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小園 健太(DeNA)投手のルーキー回顧へ







小園 健太(市立和歌山3年)投手 184/89 右/右 





  「そんなには変わっていなかった」





 昨秋と比較して、小園 健太 が、なにか大きく変わっていたのか?と言われると、その辺は正直疑問が残った。それでも、元々が力のある投手なので、改めて良い投手だということを再認識させられる大会だった気がする。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、ポンポンとテンポ良く投げ込んできます。選抜では 2試合に登板し、14回 7安 8四死 13三 自責点1 といった内容でした。

ストレート 130キロ台後半~MAX147キロ ☆☆☆★ 3.5

 いつも力を入れて投げているのではなく、必要に応じて力の加減を変えてくる感じです。そのため130キロ台の時もあれば、145キロ前後の力のあるボールを連発する時もあります。昨夏は結構ズシッとした球威も感じられたのですが、秋はスポッと抜けるような感じで球威には欠ける面がありました。しかしこの春は、適度なキレと勢いは感じられ、昨夏と昨秋の中間のような感じの球質でした。

 両サイドにボールを散らすコントロールがあり、打者の内角を積極的に攻める場面もしばしば見られます。ただし、選抜で魅せた14イニングで四死球は8個と、意外にピンポイントに決まる投手ではなく、抜け球も少なくなかったり四球を与える場面も多い投手なのだと感じました。要所を締めるセンスはあるのですが、結構無駄なフォアボールは少なくありません。

変化球 スライダー・チェンジアップなどなど ☆☆☆☆ 4.0

 110キロ台のスライダーと速球のコンビネーションで、これにカットボール・ツーシーム・カーブなどを織り交ぜつつ、時々落差のあるチェンジアップを使ってきます。14回で13奪三振の数字が示す通り、基本は三振をバシバシ奪うというよりも、微妙に動かす球などで打たせて取る投球・的を絞らせないのが、この選手の持ち味であるように感じます。

 昨秋は、チェンジアップで面白いように打者を腰砕けにして三振を奪っていたのですが、この選抜ではそういった姿は陰を潜めていたのは残念。彼の良さは、腕の振りの良さから速球と変化球の見極めがつかない。それでいて、このチェンジアップで空振りが奪えるところだと思っていました。その点では、秋に比べ空振りが奪える球が無く苦し見えました。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒とまずまずで、走者をみて投球ができています。フィールディングの動きもそれなりで、牽制にも鋭いものがあります。特に力の抜き加減、入れ加減の強弱を付けるのが上手く、非常に投手らしい投手との印象があります。

(投球のまとめ)

 秋に比べると、ストレートの質がかなり夏の感じに戻ってきていたこと。投球のメリハリをつける上手さに、要所でギアを入れた時のボールの勢い・威力はさすがだと唸らされるものがありました。ただし、課題であったボールの強さの改善・昨秋魅せていた一度浮き上がって沈むようなチェンジアップのキレは観られず、そういった点では思ったほどは伸びてきていないなという物足りなさが残ったのも確かです。それでも、今年の高校生の中ではトップクラスの選手であり、秋のドラフト会議では1位指名の可能性はかなり高いのではないかとみています。


(投球フォーム)

 今度は技術的な観点から、今後の可能性や現在の課題について考えて行きます。ノーワインドアップから、足をスッと引き上げる勢いや高さがあります。軸足一本で立った時に、膝には余裕がないのですが、バランス良く立てているところに投手としての筋の良さが現れています。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻は適度に一塁側に落とすことができています。そのため、身体を捻り出すスペースを確保。カーブやフォークといった、捻り出して投げる球でも無理は感じません。

「着地」までの地面の捉えもそれなりであり、身体を捻り出す時間もソコソコ確保。多彩な球種を操るだけの土台はありますが、今後武器になるほどの球を見出だせるかは微妙でしょう。ただし、指先の感覚に優れた選手でなので、器用にいろいろ球を習得して行けるセンスはあるように感じました。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにはあるので、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって、軸がブレ難く両サイドへのコントロールはつけやすいと考えられます。その一方で、足の甲での地面の抑えが浮いてしまっていて、力を入れて投げるとボールが高めに抜けてしまいがち。そのため、高低の制球に課題を残します。それでも「球持ち」は良いので、ある程度はボールを指先で制御することはできており、荒れ荒れといったことにはなりません。

<故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5

 お尻は落とせるフォームであり、さらにカーブやフォークといった球種もほとんど観られません。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘への負担は少ないと考えられます。

 腕の送り出しは観ても、肩への負担は少ないように見えます。けして力投派でもないですし、抜くところは抜くことができているので、疲労も溜め難いと考えられます。そのため、故障のリスクはかなり低いのではないかと。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはソコソコで、けして合わされやすいということも無さそう。ただし、ボールの出どころはあまり隠せていないので、球筋がいち早く読まれやすい可能性があります。コースを突いたはずの球が打ち返されたり、縦の変化球を見極められてしまう恐れなどもあるということ。

 腕はしっかり振れているので、打者の空振りは誘いやすいはず。ただし上記にも書いたように、縦の変化などは思ったほど効果がでない可能性があります。またボールに体重を乗せて投げられているようには見えるのですが、足の甲が地面から浮くことで下半身のエネルギー伝達ができません。あくまでも、上半身や腕の振りでキレを生み出すといった球質になってしまい、球威のある球が生み出せないのは気になります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に物足りなさを残すのは確かです。故障のリスクが少ないのは、今後新しいものをどんどん取り込んでゆくには大事な要素。高めに抜ける球が多い球筋と、将来的に武器になる球が習得できるのか?といった不安が残ります。実戦的な投球とは裏腹に、良い部分と悪い部分が同居しており、そこまで完成度の高い選手だとは思いませんでした。


