後何処まで上積みが望めるかは体格的にも心配ではありますが、ドラフトでも中位級の力は充分持っているのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 セットポジションから、比較的ゆったりと高くまで引き上げてきます。軸足の膝もピンと伸び切ることなく余裕があり、力み無くバランス良く立てているのは良いところ。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としには甘さが残ります。そのためカーブやフォークなど捻り出して投げる球が投げられないほどではないのですが、どうしてもブレーキや落差は鈍りやすいのではないかと。

 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、身体を捻り出す時間はある程度確保。空振りを誘えるほどキレや曲がりの大きな変化球を修得できるかは微妙なのですが、変化球自体のキレが悪いわけではないと思います。現時点でも、チェンジアップは、かなり有効な武器になっているので。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込むことができています。特に右打者には、両サイドへの制球も安定しています。しかし、チェンジアップを使えずスライダーをさほど武器にしていない投手なので、左打者への制球はやや乱れる傾向にあります。

 足の甲での地面の捉えは、少しまだ浅い気がします。このへんが、股関節の柔軟性を養いつつ下半身が強化されたら、もう少し下が使えるようになり、球筋全体が下がってくるのではないのでしょうか。現状は、「球持ち」も前では放せているものの、ボールが高い印象があります。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すのですが、カーブは滅多に見られませんしフォークのような球種もないようです。そういった意味では、それほど気にすることはないでしょう。

 腕の送り出しを見ていても無理は感じられませんので、肩への負担も少なそう。普段はそれほど力んで投げていないので、疲労も溜まり難いのではないのでしょうか。彼の最大の武器は、無尽蔵のスタミナというのも売りなので。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそこそこで、「開き」も平均的。特に苦になるフォームといった感じではないのと、上背がないので角度により打ち損じや、体格からくる圧迫感には乏しいように思えます。

 腕はしっかり振れているので、打者は勢いで吊られやすいのでは? そのへんは、高めの球を打者が思わず手を出してしまう場面をみるのであるのだと思います。ボールにも適度に体重は乗せられているので、打者の手元まで強い球は投げられているのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。制球を司る動作では、まだ左打者への投球や全体的に高いなど課題はあるものの、フォーム的には充分改善が見込めること。故障のリスクはけして高いフォームではないですし、武器になるほどの球種を身につけられるかは微妙ですが、指先の感覚や変化球を投げられる土台という意味では、それなりに投球の幅を広げられそうです。けして完成された素材ではないのですが、技術的には適度に全ての技術を備えている良いフォームだと評価します。


(最後に)

 肉体的にどのぐらいの上積みが望めるかは微妙ですが、技術的にはまだ改善できる部分、課題も散見されます。逆にそこが伸び代でもあると思うので、本人の意識と意欲次第でさらに実戦力を極めてゆくことは充分可能かと。けしてドラフト上位候補と言われる左腕たちに劣らないパフォーマンスを魅せており、体格や伸び代の部分での不安を加味しても、4位前後ぐらいの指名が期待できるのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年夏 甲子園)