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黒田 将矢(西武)投手のルーキー回顧へ






黒田 将矢(八戸工大一3年)投手 188/80 右/右 





 「想像以上に変化球が良い」





 MAX149キロと評判だった 黒田 将矢 だったが、むしろ真っ直ぐよりも変化球の良さが目を引く投球だった。巨人に1位指名された 堀田 賢慎(青森山田)のような真っ直ぐで魅了するスケール型と思いきや、変化球とのコンビネーションで打ち取ってゆくタイプだとみた。


(投球内容)

 全身を使って投げ込む力投派で、チームではリリーフで登板することが多い。そのため20球ぐらい投げると息が上がってしまうような感じで、根本的な体力があるのかには疑問が残った。ただし、八戸西戦では、かなり力をセーブして投げていたので、そういった力の加減を緩めた投球もできることがわかったのは収穫だった。

ストレート 常時140キロ前後~中盤 ☆☆☆ 3.0

 時々投げ込まれる真っすぐの勢いや角度にはそれなりのものが感じられるものの、真っ直ぐ自体のコントロールはかなりアバウトで、荒れ球の印象を受ける。またそこまで球威のある球質ではないので、甘く入れば打ち返されるタイプの速球。真っすぐの凄みというよりは、前出の堀田の高校時代に比べると、かなり劣る印象を持つ。

変化球 スライダー・カーブ・フォーク・ツーシーム? ☆☆☆★ 3.5

 スライダーが横滑りするというよりも、カーブような曲がりながら沈む感じの独特の軌道。さらに時々、もっと緩いカーブも使ってくる。また追い込むと、積極的にフォークを使って空振りを狙ってくる。この球の落差や精度も悪くないので、将来的には大きな武器となって行けそう。また左打者の外角、右打者の内角を突く時は、意識的にシュートするボールを使っていたように見える。結構粗っぽい力投派に見えるのだが、意外に器用な一面が見られる。

(投球のまとめ)

 上位指名とかそういった凄みやスケール感は感じられなかったが、面白い変化球を投げられるし、まだまだ肉体的な上積みも期待できるだろう。逆に筋力・体力が不足しているので、プロ入り後は体力・身体作りで数年費やすことも覚悟しておいた方が良いのかもしれない。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、勢い良く高いまで引き上げる力投派です。軸足一本で立った時に膝に余裕は感じないのですが、バランスは適度に取れて立てています。全体的に上下動が激しいフォームなので、制球のブレや身体への負担は大きな印象を受けました。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻の一塁側への落としには甘さを残します。カーブやフォークといった球種を投げられないことはないと思いますが、変化が鈍る可能性は捨てきれません。

 「着地」までの地面の捉えは、前に大きめにステップできており、適度に身体を捻り出す時間を確保。これによりある程度、キレや曲がりの大きな変化球は期待できます。現時点でも変化球が目立っているのは、このフォームによるところが大きいのでは?

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後後ろにまわって解けそうですが、なんとか最後まで身体の近くにはとどめています。そのため両サイドへの制球は、ある程度つけられると考えられます。しかし、足の甲での地面の捉えが浅かったり、上下動の激しいフォーム故に、高低の制球はブレやすいのではないかと。「球持ち」もけして良いとかボール押し込めている感じではないので、角度は感じても上手く手元で制御できるといったほどでは無さそうです。

<故障のリスク> ☆★ 1.5

 お尻の落としには甘さを残すものの、カーブやフォークが投げられないというほど窮屈では無さそうです。ただし、そういった球を投げる頻度が多いようだと、肘への負担はそれなりには懸念されます。

 またボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がるなど極端な送り出し。したがって肩への負担は大きいだけでなく、上下動の激しさや力投派の投球のスタイルからも身体への負担は相当大きいと考えられます。そのへんは、将来つきまとう危険がはあります。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりにあり、ボールの出どころは平均的ですが、球筋にも角度があり相手も打ち損じをしてくれる可能性があります。

 腕は強く振れて勢いがあるので、打者の空振りを誘えそう。またボールにもある程度体重を乗せてリリースできている感じで、投げ終わったあとの地面の蹴り上げや躍動感は感じられます。あとは筋力やウエートなども伴ってくると、ボールにも強さなども出てくると思われます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」や「開き」にもう少し粘りが欲しいかなと。将来的に良い変化球は投げられそうなフォームなのですが、故障のリスクがかなり大きいそうなのと、制球の不安は感じられます。かなり、素材としては、リスキーな素材であるのは否定できません。


(最後に)

 速球派の割に変化球が独特で、興味深い素材ではあります。まだまだこれからといった選手であり、伸びしろも充分感じられます。ただし、制球の不安や故障のリスクも否定できないフォームだけに、こちらの期待どおり成長行けるのかは微妙といった気がします。高校からプロにも指名される素材だと思いますが、そういったこと心配を考慮したうえで指名するべき選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年夏 青森大会)