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羽田 慎之介(西武)投手のルーキー回顧へ







羽田 慎之介(八王子学園八王子3年)投手 190/82 左/左 





「あとはボールに訊いてくれ!」 





 そう言わんばかりに、今どき珍しいぐらい投げやりなフォームから投げ込んで来る 羽田 慎之介 。けして「和製・ランディ・ジョンソン」という形容が大げさでもスケール不足でもなく、違和感のないランディ・ジョンソン二世だった。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、腕が体が離れて振られる、いわゆる外旋するフォーム。最近、ここまでわかりやすく外旋して投げ込んでくる投手は珍しい。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX91マイル(146キロ) ☆☆☆★ 3.5

 ズバーンとミットに突き刺さるボールの勢い・体感速度は、今年の高校生左腕の中でも屈指のものがあるのではないのだろうか。しかしコントロールはかなり荒っぽく、コースに投げ分けるというよりも、とりあえずストライクゾーンの枠の中に収まってくれればといったアバウトなタイプ。本当のコントロールが無いだけに、じっくり見られた時にどうなるのかには不安が残る。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 この春観戦した時は、全てストレートのみしか投げていなかった。秋の映像では、確かスライダーやチェンジアップも投げていたと記憶するが。今は、無理させないように、1試合でも20球をぐらいを目処にしか登板させていない。そのため、変化球を使って来ることは、この春はなかった。

その他

 クィックは、大方1.2秒前後。けして素早いわけではないが、左腕としては平均的。フィールディングや牽制などは、正直まだよくわからない。大型の割には動きが良いとかは思わないが、破綻のないレベルまでは持ってこられる選手ではあるように見える。

(投球のまとめ)

 最後の夏、あるいはその先を見据えられた起用であり、高校の時点では高い完成度は望めないだろう。問題は、先発をした時、あるいは変化球を交えた時に、どのようなピッチングができるのかといった部分。観戦した専修大付属戦でも、結果球数を放ることになり、登板時の勢いは最後の方では鈍っていた。そのため夏の大会でも、どこまでの球数が投げられるスタミナがあるのかには不安が残る。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を高い位置まで引き上げます。軸足一本で立った時には、あまり膝には余裕がありません。それでも、引き上げた足をやや二塁側に送ることで、上手くバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種を投げられるだけのスペースはある程度確保できています。

 また「着地」までの地面の捉えは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。カーブやフォークなども含めて多彩な球種を投げられる下地はあるものの、武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙な気がします。特に腕の振りが良い選手なので、スライダーやチェンジアップなどそういった球でピッチングを広げてゆくタイプなのかもしれません。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くに抱えられているので、外に逃げようとする遠心力は抑え込めているように見えます。しかし、腕が体から離れて振られるので、そのことで軸がブレやすく制球を乱す要因になっているのではないのでしょうか。

 足の甲でも地面を捉えており、浮き上がろうする力を抑え込めているように見えます。その一方で「球離れ」は早く、ボールを押し込めていない部分もあり、球筋が定まり難いのではないのでしょうか。投げやりなフォームには見えますが、そこまで投球がめちゃくちゃにならないのは、グラブの抱えと足の甲の押し付けができているからだと考えられます。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さはあるものの、ある程度は落とせている上にカーブやフォームなどの球種もほとんど観られません。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく肘への負担は少ないのではないのでしょうか。

 腕の角度もスリークォーターで、肩への負担のかかり難い投げ方。ただし、腕が外旋してブンと振る荒っぽいフォームのために、そのぶん疲労は溜まりやすく体に負担がかかってくる箇所では出てくるかもしれません。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、それほどタイミングが取りにくいわけでは無さそう。しかしボールの出どころは見難いので、ボールが上手く散っていれば打ち難い可能性があります。特にボールが見えてから到達するまでは、一瞬で来るような感覚に陥るのではないのでしょうか。、

 腕は強く振れていて勢いがあるので、打者との空振りは誘いやすいのではと。ボールにはまだ充分体重を乗せてリリースできているといった感じではないので、これがグッと前に乗ってくるまでリリースが我慢できるようになると、打者も恐怖感を抱くようになりそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外にはまだ課題も少なくありません。制球力の不安はどうしても残りますが、故障のリスクは思ったほどではないですし、制球を司る動作も見た目ほど悪くありませんでした。あとは、将来的に武器になる変化球を見出だせるかだと思います。大型で投げやりなフォームに見えるのですが意外に抑えるポイントは意識して抑えて投げているのではないかと感じました。


(最後に)

 現時点では、実戦力というよりも完全にロマンの塊といった素材です。一昔前であれば、ここまでの素材型は上位指名で消えていたでしょう。しかし今の時代は、ある程度の総合力が求められるので、彼のような素材型がそのまま上位指名になるかと言われると微妙な気がします。しかしその一方で、こういったロマン溢れる素材を育てられるノウハウは、プロ側も身につけつつあります。そのため例え指名順位がそれほどでもなくても、球界を代表する、あるいはいずれは海外に飛び出してゆくような選手に育っても不思議ではありません。現状はあまりに素材型すぎるので、春の時点では控えめな評価に留めさせて頂きたいと思います。こういった選手を評価するかしないのかは、球団によっても大きく別れそうです。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 春季東京大会)