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松浦 慶斗(大阪桐蔭3年)投手 186/94 左/左 | |
下級生の頃から、世代を引っ張ってきた一人である 松浦 慶斗 。しかし蓋を開けてみれば、ドラフト会議では7位での指名と、思いのほど低評価だった。一体なぜ? このような順位になったのか考えてみた。 (投球内容) 夏の甲子園では、東海大菅生戦のみの登板で終わっている。この試合は 7回を7安打・7三振・3四死球 3失点 ではあったが、この日は試合の継続も困難なほどの泥んこのグランド状態であり、雨が強くなった終盤になって失点してしまったのは、あまり気にしなくても良い材料なのかもしれません。 ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 この試合での最速は143キロほどだったが、甲子園は左投手の球速が出にくい球場なので、それほどこれも気にしなくても良いのでは? というのも、この夏の大阪大会では、球速も最速140キロ台後半が出ており、この日が特別遅いようには見えなかったので。 特に春に比べると「球持ち」が良くなった感じで、打者の手元までボールの強さ・勢いなどは明らかに良くなっていた。そういった球を両コーナーに散らして、空振りよりも詰まらせて打ち取るのが、この投手の持ち味ではないのだろうか? 球筋も真ん中ぐらいの高さから、低めにゆく球も出てきており、コマンドという意味でも以前よりも球筋が低くなった点も評価できます。 変化球 スライダー・スプリットなど ☆☆☆ 3.0 スライダーの曲がりは平凡ですが、この球を両サイドに投げ分ける制球力もあり、しっかりカウントが整えられます。ただし、左投手が左打者から空振りを奪うような、外角低めのボールゾーンに切れ込む球を振らせるなど、そういった特徴は観られません。追い込むと、少しスプリットのような小さく沈む球があるぐらい。この球の精度・落差にも、まだ絶対的なものはなく発展途上です。そのため変化球には頼れず、どうしても速球で勝負せざるえなくなって狙い打たれるケースが多いのでは? その他 ランナーが出れば、じっくりボールを持って走者としてはスタートが切り難い。走者を刺しにゆくような牽制はみられず、たまに「間」は外す程度です。クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的で、特に投げるタイミングを変えることはありません。そのため投球が、単調に陥りやすいところがあります。フィールディングは、自分から積極的に捕りゆく姿勢が観られ、動きも悪く有りません。 (投球のまとめ) スライダーがカウントを整えられたり、追い込むと縦の変化も投げられます。しかし、本当の意味で頼れる球が真っ直ぐなので、この球を狙い打たれるケースが目立ちます。また、投げるリズムが一定になりやすく、球種の少なさも相まって単調になりやすい傾向にあるようです。 その一方で、真っ直ぐ自体の手元までの勢い・強さは明らかに選抜時より良くなっています。またこの夏気になったのは、かなり気持ちの起伏が激しい投手なのだなということ。特に取り乱して制球がおかしくなることはないのですが、審判の判定が納得ゆかないと、それを表に出してしまったりします。東海大菅生戦でも、足場が悪くなった終盤完に全に集中力を切らしてしまったりと、そういった心身の体力は、意外に低いのかなといった印象を持ちました。それは、あまり下級生から観てきて感じ取れなかった部分です。 (成績から考える) 春にフォーム分析をしているので、今回はこの夏の成績から考えてみましょう。この夏の大阪大会と甲子園の成績を合算すると 5試合 30回 24安 7四死 27三 11失 防 3.30 1,被安打は投球回数の80%以下 ○ 被安打率は、ちょうど基準の80% 。ただし、投球の内容のところでも記したように、本当の意味で頼れる変化球がないので、どうしても真っ直ぐ勝負にいって、それを狙い打たれるケースは目立ちます。その傾向は、恐らくプロに入るとより顕著になるのではないのでしょうか。 2,四死球は投球回数の1/3以下に ◎ 四死球率は、23.3%。投球回数の1/3以下どころか1/4以下と、かなりコントロールは悪く有りません。逆に、ストライクゾーンの枠内で勝負しすぎなのかなといった印象があり、もっとストライクゾーン~ボールゾーンに逃げてゆく変化球を習得することが求められます。 3,奪三振は1イニングあたり0.9個以上 ○ これも、基準である0.9個ちょうど。この夏は、リリーフでも2試合登板しており、あえて厳しいリリーフ投手の基準を設けました。ただし、左腕でこれだけのボールを投げる割には、それほど奪三振率が高いわけではありません。