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寺嶋 大希(21歳・NTT東日本)投手 180/81 右/右 (愛工大名電出身) 





 「ボールの回転は独特」





 愛工大名電時代から、回転数が多そうな真っすぐやスライダーには特徴があった 寺嶋 大希 。そのボールのキレは健在で、高卒3年目でのプロ入りを意識できるところにいる。


(投球内容)

 社会人での2年間では、まだ都市対抗や日本選手権での登板はない。しかし、公式戦でも少しずつ登板の機会を増やしており、信頼を勝ち得ようとしている。順調にゆけば、今年は都市対抗での出番もあるのではないのだろうか。


ストレート 常時140キロ~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 真っすぐ中心の配球ではなく、横滑りするスライダーやチェンジアップを中心にカウントを整えてくる。むしろ、真っすぐを決め球に使っている印象すらある。そのため、時々投げ込まれる
速球が、相手打者としては勢いがあり厄介だと言えよう。

 一方で、
細かいコントロールという意味では物足りない。本当の制球力がないので、カウントを悪くしてしまうと、踏ん張り切れずに四球を出してしまう。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダーではしっかりカウントを整えられ、チェンジアップも時々交えてくる。奪三振は投球回数を遥かに上回っており、
三振が取れる選手とみて良いだろう。

その他

 クィックは、0.9秒台と高速で、高校時代よりも0.2秒ぐらい速くなっている。ランナーを出すと、ボールを長く持ったりして相手を焦らしてくる。牽制はそれほど鋭いものは観られなかったが、マウンドを外すのもうまく、
マウンドさばきや野球センスには優れたタイプだろう。

(投球のまとめ)

 マウンドさばきなどはよく実戦的に見える反面、本当のコントロールがないところが、まだまだ未完成な印象を受ける。現状は短いイニングであれば、社会人相手でもある程度抑えられるが、
プロで即戦力になりうるかと言われると微妙だと言わざるえない。


(投球フォーム)

 セットポジションから投げ込むのだが、軸足に体重を乗せきる前に重心を沈めて来る。フォームとしては、
スリークォーター気味の腕の振りとなっている。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は一塁側に落とせており、体をひねり出すスペースは確保できている。したがって、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も無理なく投げられそう。ただし、腕の振りが下がっているので、スペースは確保できていても変化は鈍くなってしまうかもしれない。

 前に大きくステップしており、体をひねり出すまでの時間を確保。そういった意味では、カーブやフォーク以外であれば、曲がりの大きな変化球の習得も期待できるフォームではある。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 
グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいのでは?

 むしろ、
足の甲での地面の捉えが浅く、浮き上がろうとする力を充分には抑えられていない。そのためボールは抜けたりしがちなるなど、左右よりも高低の制球に課題があると言えよう。「球持ち」自体は、けして悪く無さそうなのだが。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆★ 4.5

 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球を投げても無理は無さそう。また、スライダーやチェンジアップ中心で、そういった球の頻度が多いとは言えない。したがって、窮屈になって肘などへの負担は大きくは無さそうなフォームではある。

 腕の送り出しにも無理がなく、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えは遅く、打者としてはタイミングは合わされやすいわけでは無さそう。ただし
ボールが見やすいので、コースを突いたような球でも打ち返されたり、ボールなる球を振ってもらえないなどの恐れはある。

 振り下ろした腕が体に絡んで来ないなど、フォームに粘っこさがないのは残念なところ。「球持ち」は悪くないのだが、地面への蹴り上げには乏しく、前への体重移動という意味では物足りない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「開き」によるボールの見やすさと、前にグッと体重が乗って来ない「体重移動」が気になる材料。制球を司る動作は、高めに抜けやすいのが課題。故障のリスクは少ないが、もっと球種を増やすなどして、投球の幅を広げたい。それが可能な、フォームではあるようには思えるので。


(最後に)

 
ボール自体は悪くないのだが、トータルで考えると即戦力として活躍できるのか? あるいは、将来的にプロで戦力になれるかと言われると微妙な印象は受けている。それだけに、今後の大舞台でのアピールなどができるかで、指名は流動的なになるのではないのだろうか。


蔵の評価:
追跡級!