(最後に)

 プロ入り後順調にゆけば、2年目~3年目ぐらいにはローテーションに入って行けそうな蒼写真は描けます。イメージ的には、PL学園時代の、前田 健太(現ツインズ)投手を彷彿とさせるものがありますから。ただし現時点では、なにかドラフトの目玉となりうるだけの素材としての凄みや、隙き無しの鋭さまでは感じられず、有力な1位候補の一人といった感じではないかと思いました。その辺が夏に向けて、もうワンランク内容に上積みが持てるかどうか見極めて行きたいポイントでした。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2021年 選抜大会) 











小園 健太(市立和歌山2年)投手 185/91 右/右 





「見分けがつかない」 





 
現時点で、高校NO.1 の呼び声が高いのが、小園 健太 。特に彼の投球を観ていると、腕の振りが真っ直ぐと見分けがつかない変化球にこそ良さがあるのではないかと思えてくる。その裏返しに、ストレートにはもう少し凄みみたいなものが出てきて欲しい。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、テンポよく投げ込んできます。凄みを感じさせる素材というよりは、総合力に優れたセンス型 といった印象です。

ストレート 140~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 夏の和歌山大会では、ズシリと重い感じのストレートでグイグイ投げていた感じでした。しかし秋の大会では、ストレートがスポッとミットに収まる感じで、あまり球威・勢いが感じられなかったのは気になります。そのためか、投球も変化球の割合が増えていた気がします。右打者には両サイドをしっかり投げ分けてきますが、左打者にはややアバウトな印象。それでも左打者のインハイを、意図して厳しく突くことはできていました。また四死球で自滅するような、そういった危うさもありません。

変化球 カットボール・スライダー・カーブ・チェンジアップ・ツーシームなど ☆☆☆☆ 4.0

 秋は、ストレートの見極めがつかない腕の振りから放たれるチェンジアップやスライダーが効果的でした。特にチェンジアップは、一度浮き上がったような感じから沈むので、思わず打者はタイミングが狂わされます。スライダーも見分けが難しく、その他にもカットボールやツーシーム気味の球に、時々緩いカーブも織り交ぜ的を絞らせません。多彩な変化球を操れる器用さと、それを上手く活かすセンスがあります。

その他

 クィックは、1.05秒前後とまずまず。牽制も適度に鋭いですし、ボール処理も落ち着いていました。特に強弱をつけるのも上手いので、メリハリのある投球ができます。

(投球のまとめ)

 夏の球威に、秋の変化球があれば、文句なしの1位候補に春にはなっているでしょう。一冬越えてストレートを磨き直せば、充分にその可能性を感じます。ピッチングも上手いですし、制球力もある。あとは、ボールに凄みが出てくるだけといった感じがします。2年生という意味では、非常に完成度の高い投手です。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、その技術が高いのか考えて行きます。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立ったときには、膝には力みなど感じられず適度にバランスよく立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせているので、お尻は一塁側に落とせています。そのため身体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げても無理がありません。

 「着地」までの地面の捉えを観ていても、適度に粘ることができており、身体を捻り出す時間もそれなりに確保。曲がりの大きな変化球を習得できるかは微妙ですが、多彩な球種を操れる土台はできています。実際すでに、チェンジアップの威力は一級品です。

<球の行方> ☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えることができ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって軸はブレ難く、両サイドの制球は安定しやすい傾向にあります。また足の甲での地面への捉えもしっかりできており、ボールが上吊るのを防いでいます。「球持ち」もよく指先までボールに力を伝えられそうなリリースをしていますが、さらにボールを押し込めるようになると低めにも良い球がゆくようになるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈になり難いです。カーブの頻度もそれほど多くはありませんし、フォークも投げていないよう。そういった意味では、肘への負担自体少ないとみています。

 また腕の送り出しを観ていても、肩への負担は感じられません。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられます。そのため、故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそれなりなのですが、ボールの出どころは若干早く見えます。それゆえ球筋がいち早く読まれやすく、コースを突いた球でも簡単に打ち返されたり縦の変化球を見極められてしまう恐れがあります。

 腕は適度に振れており勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすいはず。しかし上記にも記したように、開きが早いためにその効果が薄いのではないかと。ボールは適度に体重を乗せてからリリースできているようには見えるものの、いまいち地面の蹴り上げが弱いような気がします。そのへんは、まだ体重移動が充分ではないのかもしれない。ゆえに、打者の手元までの球威や迫力が、まだ物足りないのかもしれません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」にまだ改善の余地がありそう。それでも、制球を司る動作や故障のリスクは低そうで、武器になる変化球の習得は微妙なものの、多彩な球種を操れる土台を持っている。さらに嫌らしさや粘っこさは必要だが、高校生としては高い技術を持っているといえるのではないのだろうか。


(最後に)

 現時点で、高校球界のトップを走る選手だけに、その投球内容・フォーム技術共に高いものを持っていた。しかし、ボールの凄みや野球人としての器の大きさみたいなものはまだ感じられない。そういった部分では、森木 大智(高知)の方が魅力を感じる部分はある。果たしてこの二人が、どのように高校球界を引っ張ってゆくのか? 今後の見どころなのではないのだろうか。


(2020年秋 近畿大会)