一つは今まで書いてきたように、変化球であまり三振が奪えないこと。もう一つは、真っすぐの球質が空振りを誘うというよりも詰まらせるタイプだからといったことも大きいのかもしれません。 4,防御率は1点台以内 ☓ どうしても相手レベルが高くなると、失点が増えてしまいます。そのへんは、代木 大和(明徳義塾-巨人指名)あたりと比べると、安定感という意味では物足りません。単調に陥りやすいことと、気持ちのムラが失点に結びついている可能性があるのではないかと。 (成績からわかること) 下級生の時のインパクトが強く、先入観が私自身強いものが有りすぎたのかなと感じました。というのも、やはり思いのほか真っ直ぐに依存した投球で単調に陥りやすいこと。コントロールは安定して、ボールの勢いも取り戻しつつあるのに、相手打線を圧倒できていないことは、残した成績が物語っています。 (最後に) この夏観ていると、彼のボール自体は選抜時より良くなり復調気味だったとの印象は持ちました。その一方で、頼れる変化球がないこと、投げるテンポが同じであること、気持ちのムラが激しいことなど、いろいろと今まで気がつかなかった粗も感じられた最後の大会になりました。 そういった部分を、何度も見ている担当スカウトなどは認識しており、想定以上に低い評価に留まったのかなと理解しています。いかに今後は、そういった部分を改善して投球の引き出しを増やして行けるかではないのでしょうか。その点で少し評価を下げたいとは思いますが、根本的に持っている素材が劣化しているわけではないので、今でもここまで低い評価の選手ではないだろうという思いは残ります。ドラフト会議は生き物なので、当日の流れ次第でストンと抜け落ちる選手が出てきます。それを最後に、日ハムが上手く拾えたのかなと私なりには認識しております。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2021年夏 大阪大会) |
松浦 慶斗(大阪桐蔭3年)投手 185/94 左/左 | |
一冬越えた選抜大会緒戦の 松浦 慶斗 の投球は、初回にこそ4失点したものの、その後は無失点で切り抜けていた。投球を見ていても、何が悪いというわけでもなく、評価が難しい内容となった。ただ下級生の頃のような、ワクワクさせられるような投球では、けしてなかったのだけは間違いない。 (投球内容) ワインドアップから、振りかぶって投げ込みます。選抜だと、何か淡々として物足りない印象を受けます。しかし、リリーフだと150キロ級を連発する能力があり、高校生左腕でこれだけのボールを投げられる選手が他にいないのは確かです。また甲子園のスピードガンが、左投手の球速が出にくいというのも、最速が141キロ程度に留まった要因の一つではないのでしょうか。それでも、昨夏の甲子園交流戦では、145キロを同じ甲子園で記録していたのですが・・・。 ストレート 130キロ台中盤~MAX141キロ ☆☆☆★ 3.5 球速こそ平凡な数字に終わりましたが、ボール自体には力があり、元来はストレートを低めやコーナーに丹念に集めて詰まらせて打ち取るタイプではないかとおもいます。2回以降は、落ち着きを取り戻し、先発時の通常モードには戻っていたように感じられました。 球威で押し込むのが彼の持ち味だと思うのですが、それほどストレートで空振りを奪うほどの伸びやキレがあるタイプではありません。そのため甘く入ると、智弁学園ぐらい打力のあるチームだと打ち返されてしまうのことを強く実感させられました。 変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0 スライダーでカウントを整えつつ、チェンジアップのようなフォーク系の球を織り交ぜるピッチングスタイル。この試合でも、スライダーではカウントを整えられていましたが、縦系がうまく落ちず追い込んでからのボールが無くなり苦しみました。彼は、決め手となる変化球の精度を引き上げられるかが最大の課題ではないのでしょうか。 その他 クィックは、1.1~1.15秒ぐらいと基準レベル。フィールディングも、積極的にボールを捕りにゆくなど悪く有りません。牽制に関しては、たまに間を外す意味で軽く見せる程度。昨秋までは、結構カ~となるのか? 冷静さを欠いて投げ急ぐ傾向が見れましたが、今回はそういった姿は見られず。ただし同じリズムで投げてしまい、相手に的を絞らせやすくなってしまっていたのかもしれません。 (投球のまとめ) 出力が上がらないまま、淡々投げ込む単調なリズムで物足りなさを感じたのは確かです。秘めたる能力が何処にあるのかは下級生時代に証明済みなだけに、歯がゆさが残ったのは確かです。