(2024年 JABA静岡大会)


 








寺嶋 大希(愛工大名電3年)投手 179/76 右/右 
 




 「甲子園で良かった」





 春季東海大会でも生で観たのだが、さらに夏の甲子園では良く見えた 寺嶋 大希 。回転数の多そうな真っ直ぐやスライダーを投げ込んでくる、空振りの取れる投手だった。


(投球内容)

 夏の甲子園では緒戦で敗れたものの 5回2/3イニングで、6安打・1四死 5三 3失点 という数字が、現状の彼の力を良く現しているのではないかと。

ストレート 140キロ~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0
 スピンの効いた140キロ台中盤のボールには、適度な勢いとキレを感じさせた質の良い真っ直ぐ。その球を、両サイドに散らせて来る。ただし、フォームとしては合わされやすい感じで、それを球質で補っている印象を受ける。けして、四死球で自滅するような危うさはなかった。

変化球 スライダー・スプリットなど 
☆☆☆ 3.0

 非常にスライダーのキレに優れた投手で、この球とのコンビネーションで投球を組み立ててくる。スライダー自体はキレだけでなく、全体的に低めに集まって来るところは良いところ。また左打者には、チェンジアップ気味のストライクゾーンに沈んで来るスプリットのような球を使って組みててくる。春季大会ではこの球が高めに浮いて怖かったのだが、甲子園ではこの球も低めに集まっていたのは良かった。速球とスライダーとのコンビネーションでやや単調に映る部分はあったので、右打者にもう一つ使える変化球が欲しいかと。左打者には、スプリットの他にも左打者内角にスライダーやカットボール気味の球を食い込ませることができていたので。

 ボールが見やすいのか? 良いところに決まったスライダーを、打者が体勢を崩してでもヒットに持ってゆかれる場面が目立った。その辺の変化球を効果的に使うためにも、内角への球を意識させたりボールの出どころのみやすさを改善したい。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒 ぐらいと平均的。牽制は、軽く間を外す程度といった感じ。特にボールをじっくり持ってとかやっている感じはなかったものの、マウンドさばきや制球力などは悪くなく、野球センスに優れたタイプのようには見えた。

(投球のまとめ)

速球にしてもスライダーにしても、投げているボールの質は高いと思います。また制球力やマウンドさばきなどの部分も良いと思いますが、ボールのみやすさと中背の体格のためか? あまり投球に奥行きを感じさせないところをどう見るか? 打者からすれば、怖さを感じるようなタイプでは無さそうです。そのへんについては、投球フォームも分析して考えて行きたいところです。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはおとなしめ。軸足一本で立ったときにも、膝から上が伸びてしまい トの字 になりやすのはツッコミやすくなるだけに気にはなります。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としには甘さが残ります。カーブやフォークなどを投げられないことはないと思いますが、ブレーキや落差という意味では鈍る可能性を感じます。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、身体を捻り出す時間も並ぐらいかと。こうなると変化球のキレや曲がりに影響しそうですが、スライダーに関しては良いキレをしています。基本は、スライダー・チェンジアップに、高速で小さく変化する球で投球の幅を広げてゆくタイプではないのでしょうか。球種自体はすでに多彩に投げているのですが、打者の空振りを誘うほどの球をプロで修得できるのかは微妙な気はします。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはできています。足の甲での地面の捉えがやや浅く短いので、まだ充分に浮き上がろうとする力は抑え込めていません。したがって、真っ直ぐが真ん中~高めに集まりやすいのは気にはなります。

 それでも「球持ち」は比較的良く、前でボールを放せてはいますし指先の感覚には優れています。ただし腕の軌道と頭の位置の角度が開き過ぎて、ブンと腕が外旋気味。これによって、四死球は少なくても投げミスは結構生じやすいのではないかと。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークが投げられないほどは窮屈ではないのではと。またカーブの頻度は少なく、縦の変化もチェンジアップや握りの浅いスプリットのようなので、そこまで肘への負担は気にしなくても良いのでは。

 また腕の送り出しにも無理は感じられないのですが、多少腕が外旋してブンと外回りに振る分、その点で少し肩への負担は生じている可能性はあります。それでも力投派というわけではないので、比較的負担は少ないフォームだとみています。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的な上に、ボールの出どころが見やすいのが最大のネック。特に角度で相手を打ち損じを誘うタイプでもないので、打者としてはボールの質の割には苦にならないタイプなのではと。

 腕の振りも思ったほど身体に絡んでくるような粘っこさがないのと、ボールにもまだ体重が乗りきる前にリリースを迎えてしまっています。上半身の振りやボールにバックスピンをかけることでキレは生まれているものの、打者の手元での強さという意味では物足りません

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全ての部分で課題を残し意外に実戦的なフォームではないことに驚きました。それでも制球を司る動作や故障のリスクは比較的低く、今後はいかに武器になる球を修得できるかではないのでしょうか。ことフォームに関しては課題も多く、やや伸び悩む要素も少ないないのでは?という印象を受けました。


(最後に)

 ボール自体は充分に指名級だと思うのですが、それを活かす技術という意味では課題を残します。制球もセンスも悪くないので、今後はフォーム技術や決め球の修得などに、エネルギーを注いでゆくことになりそうです。甲子園での投球では中位ぐらい行けるかなとも思ったのですが、細かく観てみると不安要素もあり評価としてはやや辛めに留めておこうと思います。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年夏 甲子園)