これから夏に向けて、この物足りない部分を取り戻しつつ、新たなプラスαを見出だせるかどうかに懸かっています。 (投球フォーム) ワインドアップで振りかぶって投げるのですが、足を引き上げる勢いや高さはまずまず。軸足一本で立った時にも、膝に余裕がありバランス良く立ています。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせているので、お尻は三塁側に落ちています。そのため、カーブやフォークを投げるのには無理がなく、身体を捻り出すスペースは確保できています。 ただし残念なのは、「着地」までの地面の捉えがあっさりしていて淡白なこと。これにより、身体を捻り出す時間が確保できていません。したがって変化球の曲がりが小さく、武器になるほどの変化が生まれ難い傾向にあります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいのだと考えられます。また足の甲での地面の捉えも悪くないので、浮き上がろうとする力もある程度抑えることができています。ゆえに、それほどボール全体が高めに集まりやすいとか抜ける球は多くないようには見えます。 あとは、「球持ち」が良くなってボールを押し込めるようになると、もっと低めにも球が行ったり粘っこい投球も可能になるのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いかと。そのため、肘への負担は少ないと考えています。また腕の送り出しにも無理は感じられないので、肩への負担も少ないのではないのでしょうか。先発時ではそれほど力投派でもないので、疲労も溜め難いとは考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りに欠けるので、打者は「イチ・ニ・サン」で合わせやすいのは確か。ボールの出どころは隠せているので、あとは下半身の柔軟性を養いつつ筋力を強化し、「着地」までの粘りを作りたいところです。 腕はある程度強くは振れているものの、ゆったりと始動しつつもリリーズ時には腕や上半身を鋭く振るとかしてキレやギャップを生み出したいところではあります。また「体重移動」が不十分なので、前にしっかりウエートが乗っていない。したがって、グッと打者に迫ってくるような迫力や自己主張の激しいボールが投げられないのが課題です。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「着地」と「体重移動」など下半身の動作に課題を残します。制球を司る動作や故障のリスクが低いのは良いのですが、将来的に武器になるほどの球を習得できるかは微妙です。「着地」までの粘りが作れるようになれば、大方フォーム全体に好影響を与えると考えられます。 (最後に) 下級生の時に魅せたような、何かロマンを感じさせるような内容ではありませんでした。何処か淡々と投げている感じで、そのへんは、寺島 成輝 (履正社-ヤクルト1位)を彷彿とさせるものがあります。素材としては間違いなく上位指名の器だと思いますが、何かもう一つ捻りが欲しいというかスパイスが足りない感じです。ぜひその何かを、夏に向けて見出だせるようになれば、1位の12名の中に入ってきても不思議ではないのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2021年 選抜大会) |
松浦 慶斗(大阪桐蔭2年)投手 186/96 左/左 | |
2年秋の秋季大会では、やや調子を崩していた感じだった 松浦 慶斗 。しかし、186/96 のガッチリした体格から投げ込むサウスポーは、まさに秋のドラフト会議の有力な1位候補の一人だと言えよう。 (投球内容) それほど躍動感あふれるフォームではないが、ワインドアップから大きく振りかぶって投げ込んでくる。近畿大会の天理戦の模様をみたが、立ち上がりはやや投げ急いで制球を乱していたものの、徐々に落ち着きを取り戻しテンポや制球も改善されていった。 ストレート 常時140~150キロ ☆☆☆★ 3.5 先発だと、常時140キロ台を越えてくる感じで、速い球で140キロ台中盤ぐらいだろうか。両サイドに淡々とボールを投げ分けるコントロールはあるものの、ストレートそのもので空振りを誘うことは少ない。この投手の持ち味は、両サイドに丹念にストレートを集めてくるコマンドの高さということなのかもしれない。 変化球 スライダー・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0 スライダーも、カウントを整えるためにストライクゾーンに入れてくるものと、ボールゾーンに切れ込んで空振りを誘うものを使い分けている感じ。他にはチェンジアップのような球も確認できたが、スプリットやフォークが持ち球なのだという。またたまに、緩いカーブも使ってくる。しかし現状は、速球とスライダーとのコンビネーションであり、やや単調な印象を受ける。またストレート以上に、まだ変化球のコマンドは低いのではないかという気がするのだ。 その他 ランナーを出すとじっくりとボールを持ち、クィックは1.05~1.10秒で投げ込むなどまずまず。フィールディングの動きは良く積極的に捕りにゆくのだが、投げ急いでミスをしないか心配。牽制は、たまにそれほど鋭くないものを投げてきたりする。経験豊富な投手ではあるが、結構気持ちが勝って冷静さを欠くタイプなのかもしれない。 (投球のまとめ) 現状は、まだ打者を圧倒するほどのストレートを投げ込んできているわけではない。それほど空振りの取れない真っ直ぐを、両コーナーに散らせて打たせてとる。また変化球はスライダーが中心で、際立つ精度・キレはない。そういった意味では、ちょっと 寺島 成輝(履正社-ヤクルト1位)的な投手なのかもしれない。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみたい。ワインドアップからゆったり投げ込んで、高い位置まで足を引き上げて来る。軸足の膝はピンと伸びがちだが、全体のバランスとしては並ぐらいだろうか。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしており、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは悪くなく、身体を捻り出すスペースをある程度確保できている。しかし「着地」までの地面の捉えは平均的で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。どうしてもこうなると、曲がりの大きな変化球の習得が厳しくなり、変化球を武器にし難いという傾向になりやすい。将来的に、速球以外でいかに武器になる球を身に付けて行けるだろうか? <ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようと遠心力を内に留めることができている。軸がブレ難く、両サイドの投げ訳はしやすい。また足の甲の地面への捉えも悪くなく、ボールが高めに抜けるのを防いでいる。ただし「球持ち」が悪いわけではないものの、まだボールを押し込めるまでには至っていないので、球が低めに行き難い。ここを改善できれば、両サイドだけでなく、高低でも勝負できる広がりを持つ。 <故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5 お尻の落としもそれなりな上に、カーブやフォークなどの球種をあまり使ってこない。そのため窮屈にはなり難く、肘への負担は少ないのではないかと考えられる。また腕の送り出しを観ていても、無理がなく肩への負担も少なそう。力投派でもないので、疲労も溜めやすいということは無さそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りが平均的で、打者としてはタイミングを合わせるのは苦にならないだろう。それでもボールの出どころは隠せているので、球筋がいち早く読まれるということは無さそう。 腕も適度に振れて勢いはあるので、打者の空振りを誘っても不思議ではない。ただし球質が、それほど手元でキレるとかグ~ンと伸びるわけではないので、思ったほど三振は奪えていない。その最大の理由は、まだ充分に体重を乗せてからリリースできておらず、打者の手元までグッと迫ってくる感じの球ではないから。このへんは、もう少し「着地」までの粘りを意識して、「体重移動」を促すフォームにして来ることで変わってきそうだ。股関節の柔軟性を養い、下半身を強化して下をもっと使えるフォームにしたい。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」にもう少し工夫が欲しいところ。コントロールを司る動作と故障のリスクが低いのは素晴らしいが、もう少しボールを押し込めるようになることと、武器になる変化球をいかに見出して行けるかではないのだろうか。 (最後に) 現状はまだ、ただ速い球を両サイドに散らせて来るだけといった感じで、投球に奥行きは感じられない。高校生左腕だから、それでも高く評価されるだろうが、プロを想定すると投球に幅が出てこない伸び悩むだろう。この一年は、それができるかに懸かっている。そこは、本人の意識と努力をの部分で、結果に結びつけるセンスや想像力が求められることになりそうだ。それが伴ったときには、文句なしの1位指名で競合することになるのではないのだろうか。 (2020年 秋季近畿大会) |